第15話 残響する「想い」
任務は、達成された。
そう記録には残るのだろう。
山を下りる足取りは重く、誰も多くを語らなかった。
夜の冷たい空気が、やけに現実を突きつけてくる。
黒等級との戦いは、終わった。
それでも――。
胸の奥に残る圧は、消えない。
あの一撃。
あの気配。
そして、吉沢の背中。
無事に拠点へ戻ったとき、
花崎が、ぽつりと口を開いた。
「……僕、強くなります」
声は小さい。
だが、逃げ腰の響きはなかった。
「もう……あんな思い、したくないです」
瑠偉は、黙ったまま剣を見つめていたが、やがて顔を上げる。
「……当然でしょ」
短く言って、腕を組む。
「次に来るのが、あんなのだって分かってるなら
負ける前提なんて、ありえない」
その横顔は、いつもより少しだけ大人びて見えた。
俺は、拳を握る。
黒等級。
あの“強さ”を知ってしまった以上、
もう、戻れない。
「……あれに、届かないままじゃ終われない」
吉沢は、少し離れた場所で、そんな俺たちを眺めていた。
「……まあ」
軽く息を吐く。
「本来なら、誰かがちゃんと伝えなきゃいけないことなんだけどね」
こちらに歩み寄り、言った。
「仲間を見捨てず、立ち向かった気持ち。
あれは、大切だ」
一人ずつ、視線を向ける。
「間違ってないよ。
危なっかしいけどね」
そして、いつもの調子で笑った。
「まあ、これから成長していけばいいさ」
肩を回し、言う。
「今日は僕のおごりだ」
一拍。
「なんでも好きなの、食べな」
一瞬の沈黙のあと。
「……ほんとですか?」
花崎の目が、輝く。
「え、いいんですか!?」
瑠偉も、少し驚いたように目を瞬かせた。
「……太らない程度なら」
その場に、ようやく笑い声が戻る。
だが。
その裏で。
吉沢は、夜空を見上げていた。
あの黒等級は、明らかに“おかしかった”。
偶然ではない。
暴走でもない。
――目的が、あった。
戻ってすぐ、吉沢は荒木に連絡を入れた。
「今回の黒等級ですが」
声は、仕事のそれだった。
「どう考えても、こちらを誘ってました」
短く、端的に。
「新人を使って、僕を引きずり出したように見えます」
一拍。
「……何かが、裏でうずめいています」
電話の向こうで、荒木が静かに息を吐く気配。
ガリ、と氷を噛み砕くような硬い音が混じった。
「……そうか」
それだけだった。
だが、否定はしなかった。
通信が切れる。
吉沢は、目隠しの下で、目を細める。
「……面倒な時代になりそうだね」
遠くで、三人の笑い声が聞こえる。
あの夜の戦いは、終わった。
だが。
想いは、まだ――
残響している。
あとがき
これにて一章は終わりです!
二章は一章以上に熱く激しい想いがぶつかり合います!
さらに、あの人が登場する予定です。
二章は今夜の夜8時に投稿します!
お楽しみください~




