022-決闘講義1
「武器表示確認、異常なし」
僕はコックピットのハッチを閉め、ヘルメットの生命維持装置の動作を確認する。
円周モニターを起動すると、ワイヤーで吊られて搬送中の映像が見えた。
「こちらナユタ、聞こえるか?」
『バッチリ聞こえるぜ!』
『通信良好』
『大丈夫よ』
『問題ありません』
通信も問題ない。
これで準備だけは大丈夫だ。
『いいか、外に出たらテザーを外す。すぐに出撃しないと後がつっかえるからな』
バランドさんの通信を聞きながら、僕を乗せたバドックⅡは、長い通路を移動していく。
通路の先には隔壁が見えており、等間隔で橙色のパトランプが光っている。
ここは既に真空なので、警報音のようなものは聞こえないが。
そのうち外へ出て、バドックⅡを固定していたケーブルが外れた。
「ナユタ・カイリ、出ます!」
僕はスラスターを吹かせ、開始地点まで一挙に加速するのだった。
一時間前。
僕らは、スドー先生から決闘についての話を聞いていた。
「決闘とはどういうものか、話に聞いている生徒も多いだろうな! だが、今一度ここで、全員が知る機会を設けようというのが、学院の方針だ!」
スドー先生は白板を切り替え、別の情報を表示する。
そこには、決闘について色々と書かれていた。
先生は一つずつズームして、僕らに示す。
「決闘と一言で言っても様々だ、一対一で行う通常の決闘、五対五で行うチーム決闘、五チーム対五チームのクランデュエル。それぞれにルールが定められている」
先生は一つずつ丁寧に説明してくれる。
「この学院では、どこでも決闘を行うことができるのは知ってるな? 条件は、両者が戦闘用KFAに乗り込んでいる事、片方の挑戦にもう片方が受諾する事。決闘が成立すると、1分以内に防護フィールドが周囲に形成される。被害を及ぼす心配はないが、そこからは決闘が終わるまでは出れないことに留意してくれ」
スドー先生は、次の項目に移る。
そして同時に、自分の側にホログラムを表示させた。『SUDOU:RP89』と書かれている。
「決闘において敗者が失うものは、自分のRP...レートポイントだ。RPが高ければ高いほど、学院においては優遇措置を受けることができる。......俺は教員待遇で50から下がらないからな、そんなに強いわけじゃないぞ?」
RPの下限値は0。
初期値も0であり、そこから下がることはない。
そして、もう一つ重要な要素があるらしい。
「RPが一度でも一定値を超えた生徒は、このRPの下にエンブレムが付いていく。エンブレムが付いた生徒は、そのエンブレムより下の階級の生徒と決闘はできない事に留意してくれ」
初心者狩り対策らしい。
最初は対等な相手と戦い、実力を磨けというのが学院の望みだということか。
「次に、チーム決闘について話すぞ。チーム決闘は文字通り、五人でチームを組み、同じく五人の相手チームと戦う内容だ」
この場合のメリットとして、敗北時のRP減少が5分割されるという点だ。
獲得RPも5分割されてしまうため、勝ち続けるには難しいが、一対一よりも勝率は高くなるらしい。
「最後にクランデュエル。チーム同士でクランを組んで、五チーム揃ったら他のクランと戦える。二十五対二十五の戦いで、リングもそれなりに広くなるな」
成程。
だが、まだ説明は終わっていないのに、先ほどの白板には拡大していない部分がある。何か続きがあるようだ。
「最後に、これは貴族にならないと縁がないが、知っておいた方がいいだろうと思ってな...貴族には、専用のRPがある」
先生が拡大した部分を読めば、大体のことはすぐに分かった。
ようは、貴族の覇権争いという児戯の一部というわけだ。
「貴族専用のRPは、ランクという形で管理されている。俺は貴族じゃないから表示できないが、鉄からプライムまでランクは存在する」
五勝ごとにランクが上がり、プライムランクだと同じように大きな優遇措置があるらしい。
また、貴族限定で別のルールがあり、格下が格上に挑むことはできるらしい。
逆に格上が格下に挑むことはできないが。
「まあ、貴族になれたらの話だな! ここからの先は内戦で戦功を挙げて騎士爵にでもなってからだ」
それを成す頃にはとっくに学生ではないだろうが、これはスドー先生の精一杯のジョークだと受け取っておく。
その時、半チャイムが鳴り、
「ホラ、第一訓練場に移動だ! お前らの機体は準備してある! 急いで向かえよ!」
スドー先生に追い立てられるように、僕らは訓練場へと移動するのだった。
そして、最初に戻る。
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