表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

CASE7.「古本の中のメモ②」


【10月15日 AM8:45】


【古本屋『リブロザード』】



 スゥー…ガッ…スゥー…。と、引っかかりながらも扉を開けると、室内は少し薄暗くも、オレンジ色の灯りに照らされた本棚には、ビッシリと本が並んであった。


「おぉ〜すげぇな。本なんて読まねぇからあんま来たことなんかないが……なんというか…密室間あるなぁ〜。ハハッ。」


「なんですかその感想は。なんでもミステリに置き換えないといけないんです?」



「……るっせ。てか、店員はどこだ?レジが真隣にあんなに、なんでいねぇんだよ。」

 

「いつもレジにいるわけないじゃないですか」

「本の整頓など、他の作業もあると思いますよ?」


 と、アジュのツッコミに「ベー!!」っと舌を出し、そそくさと店内を歩くコレレス。



「あ、いた!」

「おーい!そこのアンタ〜」



「は、はい!いらっしゃいませー!」

「どうされましたかー?」



「あー、先日ここで本を買ったんだけどさ、この本の前の持ち主とか知らない?」



「持ち主ですか…?」


「そうなんだよ、中に持ち主の私物のしおりがあってよ〜返したいんだよね〜」



「ああ、そういうことでしたか!」



「えー…と、どんな人だったかなぁ…。ウチは古本屋だからねぇ、売り買いするのは直接お客さんなんだけど」


「毎日違う引き取りしてたら、あんまり覚えてないんだよね〜。」


 と、店員の男は答えた。



「まあ、そうだよな〜。せめてさ、男か女どっちだったとかも思い出せないか?」


「う〜ん……」

「この本を売りに来たのは……確か…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「エニータ〜!!ちょっと〜!新学期早々この赤点はヤバくないー?」



【10月16日 PM12:21】


【バレシロ高校1年3組】




「いやぁ〜アハハハ。どうも勉強は苦手なのよね〜…」


バレシロ高校1年[カルタ・エニータ(15)]

        [性別:女]



 エニータと呼ばれる少女は、小テストの成績が悪くて困っていた。


(はぁ……おばあちゃんの遺品を整理してから、あっという間なのに、いまだにバタバタしてるよ〜)


(結局、万年筆はお墓に入れれたけど、理由は分かんなかったし。)



「どうしたのエニータ?そんなに落ち込んで、大丈夫だって〜!!明日も小テストはあるんだし!ね!がんばろ?」


「う、うん!ありがとうミアちゃん!」


(テストも大変だけど、そのことじゃないんだけどなぁ〜。)



 教室の左前側ではしゃぐ女子生徒2人を眺めていた僕は、後ろから脅かされた。


「ワッ!!」



「ヒィエッ!!!」



 と、大きな悲鳴をあげてしまった僕は、教室のど真ん中にいたため、全方位のみんなから注目を浴びて困っていた。


「お、おい!な、何すんだよ〜!アメ〜!!」


バレシロ高校1年[トラル・エンコ(15)]

        [性別:男]



「ヘヘッ!オマエの反応が面白いからな!つい!」


バレシロ高校1年[アメ・リサール(15)]

        [性別:男]



「あんまり、注目されるのとか苦手なの…知ってるだろ…?やめてくれってば〜」


「まぁまぁ!あんまりにもオマエが斜め前の女子に夢中だったからついな!」


「っな!!そんなんじゃないし!!」


 ガタッ!っとイスから飛び上がる僕は、またしても全員から注目を受けていた。

 その中で、先ほど騒いでいた金髪の少女と僕は、目が合っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【PM12:46 喫茶店『ティロ』】


 古本屋『リブロザード』に聞き込みした後は、もう一つの本の謎を解読のために、あることをしていた。


 そして翌日、コレレスとアジュは、大きな菩提樹(ボダイジュ)の木がそばに立つ喫茶店で、紅茶を(たしな)んでいた。


「店員の記憶では高校生くらいの少女って言ってたな〜」


「ええ。そうですね」


 ズスゥ〜。


「はちみつの香り。おいしい。」


 と、アジュが呟く中、大きな菩提樹の周りには、ミツバチが飛んでいた。



「どう思う?」


 と、テーブルの上に、文字がいくつか書かれた一枚の紙が出されていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


し あ 一 ま る ち が あ 下


で お 月 き は 二 な ょ の 


お 四 い 木 ま し の う お つ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    ・・・・・・

「中身の色塗りの文字がキーになると思いますが」

「まだ分かりませんね」


「その本を売ったとされる少女が、元々持っていた本なのかも気になりますし」



「だよな〜〜」

「その少女もただ買って、その後売った可能性もあるしな」


「とりあえず、ただページ順に書き出してみたけど、さっぱりだ。」

「何かのメッセージだとは思うんだけどなぁ〜」


「んん〜……学生って言ってたからな〜、とりあえずトラルのヤツに心当たりが無いか、連絡してみるか」


 そう言ってスマホを取り出したコレレスだったか、何かに気づき、スマホをポッケにしまった。



「あ、今アイツ学校か……昨日なら休みだったから聞けたんだけどなぁ〜」

「しゃーない。別のことも調べてみて、夕方また連絡するとしようか」


「その方がよろしいでしょう」


 ズスゥ〜…。「フゥ〜。」

 と、アジュは綺麗な青空を眺めながら、ホッと息をついていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【PM16:25 私立探偵事務所『Loto』】



「そろそろか?」


「おそらく、大丈夫でしょう」


 ソファに座るコレレスは、青色のスマホを取り出して電話をかけ始めた。


…プププ……プルルルルル。プルルルルル。


「はい、もしもし。」


「あーオレだ、コレレスだ」


「あ!コレレスさん!あれから何か分かりましたか?」



 電話越しに聞こえる、期待されてそうな反応を感じとったコレレスは、頭を指でポリポリかきながら答えた。


「あ〜〜…真相はまだ分からんが、オマエに聞きたいことならあるな」



「聞きたいこと?…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【同刻 バレシロ高校 正門前通学路】


 僕は帰り道を徒歩で歩きながら、かかってきた通話ボタンを押し、スマホを耳に当て話していた。



「聞きたいこと?ですか…どんなことでしょうか?」

「あの本に関しては、先日事務所でお伝えした以上のことはないんですよね…。」



「あーオマエのことじゃねぇ、あの本の前の持ち主がさ」

「古本屋の店員によると、女子高校生らしいんだよね。だからなにか心辺りとかないかなぁ〜って思ったんだよ」



「女子高生ですか…」


「ちなみに、オマエの学校な。制服がそうだったらしい」

「容姿は金髪のポニーテールだったとさ」



(金髪……いやっ、そんなまさか…ハハハ。)


「もしソイツが分かれば直接事情を聞けそうだからな。心当たりがありそうなヤツがいたら、聞いてみてくれよ」



「ええ……ぼ、僕がですか…!?」


「オレたちは高校に入れねぇだろ?それに、校門の前で待ってたら不審者じゃねぇか。」


「だから、そっちはそっちで情報を探ってくれよ」



(一応、僕が依頼したんだけどなぁ……これじゃあ、僕も探偵みたいじゃないか…。)



「オイ、聞こえてんのー?暗号の方はこっちでも解読してみるから頼んだぞ〜〜んじゃ」


「えっ、えっ?あの!!……プツ」


ツー。ツー。ツー…。


「切れちゃったよ……はぁ…女の子と話すなんて…ハードすぎるよ〜。コレレスさぁ〜ん…。」


 僕は大股を広げて崩れそうな膝の上に、必死に手をついてなんとか立っていた。

 そして、ため息をついた後、どうしても真相が知りたかったから、頑張るぞー!と心の中で自分を鼓舞していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ