特別席
ライブ当日...。
まだ、前のバンドがやっているよう。
パンク系のバンドなのか、すごい振動がライブハウスの外にいても感じる。
整理番号を確認するためにチケットを見る。
波留はチケットに違和感を感じた。
<特別優待券>
?
すぐに、近くのスタッフに問いかける。
すると、スタッフが何かを思い出したかのように、
波留を列からはずし、自分の後ろをついてくるよう指示した。
5分ほどあるくと、person様と書かれた部屋の前に来た。
いわゆる、『楽屋』だ。
コンコン。
「失礼します。黒河さん、波留さんが見えました。」
ドアをあけ、波留を部屋の中に入れた。
そこには、昨日のようにのほほんとした感じの、黒河ではなく、目の回りを真っ黒にした、絵にかいたような、ロックバンドがいた。
「あ!波留ちゃん!来てくれたんだね!ありがとう!今日は楽しんでってね!」
波留は一歩下がりつつ、あ、ああ、うん。と素っ気なく返事をした。
ーーーーー
最前列の真ん中に誘導される。
しばらく待つと、ジャーン!というドラムの音と共に、personと名乗る黒河たちが出てきた。
全く知らない曲を、ぶっ通しの大音量で聞かされる。
波留は帰ろうと、黒河を見ると、波留に気づき、軽くウィンク。
波留はその行動にも限界だった。
人混みを掻き分け、ライブハウスの外に出る。
その足で家へと帰った。
ーーーーー
それから、2時間がたった。
ピンポーン
突然、家のインターホンがなった。
なんとなく、予想がつく来訪者。
その予想は的中。
「ちょっと!波留ちゃん!なんで、勝手に帰ったんだよ!」
玄関の前で騒ぐ黒河。
波留は玄関のドアを閉める。
「え!ちょっと!波留ちゃん!?」
その言葉も聞かず、布団に潜り込む。
もう、いないはずの玄関を見る。
暗い玄関。
かすかに見える白いなにか。
波留はゆっくり近づく。
「...紙?」
そこには
...携帯番号とアドレス。
の下に
【もっと、はるちゃんのこと知りたい。】
雑に書かれたメッセージ。
カサッ。
紙をゴミ箱に捨てるも、また取り出してしまう。
「...なんで...捨てられないの...?」
自分の意思とは違う。
...変な気持ち。
カチカチ。
携帯に番号とアドレスを...登録した。
「...登録するだけ、するだけ。」
黒河...なにもの?
波留の独り言が薄暗い部屋の中に響いた...。




