出会い
「波留...泣きたいときは泣いていいのよ。誰もあなたを責めたりしないわ。」
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リリリリリリッ。
一筋の明かりが射し込んだ、暗い部屋。
目覚まし時計の音が鳴り響く。
ピッ。
「また、見ちゃったな。」
下着姿のまま、台所で朝ごはんを済ませる。
お茶を飲む波留の後ろには
満面の笑みで写っている母の遺影。
波留は手を合わせることもなく、
制服を着て家を出た。
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「波留ー!久しぶりじゃん!珍しいね!学校くるなんて!またあの夢見たから?」
波留は窓の外を見たまま頷く。
「お母さんがね、泣きたいときはないていいのよ。誰もあなたを責めたりしないわ。って言うの。」
「...波留のこと、思ってくれてるんだね。私もそう思うもん!波留は強がりすぎ!」
百合子は、自信満々で語った。
「思ってなんかないよ。誰もあなたを責めたりしないわって誰もあなたを見てないわってことと同じだよ。」
波留は、授業が始まる前に教室を出ていった。
波留に、両親はいない。
母が再婚して、父方に引き取られたあと
母は再婚した男に暴力で殺され、
父はアルコール中毒におかされ、死んだ。
高校生にもなる私を引き取る人なんて現れず
私は独り暮らしをしている。
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今日も学校には行かず、家で静かに過ごす。
ピンポーン
重たいからだをお越し、玄関のドアをあける。
「あ!はじめまして!隣に引っ越してきた、黒河です!これ、よかったら食べてください!宜しくお願いします!」
隣...空いてたんだ。
波留は素っ気なく挨拶し、手土産を受け取った。
のにも、関わらず、その男の人は帰ろうとしない。
無理やりドアを閉めようとすると、どんどん玄関に入ってきて、閉められない。
「あの、なんですか?」
「あ!すみません!これ!よかったら来てください!!」
渡されたのは、何かの...チケット。
場所は都内のライブハウス。
まさか、アーティスト?
そのチケットを確認する。
「person...。聞いたことない。」
人、人間...?
私も、ふつうの人間に見える...?
「是非来てください!!」
波留は小さくうなずいた。
読んでいただき、ありがとうございます!
投稿は遅いと思いますが、いっそう良い作品にできるよう
頑張りますので、宜しくお願いします!
この小説を読んだ方は、是非、初回作品の『あたらしい季節へ』も
ご覧ください!