12話.勇者のパーティ⑤~カインはメンバーの力の一端を目にする~
こんばんは。
この辺もはや文章に推敲が見られない!
なんで見切り発車したんですかね俺は……。
最初の邂逅はハイケイブオーガの死骸を肴にした虫たちの饗宴。
三mの巨大ヤスデであるジャネンヤスデと、人間サイズのゴキブリ、オニコベカブリが五匹ずつ。
「……骨、苦虫でも嚙み潰したような顔してる。あいつらのどれかが口にでも入ってきた?」
「やめんか!考えただけで吐くからホントやめてくれ!!」
「あ、骨のバカ!そんな大声出したら気づかれちゃうよっ!」
露骨に嫌な顔をするクレイにエリンが余計なことを言ったため、バックアタックがならなかった。
「いやぁ、今のはさすがにエリンさんが大分悪いですよソニアお姉ちゃん?なので……エリンさんとクレイさんは三、私とお姉ちゃんが二ずつでどうですか?」
この提案に、クレイは同意を示すがエリンは唇を尖らせる。
「おのれエリン、許すまじ。だがまぁ、大声を出したのは確かに私だ。承った」
「……骨が骨のくせに表情豊かなのが悪い。五匹をカインくんと共同作業ならやる」
「ほぉらエリンちゃん?ちゃんと反省出来ない子はカインくんに嫌われちゃうぞ~?」
「……それはダメ。誰よりも早く終わらせる。ゴキ三と、反省してるからヤスデも一匹片付けてくる」
そうして、向かって来る虫たちの真ん前一番近くに飛び出すエリン。
先頭きってこちらに向かっているのは動きの速いオニコベカブリ五匹、エリンが出てきても全くその速度を変えない。
エリンはオニコベカブリたちの正面に立つと、“地球”の“日本刀”に似た反りのある極薄の刃持つ剣を一本ずつ逆手に握り、腕を斜め前に開く。
刃は前を向き切っ先は僅かばかり地面に突き刺すといった奇妙な構えのまま、彼女は眼を真正面ど真ん中の一匹に向けて呟く。
「……フリーズスピア」
直後、水色の魔力を纏った氷の鎗が目の前のオニコベカブリを地に貫き止める。
その一匹が全身を凍らせ粉々に砕け散るとほぼ同時、両隣の二匹は構えられていた双剣が見えていないかのように直進し、自ら真っ二つに斬られていった。
左右両端の残る二匹は、殺された三匹など最初からいなかったかのように直進し、片やクレイに砂丘の砂もかくやというほどに細切れにされ、片やソニアの火球六発に囲まれ焼き尽くされて瞬殺だ。
エリンは自分の左右でオニコベカブリが自殺していったのを手ごたえで確認した直後には駆け出しており、向かってくる虫たちの最後尾を這っていたジャネンヤスデの隣に並ぶと剣を払って頭を斬り飛ばし、更に頭のなくなったヤスデの体を戦闘領域から蹴飛ばす。
振り返れば、エリンの“反省”によりノルマがたった一匹になってしまったカインはすぐ傍に来ており、残る二人を眺めていた。
「いやぁ、初めて“無貌”の力を見せてもらいましたけど、あそこまでなにも気づけないなんてことあるんですか。それに、頭を落とされたジャネンヤスデの胴体が反射で毒をまき散らすことを予測して蹴り飛ばす辺り毒虫の相手も慣れてますね」
褒められたエリンは今までの無表情が若干綻び、また返答も饒舌になる。
「……“無貌”は私を認識出来なくするだけじゃない。私の持ち物も、私がやったこともそれが起こした結果も認識出来ない。進む場所に剣を置いといてやれば痛がることもなく自分から死ぬ。残りも仲間が死んだことを認識出来ない辻褄合わせに『最初から俺たちしかいなかったぜ、これが普段の挟み撃ちフォーメーションだぁ』とか思い込んでそのまま突っ込んでくる」
「ヤバいですね、私がいなくてもエリンさんだけで問題ないのでは?」
「……ん。でもカインくんみたいな強い例外が魔族にいないとも限らない。単純に私の攻撃が効かないやつもいるかもしれない。“無貌”が効かなかったら私はただの無個性、全部のステータスが同じくらいでみんなみたいに強みがない」
「完璧な万能型っていうのも一つの個性だと思うんですけどね……」
「……かも。それより、カインくんのヤスデはあれ何した?」
エリンが指差す方向は、ハイケイブオーガの死体がある場所。
そこには、一見無傷のままぴくりとも動かずのびているジャネンヤスデ。
どうやら、動きもしないうちからカインの魔法に捕らわれたとエリンは気づいたらしい。
「ちょっとした細工をしまして。お二人……というか一匹多かったクレイさんも終わったみたいですし全員に説明しますよ」
見れば、二人の周りに魔物はいない。
それぞれのやり方で消し飛ばしてしまったらしい。
「お二人とも、お疲れ様でした。やっぱり個々の戦力はCレートでは物足りなさそうですね」
「まぁね~、ダンジョンが危ないのは、数に任せた敵に飲まれるかもしれないからだもんね」
「うむ。数体程度では肩慣らしにもならんよ」
「……カインくん、そろそろあれの説明して?」
魔族、魔物を殺すことに生きる意味を見出しているエリンは、カインの倒したジャネンヤスデの状況が気になって仕方ないようだ。
「そうでしたね。簡単に言うと、あれの周りだけ空気の割合を変えたんです。」
「「「空気の割合?」」」
あまりにざっくりしたカインの説明に、3人揃って首を傾げる。
「ほら、寒い日に閉め切った部屋で暖炉に火を入れてると息苦しくなったりぼうっとしたりするでしょう。ちょっと内容は違いますけど、あれも空気が変わってるせいなんです。で、虫もある種類の空気が異常に多くなると眠ってしまい、ひどくするとそのまま死にます。ジャネンヤスデは毒腺が高値ですけど、大抵は戦闘やその後処理でダメにしちゃいますから、風魔法で空気をいじって静かに死んでもらいました。ただ、少しばかり時間がかかるので実は一匹にだけクレイさんが大声を出す前から使ってたんですよ」
要するに、高濃度のCO2ガスである。
異世界“勇者”の世界では、愛玩用などの虫を傷つけず安全に移送するためなどに使われることがあるというのを“博覧強記”で知って以来、カインは単体の虫を相手取る際にはこういった戦闘に至らない魔法をちょくちょく使っている。
ただ、指定範囲のみ空気の組成を数分に渡って変更・維持するこの魔法は、MPコストが高く集中力も必要とするため、複数を相手にするには使い勝手が悪い。
「……風魔法で空気をいじる?」
「上位六魔法、かな?」
「そうですね。せっかくですから、基礎六魔法と上位六魔法の違いを“聖賢姫”のソニアお姉ちゃんに説明してもらいましょうか」
唐突な指名に一瞬苦笑を浮かべ、すぐさまいつもの明るい笑顔に戻るとソニアは頷く。
「そうだね、エリンちゃんも魔法は使うみたいだし、そこは説明しよっか。まず、私の師匠だったオルドフも研鑽を積んできた六色の魔法っていうのは大丈夫?」
「それは魔法を使わない私にもわかるな。火水風土に光と闇、よく使われる魔法だろう?」
クレイの言葉に一つ頷いてソニアは続ける。
「そう。それだけじゃなく創造神エルステラ様が人類と魔族に大陸語と一緒にくださった最初の魔法とも言われてるんだけど……でも、いきなり魔法をあげるなんて言われてもなにも分からないと使えないでしょ?だから、エルステラ様は呪文と名前と内容の三つが、最初から決まった魔法を最初にくださったの」
「……それが基礎六魔法?」
ソニアはざっくり『内容』と表現したが、この中には標準的なMP消費量や威力なども含まれる。
例えば、先程エリンが使った中級の水魔法フリーズスピアならば、『50のMP消費で放つ氷の鎗が、貫通した対象を凍結粉砕する』といったように。
ただ、使用者の魔法適正値や意志を反映してMP消費量や威力はある程度変動する。
「その通り。だから、最初こそスキルとして見えないし、使えるようになるのも風魔法とか一つずつだけど、人類には誰でも基礎六魔法が使える種は宿ってる。そして六色全種を使えるようになった後、それでも努力を続けていくことで魔法や世界がどういうものかを理解して、また大きな魔力消費に耐えられるようになった者には上位六魔法のスキルが授かるんだよ」
「基礎六魔法が予め決められた魔法を使うスキルだというのなら、上位六魔法は何が出来るのだ?」
意外にも食いつきの良いクレイに悪戯めいた笑みを向けてソニアは答える。
「分からないんだなぁ」
「……分からない?ソニア姉もスキル持ってたのに?」
「うん。正確に言うと、ありすぎて分からないの。上位六魔法は術者のイメージを実現する魔法。例えば、基礎六魔法で火の最上級は炎の龍を作り出して敵に放つ炎龍だけど、あんなの私の六重奏で使ったら地平線まで見渡す限りの焼け野原でしょ?」
「……ソニア姉、怖い。やったことある?」
かなり本気で怯えたようなエリンに、慈母の笑みを見せるソニア。
「もちろんないよぉ、例えばの話。それで、同じだけの魔力を使って良いからもっと小さく、けど強く燃えて速く飛ぶそれこそこのダンジョンに出てくるケイブハフソニックレットみたいな炎が出来ないかなって思うじゃない。その、“やりたい事”が魔法の理、ルールを越えなければ、上位六魔法なら実現出来る。朝二人で入ったお風呂も、実は無詠唱で使ったというより上位六魔法で実現させたイメージだから詠唱がないんだよ」
「なるほど。ではソニアにも“勇者”の魔法は使えるのか?」
クレイの質問に、ソニアは苦笑しながら首を傾げた。
「う~ん……難しいかなぁ。魔法の理が許せば、“一定範囲の空気を眠らせて殺す空気に変える”魔法は出来るかもしれないんだけど、それが出来るほど空気に関する世界の理解が出来てないと思うんだよねぇ。それにカインくんは『ひどくすると人類同様そのまま死にます』って言ってたでしょう?必ず死なせちゃうのは違うんだよねぇ」
――めっちゃこっち見るじゃないですか……。
明らかに「教えてくれ」と訴えるソニアにカインは苦笑交じりだ。
「そうですね。私のこれは“博覧強記”持ちの“勇者”でなければ独学では再現するのがかなり先になるかもしれません」
「それはつまり、教えてくれるってことかな?」
「ええ。ですが、お話しするには――」
「長い話になりそうなら、もっと洞窟を探索して寝る前に、の方がいいのではないか?」
「そうですね。私も整理してからにした方が聞きやすいでしょうし。クレイさん、ありがとうございます」
そうして、幾度もの戦闘とこのダンジョンならではの発見による感動を経て、彼らは地底湖のある開けた場所に辿り着いた。
が、当然ダンジョンの地底湖に「安全」はない。
ケイブサラマンダーの歓迎、そう、共に運動に興じ、最後には自ら食料となってくれる大歓迎を終えて、地底湖からもこの場につながる各通路からもそれなりに距離と凹凸の稼げる場所を確保することに成功した。
サラマンダーの肉、持ち込んだパンや乾燥野菜などで食事をし、余った肉を瞬間冷凍し寝床を拵え見張りの順番を決めたらいざ、お話し合いである。
「さて。先程の話ですが。いくつか条件があります」
「飲んだ!」
「条件を聞いてからにしてくださいソニアお姉ちゃん」
「だってカインくんは誰かが不幸になるような条件はつけないでしょう?」
満面の笑みでそう返すソニア。
ずるい笑顔だな、と苦笑しつつ応じるカイン。
「わかりませんよ?ソニアお姉ちゃんは一般的にイメージされるエルフとは体型が異なりますから、『聞いた知識を身売りしながら広めてくれ』とか言い出すかもしれません」
「……カインくん、そういうのはソニア姉が『飲んだ!』って言った時に押しとどめず言うもの。私も飲むから早く条件とやらを言って」
「今回に限った話じゃないんですけどね……。まぁ信頼されてるとプラスに受け取りますが。実際、つらい条件ですよ?」
最後の部分を硬い表情で告げるカイン。
「……カインくん。良いから早く」
「分かりました。条件は二つです。一つは、『これから話す内容は、前提の話も含め私が許可するまで一切を秘密にしてください』。そしてもう一つ、これを条件にするには話す内容がかなり大きくなってしまうのですが、良い機会ですので、『教える知識がもたらす力は、魔族相手であっても無暗に使わないでください』、というものを。クレイさんも含め、了承していただけるなら闇魔法で契約しましょう」
条件を聞いたエリンの顔も強張る。
「……カインくん、さっき言った通り、条件は飲む。でも二つめだけで良い、理由を教えて」
さぁ、ここがカインにとっての分水嶺だ。
恐らくですが!あと二話に収まる予定です。
情報チートカインによる解説回はほんと、「矛盾潰す」にしか意識が乗ってない上に先のストーリーで楽しく会話させたいばかりが先行して、見返すと非常につまらんです。
この辺の情報量も、改稿時には負担分散させられると良いなぁ……。というか、断頭台後のストーリー次第なとこありますが。未来と矛盾しない寄り道先にせねば。時系列にならないとその辺りも怖いわぁ。




