訪問者多数
最近、なんか、妙じゃ。
具体的に、何がおかしいというわけではない。わしらは砂を掘り、プランクトンを食べ、たまに来た客にクリーニングをしてやる。
わしと、白さんと、黒。三匹でいつも通り暮らしているはずじゃ。
その生活に違いはない。
その内容に違いはない。
しかし、なにかが……
「最近、来客が多いですね」
「白さんもそう思うか」
そう。
四日前は、数匹の魚をクリーニングしてやった。
二日前は、十匹ほどの魚が集団でやってきた。
そして、今日は、午前中、ずーっと途切れず、魚たちが訪れつづけている。
うーむ。
「ねえ、青さん。このままお客さんが増え続けたら、ぼくたちじゃあ、まかないきれませんよう」
「そうじゃな。白さん。わしらに食べられる量も限界があるからのう」
「…………」
と、わしらが話している傍らで、黒はもくもくとお客さんをクリーニングしている。
そう。黒もエビなので、クリーニングができるのじゃ。
まだ半透明で小さいのに、働きものなんじゃよ。
「どうじゃろうか。ここはひとつ、長老にも相談してみるというのは」
「賛成です。あとで、ウナギさんのところにお邪魔しましょう」
と、こうしてその日はそのあと、ウナギ長老を訪れ、相談することになった。
ゅ゜
翌日。
由々しき事態じゃ。
穴から起きてきたわしらの目の前にあったのは、想像を絶する光景じゃった。
まさかこんなことになるなど、思ってもおらんかったわ。
「青さーん! こっちの方は終わりましたよー!」
「そ、そうか。白さん、それではこっちのチョウチョウウオさんを手伝ってくれるか」
「はぁーい!」
今、わしらは、
魚魚魚魚魚魚魚魚魚魚。
魚魚魚魚魚魚魚。
魚魚魚魚。
魚。
わしら。
こんな感じになっておる。
どこで嗅ぎ付けてきたのか、種類も大きさもばらばらの魚たちが、わしらを目当てに押し寄せてきたんじゃ。
こやつら、並ぼうともせん。我先にクリーニングを受けようと必死な様子じゃ。
「これじゃ終わんないよー!」
「ええい! 並べ! 並ぶのじゃ! 並ばん奴は一番最後にするぞ!」
宣言通り、割って入ったやつは無視することにする。
割とおとなしく待っておるやつからクリーニングしていくと、魚といえど学習したようで、そのうち一列に並んで待つようになった。
お利口じゃ。
しかし、列が長い。長すぎる。まったくどこまで続いておるんじゃ。
わしらは次々と魚をさばいていく。
さばくといっても、料理ではないぞ。綺麗に体を磨いてやるんじゃ。
虹色に脂ののったアジ。
ひょっとこのような顔のハギ。
新型戦闘機のような形のヒラメ。
でっぷりと太ったコノシロ。
食っても食ってもキリがないわ。
そろそろ腹が膨れてきたぞ。
うー。
まだ終わらんのか。
泳ぐのが苦手そうな肥満体型のハコフグ。
筋肉ムキムキのスズキ。
電飾を取り付けたような、キラキラのキンメダイ。
……お前さんは見たことがないのう。なんという名前なんじゃ?
ふう、ふう。
だ、だめじゃの。
終わらん。というより、終わりそうになると、追加の群れがどこからともなく現れおる。
白さんも限界みたいじゃし、むごいかもしれんが、残りの魚にはあきらめてもらうか。
黒よ、おぬしは、まだいけるのか?
「おーい、大丈夫かー!」
「あっ、さかなさん! 応援です、応援が来ました!」
「応援じゃと? あっ、あれはウナギ長老!」
おお。
上流のほうから、ウナギ長老が泳いできた。そしてその後ろには、わしもよく見知った魚が何匹もやってくる。
特徴的な黒の一本縞。
あれは。
ホンソメワケベラじゃ!
クリーニングにおいて、ホンソメワケベラの隣に出るものはこの海におらん。彼らは掃除屋の筆頭なのじゃ。
ウナギ長老が、彼らを連れてきてくれたんじゃろうか。
「長老、助かったわい! ホンソメワケベラさん、残りはお願いしていいかのう」
「もうおなかいっぱいです」
「…………」
何匹ものホンソメワケベラたちが、あとはまかせろ、というように並んでいる魚たちに取り掛かっていく。
……その中に混じって、黒はまだ掃除をしているな。あまり無理はするなよ。
それにしても。
やれやれ、やっと終われるわい。
げっぷ。
今日はとにかく巣穴に戻って、ゆっくり過ごすとしよう。
〈 レベルが上がりました 〉
〈 白のレベルが上がりました 〉
〈 黒のレベルが上がりました 〉




