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まさかのさかな やりなおし  作者: 岩岸佐季
第一章 海王のしっぽ
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休暇

「休暇じゃと」

「休暇ですか」


 わしと、白さんは、それを聞いて、きょとんとした。


「ああ。みんなの総意でな。おまえたちが働きすぎて、つぶれないようにしようと」


 これは、うなぎ長老。



   ゅ゜



 そういうわけで、わしらが働くコロニーでは、最近、ちょっとした変化があった。


 なんでも、そこそこの数のクリーナーが揃ったため、これまでのように全員が毎日働くのはなく、クリーナーの間でもある程度シフトのようなものを敷くのだという。

 魚なのに、シフト制とは。

 厳密に三交代制のようなものではないらしいが……発想がすごいのう。


 前世では、魚がこれほどの知恵を持っているとは、想像もしておらんかった。

 あるいは、これは自然の知恵、というものじゃろうか。

 そういえば、蟻や蜂のような集団行動する生き物は、ある程度働く役目と休む役目が決まっていて、群れの全員が常に働いている、というようなことはないのだという。

 これも、それに似たものなのかもしれん。

 なんにせよ、わしらもお休みをもらえると聞いて、嬉しくないわけではない。


「わかった。ありがたく休ませてもらうことにするわい」

「ありがとうございます、長老」


 わしと、白さんは、長老に感謝する。


「ああ、構わんよ。というか、こっちこそ、おまえさんたちには、ずいぶん助けてもらったからね。明日一日くらい、ゆっくりしておいで」


 と、長老は言う。

 つまりこれが、次の日わしらが休むことになった、理由じゃった。



   ゅ゜



 さて。

 単に休むと言っても、わしらは魚と海老。

 海の中でできることなど、たかがしれておる。


「白さんは、どうするんじゃね」

「わたしは、巣穴をきれいにします」

「それじゃあ、いつもと変わらんのじゃないか」

「いいえ、このところ忙しくて、手が付けられていなかったものですから」


 白さんは楽しそうに、そう言った。

 わしにしてみれば、白さんのおかげで巣穴はいつも清潔に保たれていて、そのことに感謝しておったんじゃが……白さんからすれば、不満の残るものだったらしい。


「青さんは、どうしますか」

「わしか? わしは、そうさなあ」


 わしには白さんとは別の考えがあった。

 ぐるりと、前鰭を回し、


「このクリーニング・ステーションを、一度ぐるりと回ってみたいんじゃよ」

「え?」

「ここはわしらの住処じゃ。じゃがなんせ、広い。わしが挨拶したこともない魚が、たくさん住んでおる」


 せめて、今いる魚くらいは、把握しておきたい。

 そう言うと、白さんはなるほど、とうなずいた。


「青さんらしい、いい考えだと思います。ステーションの中であれば、危険はないと思いますから、楽しんで回ってきてくださいね」


 いやはや。

 本当に、白さんの言葉遣いは、うまくなったもんじゃの。



   ゅ゜



 さて、と考える。

 コロニーをどこからめぐるべきじゃろうか。

 コロニーの作りは、時計回りに、東エリア・南エリア・西エリア・北エリア、そして真ん中の中央エリアに、大まかに分けることができる。

 わしらの住居がある中央エリアは、除外。

 東エリアは、このコロニーの玄関口のような場所じゃ。うなぎ長老の巣もあるし、訪れる魚たちでごったがえしておる。じゃから、ここも除外。

 残るは南・西・北じゃ。


 南には海藻が多く、ホンソメワケベラをはじめとした、多くのクリーナー種が巣を構えておる。

 西は、岩場が大半をしめている。タコなどの魚以外の種が多いらしいが、わしはこれまで訪れたことがない。

 北は、一段深い海域になっている。もしもこのステーションが襲われたとき、コロニー内に巣のない魚たちが、逃げ込むための場所らしい。数は少ないが、住んでいる魚もおるとか。

 

 わしは考えた末、南から順に回ることにした。

 考えてみれば、あれだけホンソメワケベラさんたちにお世話になっておきながら、ご挨拶に行くのははじめてじゃのう。

 なにか土産でも用意したほうがええんじゃろうか。

 長老に相談してみたほうが、いいかもしれんな。


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