極悪令嬢の最後の血塗れ
私こと、シンシアは非常に大変な立場となった。原因は慕う姐さまが久しぶりに顔を出す時にわかる。
とにかく悪い噂は学園では当たり前になった。お家騒動で多くの家を失い、母親が帝国で反乱を起こそうとした。その母親を殺した。事実なのだろう話は噂として虚言も含んで拡散される。マクシミリアンにもその悪い風評被害が及び距離を取ろうとする勢力も
だが、皆が口々に噂するが。姐さまが現れて一変する。姐さんは数人の令嬢を連れて現れては皆が閉口し、顔を背ける。私はその姿に嫌悪感を持つが、姐さんは笑っており、彼の騎士であるソーマ様は見届けて「何もするな」と釘を刺して何処かへ向かう。
「銀姐さま、お体は大丈夫なのですか?」
私は聞いている。もう、1人の体ではないことを。
「心配してくれてありがとう。問題はないわ、学園に来るとみーんないい顔するのよ。面白いわ。皆が私を悪役として見てくる。心地良い」
「銀姐さんはそれでいいんですか? 真実は帝国を救ったのでしょう?」
「ああー身内の不詳時なので、それは違うと思うわよ。それにシャブ漬け目的でもあったし。英魔国内なら全員打首よね。結局、皆。『わからない』のよ」
大分、大人になったような気がした。昔なら噛みつきに行っていたのに大人しい。そう、首輪がついている犬のようだ。
「まぁ、都合がいい話ではあるわ。ね、君たち」
銀姐さまの後ろに居る令嬢たちは笑顔で頷く。彼女達は一体、誰だろうか。
「紹介するわ。シンシア姐さまよ。学園内では私のNo2。私不在の場合の決定は全て。彼女がするわ」
「え?」
「では、シンシアにも紹介してあげる。彼女たちは魔族です」
私の緊張や驚きを余所に彼女は恐ろしい言葉を溢した。
「マクシミリアンの噂ってご存知でしょう。彼女たちは魔族でも比較的に裕福な家の者。帝国に留学してきたのです。帝国を学ぶための学者のような『お年』の方々です」
1人1人が丁寧にお辞儀する。人のような姿で人でないと言う事を教えられて私は頭が固まる。
「学園ではシンシアが取り締まる事が多くなるわ。シンシア。姉さんとして頑張ってね。帝国流の淑女を教えてあげてよ蛮族に」
ペロっと姐さんは舌を出す。後ろにいる人は苦笑いをしており、距離を取っていた。
「そ、そんな私には無理ですよ!?」
「いい一例を。ある名家の令嬢は病弱ながら帝国内では大きい勢力を持つまでに至った。そんな彼女は『立場が人を作る』と言ったわ。出来なくて当然、やって苦労して考えて変える。それが私たちよ。まぁ、今日はご挨拶よ」
「ね、姐さま」
「腹をくくりなさい。もう、何も知らない奴では済まされないの」
拒否権はない。私は一人ひとりとご挨拶をする。私の学園生活は激変を遂げるのだった。
✽
帝国内マクシミリアン駐屯地騎士団の長は長男が継ぐことになり、俺は銀狼組織の組長としての実権を持つことになった。父親は残念がったが、状況が状況であり、「混乱を落ち着かせるために仕方ない事」と納得した。
学園は特別に卒業の手筈になり、マクシミリアン騎士の称号を筆記試験と実技試験免除の特別に正式に受け取る事になった。状況や、今までの功績による結果である。まぁ、実技試験相手がいないとも言える。
そんな中で、英魔族の留学者の管理も受け持った嫁と共に忙しい毎日が訪れる。燃えた屋敷の後始末後、麻薬など再利用や色々とやる中で新しい事業もする。
とにかく、自分より歳上に命じる事の大変さを感じながらも仕事を行う。
「金狼の残党が牙を砥いでいるとの事ですが組長」
「お金の出所は?」
「帝国貴族」
「関わったら処刑されるかもしれないのに怖いもの知らずだなぁ」
「ソーマ組長ほどでは……姐さん妻に出来る。手綱をよく導けますね」
「ワガママなの怒ってるだけだよ。黒騎士に報告すればいい。表立って動いて貰えばいいさ」
「では、次に判断を……」
多くの情報が手に入り、帝国の状況を知れ、マクシミリアン王国、英魔族の状況も知れる。また、その情報が売れるため。帝国内で私を恐れる者も出る。
「はぁ、抗争。彼女とあって1年未満でなんでこんなにも変わるかな」
「組長の心情お察しします。ですが、鍛えられてますね。判断に迷いがない」
金狼派残党の彼は非常に有能であり、大いに助けになる。
「上に立ちたいと思わないか?」
「私がですか? 怖くて無理です。現に落ち着いてから顔を出してます。裏切り者ですよ。皆、強くないんです」
「確かに。でも、剣は扱えるように。それが組長命令」
「……」
嫌な顔をする彼に俺は笑みを見せる。そして、笑みは凍りつく。扉が開かれて人狼が駆け込んでくるのだ。
「組長!! 銀姐さまが英魔族の方と喧嘩してます」
「……」
そう、本当に彼女を嫁にして苦労が絶えない。
✽
「もう、大きいお腹でどうして君は危ない事をするんだ」
「勘違い英魔族を罰して何が悪いの?」
私は机に固定されて旦那であるソーマにお叱りを受ける。
「そういうのは俺と黒騎士の仕事。君は何もしない」
「ちぇ、お高く止まって」
「子供に何かあったらどうするんだ?」
「何もないわ。元気……うっ、痛いお腹が!?」
「ま、だから言ったじゃないか!? 医者を……」
「ごめん嘘ー」
「……はぁ」
彼の慌てた顔に満足し、私は大欠伸をする。下を向くと大きい大きいお腹に首を傾げる。
「ああ、本当に居るのねぇこの子。子供出来るなんて想像もできなかった。にしても、まぁまぁ頑丈ね。叩いても痛くないわ」
「だからって叩くなよ!?」
「叩かないわ。まぁ、子育ての時はわからないけど。あぐ」
「どうしたんだ?」
「痛い。え、痛い」
「おいおい、嘘。いや、本当に来た!?」
「来たかも。痛み止め効かないレベルの陣痛。ああ、これ死ぬ」
「ちょっと横に!! すぐに医者を呼ぶ!! 誰か!!」
予想よりも厳しい痛みをベットで感じる。間に合う空気でない状況。陣痛は今まで無かった事を不思議がられたが、これは危ない状況であるのもわかる。ベットの布団を握り締めて考え笑みを向ける。
「痛み、これが痛みね」
きっと私はここで生むのだろう。ヌルっとした感触に私は慌ててその肉の塊を抱き上げて背中を叩く。大きい大きい産声に安心し、繋がったヘソの尾を噛みちぎる。案外すんなりでそのまま立ち上がり、廊下を歩く。お湯をつけないとドロドロなのだ。子供は泣き止み、眠り出して私は股を見る。毛の尻尾も耳もある。
「オス、人狼。はい、確定」
私を見た使用人は悲鳴をあげ、ソーマは青い顔をして医者と現れる。それに対して私は血塗れで答えた。
「遅い」
その後、私と子供は回収されたのだった。
✽
「お姐さま、出産おめでとうございます。あの、大丈夫なんですか?」
「母子共に健康、見てこの子、ずっと寝てる。ちょっとつまらない。もっと暴れてもいいのにね」
腕の子はずっと寝ている。とにかく夜中も寝ており、夜泣きさえせず寝ている。時に震えるが寝ている。シンシアが頬をつつくが寝ている。他の令嬢も様子見るが寝ているのですぐに飽きるのだ。
「生きてます?」
「生きてるわ。乳飲む時だけ起きるの」
「御姐さま、学園生活大丈夫ですか?」
「うーん、大丈夫。それよりもあなたはまだなの?」
「御姐さま。理由はあれど、その......」
「そうね。基本、学園で許嫁。結婚、出産はちょっと早いわね。まぁ、気にしないわ」
私は帝国内で最悪な令嬢。それでも、この子は祝福されている。
「ああ、あと出産は死ぬほどいたいわよ」
「......怖い」
ああ、本当に彼女を苛めるのは面白い。
「でも、それが役目よ。令嬢のね」
そして、私は悪役だろう人生を過ごす。




