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王女は普通を主張します!  作者: 火宮魅月
政務編
5/5

ドキドキ☆総務省式サバイバル

遅れてすいません。

 ダダダダッと音を立てて城内の廊下を疾走する。先程、先輩から師匠の居場所を特定できたとの連絡を受けて走っているリアちゃん、7歳。既に息は切れ、酸欠状態である。

 総務省・・・否、文官の中では先輩の命令は絶対という掟がある。文官は、どんなに理不尽な命令でも、先輩の命令とあれば、絶対に聞かなければいけないのだ。まあ、あまりに理不尽な命令ばかりを行うと、師匠や各省の長官や副長官などのトップが直々に鉄拳制裁(ストレス発散)を行いに(嬉々として)出掛けるが。

 とにかく、私は何としてでも総務室に辿り着かねばならないのだ。・・・後が恐い。

 ・・・・・・・(かす)む視界に見慣れた総務室の扉を見つけ、思いっ切り扉を蹴破る。


「はぁっはあっ!・・・・・せ、先輩!!文官リア、只今帰還いたしました!!」

「遅いっっ!!馬鹿者!つーか扉を蹴破んなボケがっ!」

「ブフゥッッッ!!」


 ・・・・・・・瞬間、もの凄いスピードでナニカが飛んでくる。



 ・・・・・あらやだ。もの凄いデジャブ。つーか酷くね!?私めっちゃ急いだよ!?



 それを見事に顔面で受け止め、宙を舞いながらふとそう思う。ビタンと床に叩き付けられ、フラフラと立ち上がりながら投げられた物体を見る。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え??」


 思わず間抜けな声を漏らす。私の手の中には、私の相棒・・・サバイバル袋が。

 


 ・・・・・ちょっと待て。何故、サバイバル必需品がギッシリ詰まった袋がここにある。



 これは、私が師匠に修行(と言う名の虐待もしくは虐め)を科せられる際に、もう手元から離せなくなったサバイバルの友である。凄いだろう。この一袋に入っている道具だけで、私は何処でだろうと生き残れる・・・・!!

 本当に、何故これが此処にある。頭の中で、警報がガンガン鳴っているのだが、・・・まさか・・・・・・・。


「・・・・・・ええ。リア、貴方の思っているとおりだと思いますよ。あの馬鹿・・・もとい『ストレス・トラブル製造機』を捕獲するには、サバイバルが必須ですよ。さあ、馬鹿狩りに行きましょう。」


 顔に出ていたのだろうか。副長官が憐れみの籠もった顔で私に告げる。

 それを聞いた私は、一瞬で方向転換し、元来た道を駆け戻ろうとする。


 ヤバイッヤバいよっ。死ぬ!私、死んじゃう!!

 前回、馬鹿狩りに行ったときは、捕獲するまでに掛かったのが2ヶ月。その間一睡も出来ず、師匠の悪戯(意訳)に、何回、川のあちら側に渡りかけたことか・・・リアルに、お花畑を見た。

 今回、生き残れるかどうかも怪しいのだ。だって・・・今まで、(主に師匠のせいで)死と生の狭間を彷徨(さまよ)ってきた私の本能が警鐘を鳴らしているのだ。・・・・・今回は何かヤバいと。


 くるりと方向転換をし、一歩踏み出そうとしたその時、


 カッッッ


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 鋭い音が響き、誰かが投げたペンが城の石の壁に刺さる。

 うぉぉぉぉい!ペンって投げるもんじゃねぇ!つーか、石に刺さる物でもねーよっ!

 内心冷や汗ダラダラの私が恐る恐る背後を振り返ると・・・・・・




  般  若  様  が  い  る  ・  ・  ・  !  !



 やけに、ニコニコとした超笑顔の先輩ーーちなみに、師匠の悪戯のせいで、総務省に配属されてから数日でふさふさだった髪の毛が、全て御臨終(ごりんじゅう)致しましたーーとご対面☆そんな彼は、背中に黒く(うごめ)くナニカを背負っていた。

 ・・・・・見なければ良かった。ぶわっと汗が噴き出る私とは対照的に、重低音(バリトン)で殺気と殺意に満ちた声ーー本人的には軽やかで優しげな声ーーが私を絡め取る。

 先輩の声って、腰に響くエロい声だ。わぁお、嬉しくねぇ☆




「フフフッ、いけずだな、リア。一人だけ逃げようなんて。水くさいじゃないか。ここは俺達と一緒に、逝こうぜ。・・・・・先輩命令だぞ。逃げるんじゃねえよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




  祟  り  神  様  が  来  る  よ  ぉ  ~  !  !



 最後にポツリと付け加えられたドスの効いた声に、ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇと内心おののく。 

「・・・・・い、逝きます・・・・・」

 (色々な意味で)恐い先輩に逆らえるはずもなく・・・・・私は、ガックリと肩を落としながら涙をのんで答える。ああ・・・他の先輩達の視線が可哀想な物を見る目に・・・・・・




 見ていたのなら助けろよ薄情者共がぁ!おいそこ!目を逸らすんじゃない!!”今回の犠牲はリアか・・・・・ザマァ”ってどういうことだコラァ!一言で説明しろ!!




 あまりにも冷たい先輩達に、思わず涙目になる。その時、肩にふと重みが。そちらを見ると、悟りを開いたように穏やかな顔をした先輩の姿が。彼は、先程、先輩達を締め上げていたドS大王様である。

「リア・・・・・・・お互いに、生きて帰りましょうね。」

 

 ・・・・・・ああ、この人も、被害者(仲間)だ。思わずガッチリと固い握手を交わす。よく見ると、先輩も涙目である。・・・可哀想に。

 ふと、あることに思い至り、微笑ましそうに私達を眺めていた副長官ーーこの人は、さっきから、ニコニコと笑っていたのだ!この人、ある意味勇者、つーか、強い!!ーーに問いかける。



「あれ?今回、誰が犠牲・・・・・・・いえ、師匠を捜索しに逝くんですか?総務省の人員全員を動員となると、相当な人数が動くことになりますが。」

「総務省の人員全員は動かしませんよ。それは無駄です。なので、馬鹿の捜索は私とリアを含めた少数精鋭で行い、その他は全力で増え続ける書類に対応して貰おうと思います。」

「ちなみに、その少数精鋭とは・・・・・・」

「もう此処に揃っていますよ。では、紹介をしていきましょうか。」

 そう言って合図をした副長官の後ろからサバイバルする気満々の文官数人。今回は、私達を含めて7人で行くらしい。・・・・・わお、さっきの先輩も居るね。

 ・・・・・やだ!今回、師匠に一発どころか百発入れたい被害者達(ある意味ガチ勢)じゃん。

 今回は正当防衛。師匠を全力でぶん殴りに行きますよ~。楽しみにしててネ!!




 そんな、少数精鋭の一人目は、普段は優しい先輩だが、スイッチが入るとどす黒いオーラを纏う通称”ドS大王様”のクレト先輩。先程、私と握手を交わした先輩である。そんな彼には得意技があるーーまあ、見る限りこの場に居る全員が特技がある曲者(くせもの)だが(私も含む)ーーそれは、”空間転移魔法”。ランクで言うとSSランクに相当し、それを使えるのは大魔法使いのみというのが通例である。



 ・・・・・・・・・・そう、普通はな!!残念なことに、レイノルド王国(うち)、特に総務省は普通ではない。普通だったら、長官(トップ)が書類仕事が嫌だからだと言って逃げ出したりしない。

 ・・・・・・・・・・大体一年に二回のハイペースで!!ーー1回逃げ出すと捕まえるまでに数週間単位の時間が掛かる(前回は特に長かった)上に、その間に溜まった書類を片付けるのに大体数ヶ月単位の時間が必要なのだ。それが年に二回あるのだと考えてみろ。・・・・・私達に休みがないんだよ!!ーー




 我ながら、泣けてくる。ま、まあ、うちは昔からトップが問題児(意訳)だったお陰で、トンデモ文官がどんどん育ってきたのである。私達は、この総務省に配属されてから、様々な方向(意訳)に突き抜け、様々な能力を取得してきた。・・・・・・馬鹿を捕まえるため(だけ)に!!



 と言うわけで、クレト先輩もそんな例に漏れず、素晴らしく突き抜けてしまったお方である。この人は、師匠を捕まえるために、使えた人が歴史上にも数人しか居ないーー使えた人は、必ず歴史に名を残す偉人となっているーーSSランクの”空間転移魔法”・・・・・つまり、伝説の魔法と呼ばれる”空間魔法”を極めたのだ。



 ・・・・・・もう一度言う。クレト先輩が”空間魔法”という習得するのも使いこなすのも大変な魔法を自分のものとし、手足のように自由自在に使えるまでに極めた理由、それは、師匠を捕まえるためだけである!!!彼は、師匠の増やした『書類の被害者の会』会長である。そんな彼の頭の中には、空間魔法の使用法が師匠捕獲以外さっぱりない。これだけこの魔法が使えるのは歴史上にもなかなか居なく、間違いなく歴代至高の空間魔法の使い手である。



 そんな人が、馬鹿の捜索に奔走するなんて・・・・・・・この世界、大丈夫なのか?色々と。

 いや、師匠が大物なだけか?でも、それで部下が死にそうになるって、どうなの?



 ・・・・・・・”(偉い人)がダメだと(被害者)が成長する”って、本当なんだね。うちは、多少・・・・・いや、かなりねじ曲がった方向に急成長しています。逆に、段々と手遅れになっているので、切実に止めたいです。どうしたらいいでしょうか。



 今は、うち(総務省)最後の良心(副長官)が頑張っています。彼の毛根も心配です。あんなに優しくてかっこいい副長官の髪が寂しいことになったら、私は全力で原因の馬鹿の髪を思いっ切り(むし)り取ろうと思います。

 ・・・・・あ、仕返しと称して、私の髪がなくなりそうなので、やっぱり他の方法を考えようと思います。





 ・・・・・・・・・・とにかく、これから、共に死線を(くぐ)り抜けていくのであろう先輩(同士)に声を掛ける。




「先輩、先輩!頑張りましょーね!!」

「ええ・・・・・・・・・リア、今回、転移魔法を筆頭とする空間魔法の制限は行わず、全解放しますからさっさと捕まえましょうね。私が一番恐いのは、遅くなれば遅くなる程、量がアホみたいに増えていく書類です。」

「ああ・・・・・・・・はい。(私は、真面目な顔をした貴方が本気で書類を恐いと言っていることが恐いです)」


 これまで、書類が原因で先輩の胃にかかったストレスを想像し、思わず目頭を押さえる。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて、なんて可哀想な人なんだっ!!この人!!



 二人目は、いつも寡黙(かもく)でクール、女性どころか生物に興味(ゼロ)な、通称”氷の貴公子”マティアス先輩。そんな彼の得意技は、素手による武術及び格闘術である。その腕は相当なもので、私の格闘術の師である。ちなみに、私は、今まで素手での格闘術でマティアス先輩に勝てたことはない。

 ・・・・・・・・・ちなみに、私はそんなマティアス先輩が大好きである。師匠に負けたら師匠への殺意ばかりが溜まるが、先輩に負けたら、先輩に惚れ直すだけである。

 なんだろう、この差。・・・・・・・・人柄というか、人格?ぜひ、師匠ではなくマティアス先輩が私の師になって欲しい。

 私が大好きな彼ーー超イケメンなので、モテる!!ーーは、師匠を捕獲する担当である。

 そんな先輩には、悲しい悲しい心の傷(トラウマ)がある。・・・・・勿論、バリバリ師匠関連で。

 先輩は昔はよく話し、よく笑っていたらしい。しかし、師匠に悪戯(意訳)ーーちなみに師匠(化け物)基準ーーを度々(たびたび)仕掛けられて表情筋が死滅してしまったのだ。その(本人が無邪気なせいで、めっちゃ質が悪い)悪戯のせいで先輩は、異性どころか生物への興味も表情筋と共に死滅してしまったのだ。






=師匠への愛(笑)も、相当なものである。






 先輩が師匠を捕獲する際に、本気の殺意と憎悪を込めて放つ一撃には毎回ほれぼれするね。思わず、全身全霊で”先輩!!そこだ!殺っちゃえ~~~!!”と応援してしまった。

 ・・・・・・その後のお仕置きは怖かった。思い出すことを私の全てが拒否している。・・・察してくれ。




「・・・・・リア、今度こそ殺るぞ。・・・あの人を今回こそこの世から完全に抹消してやる・・・!」

「はいっ!!先輩!大好きです!!」

「・・・・・マティアス、今回も過激ですねぇ。」

「ありがとう、リア。・・・・・・・・クレト、俺は忘れない。7歳の時、あの人に潜入と称して女装をさせられた挙句、変態共(ロリコン)の中に放り込まれて色仕掛けをさせられたことを。・・・・・あの時は、本気で貞操の危機だと思った。それに、10歳の時、女装させられてオークやゴブリン(性欲の塊)の群れの中に放り込まれ、いろんな意味で襲われたことも、諜報と称して危ない趣味の雌豚共(ショタコンの貴婦人)に色仕掛けをさせられ、ガチで食われそうになったこともな。・・・・・・・・本気であいつコロス。」

「うわぁ・・・・・・・・・・・・(先輩が生物不信になったの、絶対師匠のせいじゃね?つーか、先輩、そんなことをさせられてたの!?)」

「マティアス・・・・・・・・・・・・・(同期として、仲間として、友人として、男として君に同情します。絶対、ロリコンで男性不信に、オークやゴブリンで生物(特に魔物)嫌いに、ショタコンで女性不信になってしまったのですね・・・・・可哀想に。

 君は、周りから氷の貴公子と呼ばれるほどの美貌を持っていますからねぇ。そんな奴が子供の時は、どうなのか。簡単に予想が付いてしまうから悲しいですね。・・・・・いいように遊ばれたんですね、長官に。)」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・衝撃の事実発覚。先輩の黒歴史を思わぬところで聞いてしまった。すっごいのも。しかも、言い方からしてもっとあるようだ。

 ・・・・・本気で師匠、何やってんの!?・・・・・・・先輩!私が(かたき)を取りますね!!



 3人目は、男の中の(おとこ)!!弱き(我ら)を助け、(師匠)を倒す、総務省のヒーロー(笑)!!通称”頭と心が輝く男”デルス先輩!

 この先輩は、先程、吐血した先輩に師匠特製☆『徹夜に劇効き!!元気になるお薬』を投与し、か弱き少女(笑)に向かってペンを思いっきりぶん投げ、壁にぶっ刺したお方である。

 そんな彼の得意技は、魔法!とにかく、魔法!!髪が無く、浅黒い肌、頬に走る傷など、歴戦の騎士も一睨みで泣かせる凶悪な顔面を持っている彼だが、総務省に所属していることからも分かるとおり、かなりの頭脳派だ。しかも、長官も認める魔法使い。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・一般的なインテリ魔法使いのイメージ(憧れ)をぶち壊しにかかっていると思うんだ。そんな罪なバルト先輩だが、本当に魔法の腕は凄い。下手したら、魔道省(本職)の皆様さへも上回る実力を誇るのだ。




 攻撃魔法も治癒魔法も防御魔法もお手の物!!・・・・・・・・チートだ。チート様がここにいる。






 やっだなぁ。チートはチートでも、尊敬したりは全くしていない。そうなった経緯が嫌すぎるのだ。

 師匠への熱い思いが溢れている=師匠関連の被害が膨大なデルス先輩。その彼の苦労は、ピッカピカに輝くその頭が証明している。しかも、その犠牲()は、配属されてから数日でお亡くなりになられたのだ。

 そんな先輩は、それはそれは魔法の練習を頑張ったらしい。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・死滅してしまった毛根の復活と、憎き敵(師匠)への復讐のために。副長官曰く、それは思わず涙が滲む程必死だったらしい。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・その結果は言わずもがな。今も、デルス先輩の頭は眩しく輝き、師匠は傷一つ無く、健やかに(私達にとって)地獄の日々を過ごしている。






「ハーッハッハッハ!今度・・・・・今度こそ、長官の髪をむしり取ってやるわ!!俺に失う物は、もう、何もない!!」

「先輩・・・・・・まだ、髪のこと、根に持っていたんですね。」

「当ったり前だ!バカヤローーーーーー!!リア、クレトも、分かってねーなー!!持たねぇ訳にはいかねーよっ!配属された若造をその日から、あちこちに振り回した上に、結局は書類の山にぶち込んだイカレ男にはなぁ!三日目で胃に穴が空き、10日目に10代にして髪を永遠に喪い、15日目で長官製のゲテモ

 ノ劇薬と一生の友になった俺の絶望をあの人に味わわせてやるんだっ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(無理っ!師匠に仕返しやるとか絶対できん!・・・デルス先輩、人は、化け物には勝てないんだよ・・・?つーか、頭のネジがぶっ飛んだあのイカレ野郎は、絶望を感じたりする神経が軒並みブチ切れているんだけどなぁ。そんな野郎に仕返し?無理無理!!そんなの、あの人にとって、遊んでって言うのと同じもんだよ!!)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10代で毛根死滅・・・可哀想すぎるんですけど。私も

気をつけましょう。私も20代でハゲは嫌です。)」




5人目は・・・・・・・・・・・何処に?

「・・・・・・・・リア、僕です、僕。」

「のわっ!!」

 いきなり真横から声が聞こえてきて、思わず飛び退く。え、誰!?さっきまで全く気配なかったよ!?

 いきなりの亡霊的な登場に、ドキドキする心臓を押さえながら振り向くと・・・・・

「・・・・・・・あ、ヴラドレーニス先輩!びっくりしたじゃないですかっ!いきなり出てこないでください!!」

「・・・・・・・・ごめん。でも僕、始めからここにいたけど・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、何か、すいません。」


 えーと、5人目は、伝説的に影が薄く、あの師匠からも存在をスッパリと忘れ去られてしまう、ある意味幻の文官、通称”総務省の幽霊”ヴラドレーニス先輩。

 この人は・・・・・・・・・本人曰く、先程からずっと居たそうなのだが・・・・うん。そういうことにしとこう。ずっと一緒に居たはずの副長官もビックリしてたしね。

 そんな彼の得意技・・・・それは、サバイバル技術!!ぶっちゃけ万能で、この人は何でも出来る。



 森の中で寝床を確保し、毒草と薬草と食べられる草を見分けたり?

 王宮のシェフ顔負けの料理を披露したり?

 迷宮(ダンジョン)では、罠などをことごとく解除していったり?

 挙句の果てにはその影の薄さを生かして、襲ってくる魔獣共を片っ端から闇討ちしていったり?




 わお、やっばいね。なんて万能なのこの人。

 それにしても、何故そんな技術を身につけたのか?


 ・・・・・・・・それには、深く(はないが)悲しい訳がある。


 

 

 その影の薄さで演習の時や師匠捜索の時に存在を忘れ去られ、(故意じゃ無く、本気で)魔の森の中においていかれて必死で寝床を確保し(勿論、食料も持って行かれたので、食材も料理も自分でしなければならないし、しなければ命に関わる)、はたまた迷宮(ダンジョン)でも存在を忘れ去られ、自力でダンジョンを踏破したり、その他諸々と、そんな災難の中で、必死に技術を獲得してきた色々と可哀想な人なのだ。




 総務省内でも、顔を忘れ去られたり、名前を忘れ去られたり、又は両方・・・というか、存在を忘れ去られたりしている。

 城内では、見つけるといいことがあるというジンクス付きのラッキーアイテム扱いをされている今日この頃・・・・・・・・・・




 何か不憫。すっごい不憫。可哀想すぎて、目から汗が出て来るわ。



 というか、先輩は何故こんなにも影が薄いのだろうか。顔は、イケメンなんだよ?けど・・・・・なんか、地味。あれだよあれ!気が付けば風景!!みたいな!

 ・・・・・・・・やっぱり、先輩の名誉に関わるから、これ以上は掘り下げないでおこう。








「先輩!先輩!!思っていたんですけど、先輩って、名前に完全に迫力負けしてますよね!」

「うん。なんで、両親はこの名前を付けたんだろうね・・・。」

「先輩が強く、格好良い男になるようにじゃないですか?」

「クレト君、言うねぇ。だけど、現実は、仲間にさへ忘れ去られる男になっちゃったけどね。ははっ、どうせ僕は、10徹した後、同僚に声を掛けると幽霊扱いされた挙句、存在も完っ璧に忘れ去られる男だからさ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(わお。先輩、いい人なのに。なんて言うか・・・・・うん。何か(つら)い。つーか、不憫。)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(名が体を表わさない系男子の極み。先輩、いつも凄くて憧れているのですが・・・・さすがに、この影の薄さ(これ)はないですね。)」




 6人目は、いつも優しい、”あの”長官の懐刀にして、総務省を率いる陰のトップ!通称”最凶の書類地獄の長”!副長官!!




 7人目は、いつも元気で明るい、”あの”長官の弟子にして、常識から外れまくったお馬鹿師弟の片方!通称”ストレス・トラブル製造機2号”!私ことリア!!

 ・・・・・・あれ?なんか、一人だけ、(あつか)可笑(おか)しくない!?




 今回の、師匠捕獲隊メンバーは、この7人で行ってきます。

 つーか、メンバーのキャラ濃すぎねぇ!?何故にこのメンバーを選んだ。副長官。

 ・・・・・・・うん。何か波乱の予感。もう、帰っていいですか?




 

 




 



これから、総務省式、命の危機9割、涙や感動その他諸々一割のサバイバル生活が始まります。

ぜひ、これからもよろしくお願いします!

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