第一話
「汝の血、肉、骨、爪の先に至るまで。命を象る身体のすべてを――我らは受け取る」
炉の中で、炎が鳴った。
ゲオルグは両手を胸の前で組み、目を閉じていた。
「剣あるいは鋏、門か屋根か。聖なる炎をもって作り変え、我ら罪人が責任を持って使い切ることを、ここに誓う」
宣誓を終えて目を開ける。
革張りの寝台に横たわった老人は、薄い唇を持ち上げた。
近所で畑を耕していた男だった。
名を呼ぶほど親しい間柄ではない。だが、ゲオルグは何度もその姿を見ていた。朝になると鍬を担いで家を出て、日が暮れれば土に汚れた足で帰ってくる。冬には薪を割り、春には種を蒔く。腰が曲がってからも畑へ出るのをやめなかった。
今、その身体は炉の前にある。
「頼んだぞ、鍛冶師」
老人の声はひどく掠れていた。
「できれば、鍬にしてくれ」
「……ああ」
「まだ、使えるだろう」
ゲオルグは答えなかった。
老人の腕は枯れ枝のように細い。頬は落ち、胸板も薄かった。これだけ痩せていれば、大きな道具は作れない。
それでも鍬なら足りる。
骨と血肉を余さず使えば、刃と金具までは取れるだろう。柄は木か角か、別の素材を継げばいい。
老人自身も、それを知っているようだった。
「息子がな。畑を継ぐ」
「聞いている」
「なら、あいつに使わせてやってくれ」
ゲオルグは老人を見た。
皺だらけの顔に恐怖はない。
まったくないはずはない、とゲオルグは思っている。これまで何人も炉へ送り込んできた。泣いた者もいる。失禁した者も少なくない。炉口を前にして逃げようとし、家族に押さえつけられた者さえいた。
だが、最後には皆、炉へ入った。
土の中から鉄は出ない。岩を砕いたところで、そこから刃物になるものは何ひとつ現れない。
人が生きるために必要な硬いものは、人から作るしかなかった。
生きた人間の血を。
肉を。
骨を。
炉へ入れ、焼き、溶かし、精錬する。
そうして得られるものを、血鉄と呼んでいた。
死んでからでは遅い。
命が絶えれば、身体から血鉄を取り出すことはできなくなる。死肉をいくら焼いても、残るのは脂の焦げた臭いと灰だけだ。
だから人は、自分の死期を悟ると鍛冶師を訪れる。
病人や老人、助からぬ傷を負った者がほとんどだ。
まだ息があるうちに、自らを差し出す。
そうして父親は息子の鍬になり、母親は娘の包丁になり、兵士は仲間の剣になる。
珍しいことではない。誰もがそうしてきた。
「始めるぞ」
ゲオルグが言うと、老人は小さく頷いた。
炉口を開く。
熱気が顔を殴った。
白髪が揺れ、乾いた眉の先が縮れる。何十年も浴び続けてきた熱だった。鼻の奥には煤がこびりつき、舌の根にはいつも苦味がある。
ゲオルグは老人を抱えた。
想像通りに軽かった。
畑で鍬を振るっていた頃は、もっと重かったはずだ。骨ばった背中に腕を回すと、薄い衣服越しにまだ体温があった。
生きている。
当たり前のことを、毎回思う。
炉へ入れるものは、必ず生きている。
老人の身体を炉口へ近づける。
炎の色が、老人の頬を赤く染めた。
「鍛冶師」
「なんだ」
「いい鍬にしてくれよ」
ゲオルグは老人の目を見た。
「できる限りはな」
老人は笑った。
ゲオルグは、その身体を炉へ入れた。
◇
夕刻には、工房の空気が肉の焼けた臭いで重くなっていた。
炉の底から取り出した赤い血鉄の塊を、ゲオルグは火鋏で挟んだ。
ただ熱せられて赤いのとは少し違う。
血鉄には、火から離してもしばらく血を思わせる色が残る。表面の奥で濁った赤が揺れ、ところどころに黒い筋が走っていた。
金床へ置き、槌を振り上げた。
槌で打つ。
硬い音が工房に響く。
もう一度、打つ。
赤い塊が潰れ、火花が散った。
ゲオルグは黙って打ち続けた。
肉や骨や血の区別は、もうない。
槌を振り下ろすたび、赤熱した血鉄は少しずつ形を変えた。
老人は鍬になっていく。
数日前まで土を踏んでいた脚も、息子の名を呼んだ舌も、皺だらけの手も、今はこの塊の中にある。
それでも、血鉄になった人間が完全に消えるわけではなかった。
槌を止める。
ゲオルグは革手袋を外し、十分に冷ました血鉄へ指先を置いた。
とくん。
小さな振動があった。
もう一度。
とくん。
心臓など残っていない。
それでも血鉄は、ときおり脈を打つ。
残響。
鍛冶師たちはそう呼んでいた。
血鉄となった者の体温や鼓動が、物の中に残る。
なぜ残るのか、それが本人のものなのか。それとも、魂と呼ばれるものが宿っているのか。
ゲオルグは知らない。知りたいとも思わなかった。
知れば、槌を振れなくなる気がするからだ。
鍬の刃を水へ沈める。
じゅう、と激しく蒸気が上がった。
鉄と煤の臭いに、まだわずかに残っていた焼けた脂の臭気が混じる。
蒸気が晴れるまで、ゲオルグはそこに立っていた。
やがて水から引き上げると、黒みを帯びた、頑丈な鍬刃ができていた。
明日、老人の息子が取りに来る。
『父親』を。
ゲオルグは完成した鍬刃を作業台へ置いた。
そのときだった。
奥から乾いた咳が聞こえた。
二度、三度と咳は続き、途中から息を吸い込む音に変わる。
ゲオルグは槌を置き、手を洗った。
爪の間に深く入り込んだ黒い煤を落とし、肘まで水で洗った。臭いは取れない。石鹸で擦っても、血鉄を扱った日の手からは鉄臭さが抜けない。
革の前掛けを外し、工房の奥へ向かった。
仕切り布の向こうに、小さな寝床がある。
「ヘルマ」
返事はなかった。
娘は身体を丸めていた。革の寝床からか細い腕がはみ出している。
肉が落ちたその腕は、とうに成人した女の腕には見えない。そしてその皮膚には、赤黒い斑が浮かんでいた。
ゲオルグは寝床の脇へ膝をついた。
「起きられるか」
ヘルマの瞼が動いた。
「……お父さん」
声が細い。
「仕事、終わったの」
「ああ」
「誰だった?」
「畑の爺さんだ」
「あの、いつも朝早くから働いてた?」
「そうだ」
ヘルマは少し黙った。
「何になったの?」
「鍬だ」
「そっか」
それきりだった。
何になったのか。
この世界では、死んだのかと尋ねる代わりに、そう聞くことがあった。
ゲオルグは娘の肩へ手を差し入れ、抱き起こした。
すると、ざざ、と音がした。砂を擦ったような音だ。
娘の皮膚から落ちた黒い粒が、寝床の上に散る。
ゲオルグの眉間に皺が寄った。
ヘルマは見られたくないのか、腕を引いた。
「汚れるよ」
「構わん」
「服に付く」
「洗えばいい」
「落ちないくせに」
ゲオルグは答えなかった。
ヘルマの背中へ腕を回す。
身体が硬い。
以前はもっと柔らかかった。
幼い頃には、抱き上げると両腕を首へ巻きつけてきた。今は肩の関節を少し動かすだけで痛むらしく、腕を上げることも難しい。
『錆血病』
そう呼ばれる病だった。
血が変わる。
皮膚の下に赤錆のような斑が浮き、血管が黒ずみ、やがて肉や関節まで硬くなっていく。
ヘルマの首筋にも、細い黒色の筋が走っていた。
指で触れると冷たい。
「寒いか」
「少し」
ゲオルグは毛布を引き上げた。
「スープを作った」
「いらない」
「食え」
「お腹、空いてない」
「それでも食え」
ヘルマが困ったように笑った。
ゲオルグは立ち上がり、鍋を取りに戻った。
炉の余熱で温めておいた薄いスープを木椀へ移す。湯気はほとんど立っていない。熱すぎれば、ヘルマは喉を通せなかった。
水差しも持っていく。
寝床へ戻ると、ヘルマは先ほどより身体を起こしていた。
ゲオルグは椀を渡さず、自分で匙を持った。
「口を開けろ」
「自分で食べられる」
「手が震えてる」
「……見ないでよ」
匙を口元へ運ぶと、ヘルマは諦めて口を開いた。
少しずつ食べさせるが、三口目で咳き込んだ。
ゲオルグはすぐに水差しを取り、杯へ注ぐ。
澄んだ水だった。
ヘルマの背中を支えながら、口元へ運ぶ。
娘の喉が細く動いた。
「ゆっくり飲め」
「うん」
ゲオルグはもう一度杯を傾けた。
娘が飲めるだけ飲ませ、食えるだけ食わせる。
身体が弱っているなら、身体に入れるしかない。
それ以外に、父親である自分に何ができるのか、ゲオルグにはわからなかった。
ヘルマの口元から垂れた水を指で拭う。
皮膚に触れた指先へ、冷えた感触が返ってきた。
生きている人間の温度とは思えない。
ゲオルグは無意識に娘の頬を包んだ。
「お父さんの手、熱いね」
「炉の前にいたからな」
「いいな」
「何がだ」
「温かくて」
ゲオルグは手を離さなかった。
掌の熱を移すように、娘の頬を包み続けた。
ヘルマは目を閉じた。
しばらくして、小さく息を吐いた。
「ねえ、お父さん」
「なんだ」
「私も、もうすぐかな」
ゲオルグの指が止まった。
「何の話だ」
「わかってるでしょ」
「もう寝ろ」
「お父さん」
「もう寝ろ、ヘルマ」
「私の身体、もうほとんど動かないよ」
ゲオルグは椀を持って立ち上がった。
なるべく早く、背を向けようとした。
「逃げないで」
足が止まった。
娘の声だった。
弱り切っているくせに、その言葉だけは妙にはっきりしていた。
「私、自分の身体のことくらいわかる」
ゲオルグは振り返らない。
「朝になるたび、昨日より指が動かなくなってる。足も、もうほとんど感覚がない。身体もずっと冷たいの」
「医者は――」
「もう来なくていいって、私が言った」
ゲオルグが振り向いた。
ヘルマは父親を真っすぐ見ていた。
怒っているわけでも、泣いているわけでもない。
疲れた顔だった。
「何を勝手なことを」
「だって、治せないでしょう」
ゲオルグは何も言えなかった。
「だったら、お金を使わないで」
「金の話をしてるんじゃない」
「私はしてるよ」
「ヘルマ」
「お父さん、私のために仕事を増やしてるでしょう」
ゲオルグの口が閉じた。
「わかるよ。ずっとここにいるんだから。夜まで槌の音がする日が増えた」
「余計なことを考えるな」
「余計じゃない」
ヘルマは息を整えた。
喋るだけで胸が上下している。
「私、お父さんを守りたい」
ゲオルグは娘を見た。
何を言っているのかわからなかった。
「私じゃ、もうお父さんのためにできることは何もないから」
「そんなことはない」
「できないんだよ」
ヘルマは毛布の下で腕を動かそうとした。
肘がわずかに浮き、それ以上は上がらなかった。
「薪も運べないし、料理だってもうできない。お父さんが働いて、帰ってきて、それから私の世話までしてる」
「当たり前だろう」
「でも、ずっとは無理だよ」
「もう喋るな!」
思ったより強い声が出た。
ヘルマが口を閉じる。
工房から、火の粉が爆ぜる音がした。
ゲオルグは自分の呼吸が荒くなっていることに気づいた。
「……悪かった」
ヘルマは首を横に振った。
ゲオルグは椀を置いた。
寝床の横に腰を下ろす。
そのまま長い時間、二人はともに口を開かなかった。
炉の熱はここまで届かない。
工房の奥は寒かった。
やがてヘルマが言った。
「お母さんのときも、こうだった?」
ゲオルグは顔を上げた。
「最後の頃」
「……ああ」
「お母さんも、なりたかったんだよね」
言葉が喉に引っかかり、何年も前の光景が蘇った。
死んだ身体を焼いたときの煙。
妻は肺を病んでいた。
もう助からないとわかった夜、妻はゲオルグに頼んだ。
炉へ入れてくれ、と。
血鉄にしてほしい。
あなたが使うものになりたい。
だが、ゲオルグにはできなかった。
炉へ人を入れるということだけなら、何度も繰り返しやっていた。
知らない人間ならできた。近所の住人にも。
だが、妻の身体を抱き上げて炉まで運ぶことだけは、どうしてもできなかった。
明日にしよう。
そう言った。
翌日も、同じことを言った。
妻は三日後に死んだ。
その身体からは、もう血鉄を作れず、彼女は灰になった。
白い骨も最後には崩れ、何にもならなかった。
あれでよかったのか。
今も答えは出ていない。
「お母さん、怒ってた?」
ヘルマが尋ねた。
「いや」
「悲しんでた?」
「……わからん」
最後に妻がどんな顔をしていたのか。
思い出そうとするたび、なぜか輪郭がぼやける。
ただ、手の温度だけは覚えていた。
熱のある妻の手を、一晩中握っていた。
死ぬ少し前、その熱が急に消えた。
人間はこんなに早く冷たくなるのかと、あのとき初めて知った。
「私はね」
ヘルマが言った。
「灰にはなりたくないの」
ゲオルグは娘を見る。
「お父さんのそばに残りたい」
「やめろ」
「剣にして」
ゲオルグは一瞬固まった。
「私を剣にして、お父さん」
「やめろと言った」
「まだ間に合ううちに」
「黙れ」
「錆血病の身体は、丈夫な血鉄になるんでしょう」
「誰から聞いた」
「知ってるよ、それくらい」
ゲオルグは立ち上がり、今度こそ背を向けた。
「寝ろ」
「お父さん」
「その話は終わりだ」
「終わってない」
「終わりだ」
「じゃあ、いつ話すの?」
ゲオルグは答えなかった。
「私が死んでから?」
その言葉が背中に刺さった。
「そのときには、もう遅いよ」
そんなことは誰よりもわかっていた。
命が消えれば血鉄にはならず、ヘルマの身体は灰になる。
妻と同じように、何も残らない。
「私が灰になる前に、お父さんを守る剣にしてほしい」
ゲオルグは作業台へ手をついた。
指先に力が入る。
爪の間に残っていた煤が、木の表面へ黒く付着した。
「私、お父さんの役に立ちたい」
「生きていろ」
「生きたいよ」
ヘルマの声が震えた。
初めてだった。
ゲオルグは振り返った。
ヘルマは泣いていなかった。
ただ唇を噛んでいた。
「私だって、生きたい」
その声を聞いて、ゲオルグは何も言えなくなった。
「死にたいわけじゃないよ」
ヘルマは息を吸った。
胸の奥で何かが引っかかり、苦しそうに咳をする。
口元を押さえた指の間から、黒ずんだ血が滲んだ。
「でも、死ぬんでしょう」
ゲオルグは動けなかった。
「だったら選びたい」
ヘルマは血の付いた手を毛布へ隠した。
「最後くらい、自分で」
炉の火が小さく鳴っていた。
ゲオルグは娘を見ていた。
妻の顔が重なる。
あの夜、妻は選ぼうとした。
ゲオルグが選ばせなかった。
愛していたからだ。
だが、愛していたことと、正しかったことが同じなのかは、何年経ってもわからなかった。
ゲオルグは寝床へ戻り、娘の前に膝をついた。
ヘルマの手を取る。やはり、冷たい。
指先は硬く、爪の周囲には赤錆色の斑が広がっている。
それでも、掌の奥にはかすかな脈があった。
とくん。
間を置いて。
とくん、と。
弱い。だが、生きている。
ゲオルグはその手を握った。
「…………」
浮かんだ言葉が喉から先に出てこない。
悟られないように深く息を吸い、ゲオルグは重い口を開いた。
「……剣でいいんだな」
ヘルマの瞳が揺れた。
「うん」
「後から嫌だと言っても止められん」
「うん」
「炉へ入れば、俺にも止められない」
「わかってる」
ゲオルグは目を閉じた。
「……そうか」
それだけだった。
◇
炉へ新しい炭を入れた。
ふいごを踏む。
眠りかけていた炎が息を吹き返した。
赤から橙へ。
橙から白へ。
熱が工房を満たしていく。
ゲオルグは黙って準備をした。
火鋏や、槌。型や水桶。
どれも何百回と使ったものだった。
何百人もの身体を血鉄へ変えてきた道具だが、今夜だけは、すべてが初めて見るもののように思えた。
背後で音がした。
ゲオルグは振り返る。
ヘルマが仕切り布を掴んで立っていた。
立っている、と呼べるのかもわからない。
片脚を引きずり、壁へ肩を預けている。寝床から炉まで、ほんのわずかな距離しかない。それだけの道のりで息を切らし、額には汗が浮かんでいた。
「呼べば運んだ」
「自分で行きたかった」
「馬鹿が」
ゲオルグは娘のところへ行った。
腕を差し出す。
ヘルマはそれにつかまった。
ざざ、という音がし、また皮膚から黒い粒が落ちた。
二人で炉へ向かう。
一歩ずつ。
炉が近づくにつれ、ヘルマの頬へ赤みが戻っていった。
ゲオルグには、久しぶりに娘の顔へ血が通ったように見えた。
炉の前で止まると、熱風が二人を包んだ。
ヘルマが目を細める。
「温かい」
ゲオルグは返事をしなかった。
娘の手を握る。
冷たい手だった。
その奥で、まだ脈が打っている。
ゲオルグは炉口を開いた。
炎が唸る。
ヘルマの身体が小さく震えた。
ゲオルグは気づいていたが、何も言わなかった。
ゲオルグはヘルマの前に立ち、何度も唱えてきた言葉を紡いだ。
一度として間違えたことはない。
それなのに、最初の一言が出なかった。
ヘルマが父を見る。
「お父さん」
ゲオルグは唇を噛んだ。
鉄の味がした。
「言って」
炉は燃えているのに、娘の手は冷たい。
それでも、握った指の奥から確かに鼓動が伝わってくる。
ゲオルグは息を吸った。
「汝の血、肉、骨、爪の先に至るまで」
声が掠れた。
「命を象る身体のすべてを――我らは受け取る」
ヘルマは目を閉じた。
ゲオルグはその手を離さなかった。
「剣あるいは鋏、門か屋根か。聖なる炎をもって作り変え……」
そこで一度、言葉が止まった。
炎が二人の顔を赤く照らしている。
「我ら罪人が、責任を持って使い切ることを」
ヘルマの指が、父親の手を握り返した。
弱い力だった。
「ここに誓う」
宣誓を終え、ゲオルグは細い体をそっと抱き上げた。まだかすかな鼓動を感じる。
ゲオルグは娘を見た。
ヘルマも目を開けた。
炉の中で、白い炎が揺れていた。




