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落とされ人  作者: カーブミラー


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52/214

【052.追いかけっこ】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 ヒナたちの羽毛が羽に生え変わりはじめた。

 親と同じ色だ。

 だが、羽毛がまだまだあるので、みすぼらしい姿でしかない。

 それでも巣から出て、室内をレフティーについて歩きまわるようになっていた。

 エサも容器からついばんで食べている。

 そうしたようすもフェイスで撮影して、ネットにあげる。

 国民の反応は、直には見ないことにしている。

 そんなのを見ていたら仕事どころではなくなるだろうから。

 レフティーがときどき、玄関ドアの前に立ち、オレの方を見る。

 それは、“外に出たい”という合図だ。

 オレは、そうした訴えを拒むことはしない。

 玄関ドアを開けると、ヒナたちを連れだって、庭園に出る。

 その姿も撮影する。

 初めて外を見たときのヒナたちは、長い首をくねらせながらあちこちを見ていた。

 母親のあとをついていくのだが、余所見をしているので、母親にぶつかったり、違う方へと向かってしまう。

 庭園での散歩を何度も繰り返しているうちに、ヒナたちは追いかけっこをするようになった。

 駆け足に慣れてくるとそのスピードが上がり、やがて、身体を安定させようと翼を広げはじめた。

 身体が軽くなるのを感じたのだろう、両足を持ち上げた。

 身体が浮くのがわかって、すぐさま足を地につけた。

 惰性がついているので、よろめいて倒れる。

 追いかけていたもうひとりが止まりきれずに、そこに突っ込んだ。

 それでふたりがケンカをはじめた。

 ケンカといっても子どものケンカ、遊びの一種だ。

 オレもレフティーも手出しはしない。

 ケンカもすぐに終わって、いつのまにか、また追いかけっこをはじめていた。

 今度は、おたがいに滑空を取り入れている。

 滑空して、そのコントロールを我流で学んでいく。

 次第に滞空時間が伸びていく。

 だが、羽ばたくのは、滑空のスピードを殺して、着地するときだけ。

 まだ羽ばたいて、空に舞い上がれるだけの筋力がないのだ。


 庭園での遊びが、ほぼ日課になりはじめた。

 ヒナの身体も大きくなって、引き出しの上の巣がせまくなった。

 レフティーが追い出され、彼女はオレのベッドの上で眠るようになった。

 その重みが、寝息が、久しく感じていなかったさみしさを呼び起こす。

 ベッドのとなりにいた存在が、思い出とともにオレを苦しめた。

 だが、新たな存在がオレの空しさを埋めてもくれた。

 最初の夜は眠れなかったが、次の夜からはいつもと変わらずに眠ることができた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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