【052.追いかけっこ】
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ヒナたちの羽毛が羽に生え変わりはじめた。
親と同じ色だ。
だが、羽毛がまだまだあるので、みすぼらしい姿でしかない。
それでも巣から出て、室内をレフティーについて歩きまわるようになっていた。
エサも容器からついばんで食べている。
そうしたようすもフェイスで撮影して、ネットにあげる。
国民の反応は、直には見ないことにしている。
そんなのを見ていたら仕事どころではなくなるだろうから。
レフティーがときどき、玄関ドアの前に立ち、オレの方を見る。
それは、“外に出たい”という合図だ。
オレは、そうした訴えを拒むことはしない。
玄関ドアを開けると、ヒナたちを連れだって、庭園に出る。
その姿も撮影する。
初めて外を見たときのヒナたちは、長い首をくねらせながらあちこちを見ていた。
母親のあとをついていくのだが、余所見をしているので、母親にぶつかったり、違う方へと向かってしまう。
庭園での散歩を何度も繰り返しているうちに、ヒナたちは追いかけっこをするようになった。
駆け足に慣れてくるとそのスピードが上がり、やがて、身体を安定させようと翼を広げはじめた。
身体が軽くなるのを感じたのだろう、両足を持ち上げた。
身体が浮くのがわかって、すぐさま足を地につけた。
惰性がついているので、よろめいて倒れる。
追いかけていたもうひとりが止まりきれずに、そこに突っ込んだ。
それでふたりがケンカをはじめた。
ケンカといっても子どものケンカ、遊びの一種だ。
オレもレフティーも手出しはしない。
ケンカもすぐに終わって、いつのまにか、また追いかけっこをはじめていた。
今度は、おたがいに滑空を取り入れている。
滑空して、そのコントロールを我流で学んでいく。
次第に滞空時間が伸びていく。
だが、羽ばたくのは、滑空のスピードを殺して、着地するときだけ。
まだ羽ばたいて、空に舞い上がれるだけの筋力がないのだ。
庭園での遊びが、ほぼ日課になりはじめた。
ヒナの身体も大きくなって、引き出しの上の巣がせまくなった。
レフティーが追い出され、彼女はオレのベッドの上で眠るようになった。
その重みが、寝息が、久しく感じていなかったさみしさを呼び起こす。
ベッドのとなりにいた存在が、思い出とともにオレを苦しめた。
だが、新たな存在がオレの空しさを埋めてもくれた。
最初の夜は眠れなかったが、次の夜からはいつもと変わらずに眠ることができた。
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