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落とされ人  作者: カーブミラー


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52/68

【052.追いかけっこ】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 ヒナたちの羽毛が羽に生え変わりはじめた。

 親と同じ色だ。

 だが、羽毛がまだまだあるので、みすぼらしい姿でしかない。

 それでも巣から出て、室内をレフティーについて歩きまわるようになっていた。

 エサも容器からついばんで食べている。

 そうしたようすもフェイスで撮影して、ネットにあげる。

 国民の反応は、直には見ないことにしている。

 そんなのを見ていたら仕事どころではなくなるだろうから。

 レフティーがときどき、玄関ドアの前に立ち、オレの方を見る。

 それは、“外に出たい”という合図だ。

 オレは、そうした訴えを拒むことはしない。

 玄関ドアを開けると、ヒナたちを連れだって、庭園に出る。

 その姿も撮影する。

 初めて外を見たときのヒナたちは、長い首をくねらせながらあちこちを見ていた。

 母親のあとをついていくのだが、余所見をしているので、母親にぶつかったり、違う方へと向かってしまう。

 庭園での散歩を何度も繰り返しているうちに、ヒナたちは追いかけっこをするようになった。

 駆け足に慣れてくるとそのスピードが上がり、やがて、身体を安定させようと翼を広げはじめた。

 身体が軽くなるのを感じたのだろう、両足を持ち上げた。

 身体が浮くのがわかって、すぐさま足を地につけた。

 惰性がついているので、よろめいて倒れる。

 追いかけていたもうひとりが止まりきれずに、そこに突っ込んだ。

 それでふたりがケンカをはじめた。

 ケンカといっても子どものケンカ、遊びの一種だ。

 オレもレフティーも手出しはしない。

 ケンカもすぐに終わって、いつのまにか、また追いかけっこをはじめていた。

 今度は、おたがいに滑空を取り入れている。

 滑空して、そのコントロールを我流で学んでいく。

 次第に滞空時間が伸びていく。

 だが、羽ばたくのは、滑空のスピードを殺して、着地するときだけ。

 まだ羽ばたいて、空に舞い上がれるだけの筋力がないのだ。


 庭園での遊びが、ほぼ日課になりはじめた。

 ヒナの身体も大きくなって、引き出しの上の巣がせまくなった。

 レフティーが追い出され、彼女はオレのベッドの上で眠るようになった。

 その重みが、寝息が、久しく感じていなかったさみしさを呼び起こす。

 ベッドのとなりにいた存在が、思い出とともにオレを苦しめた。

 だが、新たな存在がオレの空しさを埋めてもくれた。

 最初の夜は眠れなかったが、次の夜からはいつもと変わらずに眠ることができた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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