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落とされ人  作者: カーブミラー


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42/55

【042.出迎え】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 港に船が到着した。

 大型の帆船だ。

 今は、帆を降ろしている。

「自動制御で、操船スタッフは少ないんだそうです」とテオ。

 一緒に来ていた。

 マリーンもだ。

 タグボートが船を港に接岸させようと動いている。


 室長の要請で来たのだが、重要な役目ではないから気晴らしに、と言われていた。

 ほかに一緒にいるのは、アネット・マネリー。

 オレを文化院に連れてきた女性だ。

 港に来る道中、話を聞いた。

「新たに見つかったポイントからの人たちが、船でやってきます」

「ああ、バルーンのデータからの。それで?」

「今日は、その人たちを出迎えに。パオロさんにどうしろという話ではありません。ですが、経験者ということで、彼らと話をしてみてもらいたいのです」

「それは別にかまいませんが。私も仕事にかまけて、王国のことをそんなに知っているわけでは」

 彼女は、クスッと笑った。

「わかってます。知っていることだけでいいんです。感じたことだけでも、彼らには充分な情報でしょうから」

「なるほど」

 テオとマリーンを一緒に連れてきたのは、室長の考えだったが、アネットの話を聞いて、納得した。

 テオはオレより先に落とされたわけだし、マリーンは落とされたばかりだ。

 三者の話が聞ければ、それなりの想像ができるだろう。


 帆船から降りてくる人間は、すでに定番の服を着ていた。

 手荷物は少ない。

 老若男女、取り混ぜて、計52名。

 結構な人数だ。

「すでにテストは、受けているのでしょう?」とアネットに訊く。

「ええ。それぞれの特性がありますので、仕事は別々になると思います」

「仕方ないですね。城に住むのは?」

「3人。ほかは、郊外の住宅に住むことになります」

「なるほど」


 52名は、港の職員が使う食堂の一角に集められた。

 ひとりの男が、司会を務める。

「みなさん、長旅、お疲れ様でした。船での生活も不快ではなかったと思いますが、陸での生活の方が、快適だと思います。そうであって欲しいと我々も願っています。話は食事のあとにしましょう」

 昼食には早いが、オレたちも一緒に席について食事をする。

 みなで食事に手をつける。

 みな、喜んで口にする。

 これから先の不安もあるようだが、今は、それを表には出してはいない。

 食事を終えると、アネットが紹介され、今後は彼女が52名の担当をする、と伝えられた。

「みなさんのよりよい生活を支援していきたいと思っています。よろしくお願いします」

 それからアネットがオレたちを紹介した。

「この3人は、あなたがたより先に落とされ、この王国で生活しているかたたちです。みなさんの参考になれば、とお連れしました」

 挨拶をうながされる。

 3人を代表して、オレが立ち上がった。

「初めまして。パオロ・モーガンと申します。よろしく。こちらがテオ、こちらがマリーンです。ふたりとも私のもとで働いております」

 ひとりの若い男性が手を挙げた。「お仕事は何を?」

「私たちの仕事は、知識を文書化することです」

 自分の、とは言わないことにした。

 余計なことは言わない方がいい。

「文書化?」

「ええ。この惑星では、“知識は宝”ですからね。知識をほかの人のために役立てられるようにするのが、私たちの仕事です」

「ここでは、ステーションからの支援があるんですか?」

「私が知る限り、ありません。落とされるのは、人間だけです」

「最初から準備されていたんですか? こうした、えっと……建物や乗り物が」

「いいえ。私が聞いた話ですと、もともとこの惑星は、資源採掘が目的で開発されたそうです。ですが、途中で開発が中止されました。理由は定かではありません。そして、残された人々、それに落とされた人々が集まって、ここまでの国を作り上げたのだそうです」

「残された?」

「どうやら彼らも囚人だったようですね。強制労働のために連れてこられたのでしょう」

「その人たちは、今も?」

「いえ、さすがに。もう200年以上も昔の話ですから」

「生きてないか」

「ええ」

 30代と思われる女性が手を挙げた。「ここでの生活は、どうなんでしょうか?」

「率直に言って、快適ですね。ふつうの大都市での生活よりも、快適だと思います。ただ、よく言われるのは、エンターテイメント産業が手薄でして、娯楽が少ないという点です。もちろん、改善はされてきているようですがね」

「衣食住については?」

「服飾も食料も住居も悪くないと思いますよ。ただ、私たちは城の中で生活しています。ですからその点では参考にはならないでしょう」

「どうして、城に住んでいるんですか?」

「仕事場が城の中なのです。もちろん、一般住居に住むことも可能ですが。仕事人間でしてね。通勤に時間をかけたくないのですよ」と軽く笑って見せた。

 別の女性が手を挙げた。50代だ。「食材についてなのですが」

「どうぞ」

「小麦や米はあるんですか? 見ているとそれっぽいのがあるのですが」

「この惑星の固有種です。小麦や米は、ありません。料理人たちが、いろいろと探し出して、ふつうの見た目にしているんですよ」

「魚はいろいろといるようですが、肉はどうなっていますか? 牛乳は? 卵は?」

「動物はいくつかいます。牛乳も卵も代わりのものがあります。調味料やスパイスもあります。私も調理をしますので市場で購入したりしています」

「市場があるのですか。スーパーマーケット?」

「いえいえ。もっと大きなものです。各地から売りに来ているんです。結構な賑わいですよ」

 女性はうれしそうに笑みを浮かべた。

「それから調理が苦手なかたでもパック食品もありますし、御食事処はあちこちにありますからご安心を」

 何人かが胸をなでおろした。

 その後も質問が続き、オレだけでなく、テオやマリーンもそれに答えた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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