【042.出迎え】
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港に船が到着した。
大型の帆船だ。
今は、帆を降ろしている。
「自動制御で、操船スタッフは少ないんだそうです」とテオ。
一緒に来ていた。
マリーンもだ。
タグボートが船を港に接岸させようと動いている。
室長の要請で来たのだが、重要な役目ではないから気晴らしに、と言われていた。
ほかに一緒にいるのは、アネット・マネリー。
オレを文化院に連れてきた女性だ。
港に来る道中、話を聞いた。
「新たに見つかったポイントからの人たちが、船でやってきます」
「ああ、バルーンのデータからの。それで?」
「今日は、その人たちを出迎えに。パオロさんにどうしろという話ではありません。ですが、経験者ということで、彼らと話をしてみてもらいたいのです」
「それは別にかまいませんが。私も仕事にかまけて、王国のことをそんなに知っているわけでは」
彼女は、クスッと笑った。
「わかってます。知っていることだけでいいんです。感じたことだけでも、彼らには充分な情報でしょうから」
「なるほど」
テオとマリーンを一緒に連れてきたのは、室長の考えだったが、アネットの話を聞いて、納得した。
テオはオレより先に落とされたわけだし、マリーンは落とされたばかりだ。
三者の話が聞ければ、それなりの想像ができるだろう。
帆船から降りてくる人間は、すでに定番の服を着ていた。
手荷物は少ない。
老若男女、取り混ぜて、計52名。
結構な人数だ。
「すでにテストは、受けているのでしょう?」とアネットに訊く。
「ええ。それぞれの特性がありますので、仕事は別々になると思います」
「仕方ないですね。城に住むのは?」
「3人。ほかは、郊外の住宅に住むことになります」
「なるほど」
52名は、港の職員が使う食堂の一角に集められた。
ひとりの男が、司会を務める。
「みなさん、長旅、お疲れ様でした。船での生活も不快ではなかったと思いますが、陸での生活の方が、快適だと思います。そうであって欲しいと我々も願っています。話は食事のあとにしましょう」
昼食には早いが、オレたちも一緒に席について食事をする。
みなで食事に手をつける。
みな、喜んで口にする。
これから先の不安もあるようだが、今は、それを表には出してはいない。
食事を終えると、アネットが紹介され、今後は彼女が52名の担当をする、と伝えられた。
「みなさんのよりよい生活を支援していきたいと思っています。よろしくお願いします」
それからアネットがオレたちを紹介した。
「この3人は、あなたがたより先に落とされ、この王国で生活しているかたたちです。みなさんの参考になれば、とお連れしました」
挨拶をうながされる。
3人を代表して、オレが立ち上がった。
「初めまして。パオロ・モーガンと申します。よろしく。こちらがテオ、こちらがマリーンです。ふたりとも私のもとで働いております」
ひとりの若い男性が手を挙げた。「お仕事は何を?」
「私たちの仕事は、知識を文書化することです」
自分の、とは言わないことにした。
余計なことは言わない方がいい。
「文書化?」
「ええ。この惑星では、“知識は宝”ですからね。知識をほかの人のために役立てられるようにするのが、私たちの仕事です」
「ここでは、ステーションからの支援があるんですか?」
「私が知る限り、ありません。落とされるのは、人間だけです」
「最初から準備されていたんですか? こうした、えっと……建物や乗り物が」
「いいえ。私が聞いた話ですと、もともとこの惑星は、資源採掘が目的で開発されたそうです。ですが、途中で開発が中止されました。理由は定かではありません。そして、残された人々、それに落とされた人々が集まって、ここまでの国を作り上げたのだそうです」
「残された?」
「どうやら彼らも囚人だったようですね。強制労働のために連れてこられたのでしょう」
「その人たちは、今も?」
「いえ、さすがに。もう200年以上も昔の話ですから」
「生きてないか」
「ええ」
30代と思われる女性が手を挙げた。「ここでの生活は、どうなんでしょうか?」
「率直に言って、快適ですね。ふつうの大都市での生活よりも、快適だと思います。ただ、よく言われるのは、エンターテイメント産業が手薄でして、娯楽が少ないという点です。もちろん、改善はされてきているようですがね」
「衣食住については?」
「服飾も食料も住居も悪くないと思いますよ。ただ、私たちは城の中で生活しています。ですからその点では参考にはならないでしょう」
「どうして、城に住んでいるんですか?」
「仕事場が城の中なのです。もちろん、一般住居に住むことも可能ですが。仕事人間でしてね。通勤に時間をかけたくないのですよ」と軽く笑って見せた。
別の女性が手を挙げた。50代だ。「食材についてなのですが」
「どうぞ」
「小麦や米はあるんですか? 見ているとそれっぽいのがあるのですが」
「この惑星の固有種です。小麦や米は、ありません。料理人たちが、いろいろと探し出して、ふつうの見た目にしているんですよ」
「魚はいろいろといるようですが、肉はどうなっていますか? 牛乳は? 卵は?」
「動物はいくつかいます。牛乳も卵も代わりのものがあります。調味料やスパイスもあります。私も調理をしますので市場で購入したりしています」
「市場があるのですか。スーパーマーケット?」
「いえいえ。もっと大きなものです。各地から売りに来ているんです。結構な賑わいですよ」
女性はうれしそうに笑みを浮かべた。
「それから調理が苦手なかたでもパック食品もありますし、御食事処はあちこちにありますからご安心を」
何人かが胸をなでおろした。
その後も質問が続き、オレだけでなく、テオやマリーンもそれに答えた。
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