【021.城内】
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城内は、さらに気温が下がった。
といっても最初に気がついただけで、気になるほどではない。
それに薄暗いと思ったのは、入る前までで、入ってみるとあちこちに明り取りの窓があるので、その暗さにもすぐに慣れた。
アネットは、城の観光ガイドを務めてくれる。
城のまわりにあった塔は、見張り台であり、また信号塔でもあった。
信号塔――今では、通信機が開発されて使われているが、通信機がなかった時代には信号塔で鏡を使ったり火を使ったりして、遠くとの連絡をしていた。
もちろん、信号のやり取りには、相手が必要だ。
そこにも信号塔が建てられ、現在でも見張り台として、使われていた。
通信の内容は、主に日々のニュースだったが、場合によっては災害の発生や隣国からの侵略などで援助を求められたりもする。
「侵略行為は、いまだに?」
「現在は、小康状態を保っています。飛行船による監視も続けていますので、そちらからの連絡の方が早いですね。国境を越えて、侵入された場合、即座に対応していますし」
「どのように?」
「その場に応じて。徒歩での侵入であれば、歩兵が相手をします。主に警告ですね。車両などの場合は、飛行船や飛行機からの攻撃になります」
「飛行機などで侵入してきたら?」
「飛行船も飛行機もほかの国は、持っていません。あったとしても能力的には雲泥の差でしょう。気球を使っている国はありますが、戦闘に使っているところはありません」
「なるほど」
ときどき、人とすれ違う。
警備兵だったり、城で働く人間だったりだ。
子どもの姿は、まだ見ていない。
「いまごろなら子どもたちは、食堂ですね」
「大人たちに交じって?」
「いえ。子どもたちは、女王とともに専用の食堂で食事をします。教育者以外の大人たちと交じることはありません。養育期間を過ぎた子どもだけが、大人との接触を持ちます」
「それはどうして?」
「養育期間は子どもの成長を第一に考えられています。大人との接触は限定して、無用なストレスを与えないようにしているのです」
「でも必要なストレスもあるでしょう?」
「それは考慮されていると思います。詳しいことは」
「わかりました」
左手に見えてきたドアを彼女が開けた。
明るさは、ほとんど変わらない。
だが、そこには、男性が待っていた。
ドアが開くと同時に、座っていたイスから立ち上がった。
ライトブラウンの髪は首までで、耳までの前髪を金属クリップをいくつも使って、垂れないようにしている。
服装は、白いワイシャツと濃紺のスラックス。
襟章や肩章をつけていないところを見ると、軍人ではなさそうだ。
その代わり、首にまわしたひらたいヒモの先に、ペンがぶら下げられていた。
どこかオドオドしている。
「オルタァ、どうかしたの?」とアネットが彼に話しかけた。「この時間は、彼女のそばだと思ったんだけど」
オルタァと呼ばれた男がうなずいた。
「その彼女からの要請です、アネット」
そう言って、彼は、オレを見た。
「まさか、彼を?」とアネットもオレを見た。
「はい。昼食をご一緒したいと」
「まだ食べていらっしゃらないの?」
「ええ。お待ちになられています。とにかく、ご一緒できるか、わたしが確認に」
「そう、わかったわ」彼女がオレに向きなおった。「パオロさん」
「別にかまいませんが……相手は、どなたなので?」
「我が国の女王、ノーラです」
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