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落とされ人  作者: カーブミラー


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15/16

【015.テスト】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

「王国に行くと、どういう手順で生活することになるんでしょう?」

 コーヒーの御代わりを受け取る際に、そう質問した。

「まずは、ここで簡単なテストを受けてもらうわ。ペーパーテストね。それは落ち着いてからでいいわ」

「テストか」

「難しく考えないで。簡単な質問に答えるアンケートだと思えばいいわ。そのあとで、基地に連絡して搬送機を飛ばしてもらうことになるわ」

「それで? 王国に着いたら?」

 コーヒーをすする。

「まずは、簡単な検査を受けてもらいます。そのあと、基地内の宿舎で休んでもらいます。お風呂に入って、新しい服を着て、ベッドに横になって、眠る。その日はそれでお終い。翌日からは王国についての詳しい説明を受けたり、今後のことを相談したりね。仕事のことや住む部屋のこととか」

「なるほど。仕事は、どんなものがあるんです?」

 彼女は、肩をすくめた。「なんでもあるわ。力仕事から頭脳労働までね。軍に入隊することもできるし」

「あなたは、なぜ軍に?」

「軍人だから。ほかに考えられなかったのよ」

「軍人が何をしたら終身刑になるんです?」

「そのあたりは、訊かないで欲しいな。“過去は過去”。ここで生きるのに必要なのは、理由じゃないの。知識や経験、身体や頭ね」

「なるほど。ほかの人にも訊かない方がよさそうだ」

「その方がいいと思うわ」オレがコーヒーを飲み干すのを待って、彼女は「それで王国に行く意思はあると思ってもいいのかしら?」と訊いてきた。

「ええ、まぁ」

「なら」

 彼女は、飛行機のコックピットから、1枚のクリップボードを取り出した。

 それを渡してくる。

 ペンもついている。

 オレは、代わりにコーヒーを入れていたフタを返した。

「さっき言ったテストよ。そこに座って、受けて」と着陸船から出ていたバックパックの入っていた部分を指す。「時間制限はないわ。でもそれなりの時間がかかる。気楽にね」

 クリップボードに紙片はなかった。

 電子ペーパーらしい。

「見たことのないクリップボードですね」

「そう? そうかもね。何せ、惑星外から入ってくるのは、人間だけだから」

「ああ、そうでした」

 オレは、腰掛けて、クリップボードのペンを手に取り、質問に答えていった。

 いくつかのアンケートに答えると、さまざまな質問が出てきた。

 それらは一貫性がなく、言語学、数学、地学、科学、化学、生物学……と続く。

 しかもそれがなんの学問なのかも示さずにだ。

 さまざまな仕事についての質問も出てくる。

 時間制限があったら全部には答えられないだろう。

 いや、どんなに時間があっても答えられない問題も少なからずあった。

 とにかく、答えていく。

 気付いたときには、空が赤く染まっていた。

「お疲れ様。もうじき搬送機が到着するわ」

「いつのまに連絡を?」

「あなたが集中してるあいだにね」

 クリップボードを彼女に渡す。

「回答率、高いわね」と笑みをこぼす彼女。

「でも間違いも多いと思いますよ」

「結構よ。荷物の整理をお願いできるかしら? 搬送機が到着し次第、乗り込んでもらうから」

「あなたは?」

「この子で」と飛行機の肌を叩く。「先に基地に帰るわ」

「一緒ではないんですか?」

「ええ。搬送機は亀だから」

 それだけスピードは出ないということか。

 オレは、ひと言断って、その場を辞した。


 基地に到着するには、夜空に星が瞬きだして、それなりの時間が必要だった。

 到着と同時に医務室に連れて行かれ、さまざまな検査を受け、それからひとつの部屋に入れられた。

 担当の兵士が、「今日はこちらでお休みください」と出ていくと、ドアを閉じた。

 部屋を見回した。

 窓はない。

 シングルよりもせまい簡易ベッドと、小さなシンク。

 バスルームもあったが、バスタブはまるで古代の人を埋葬するツボのようだ。

 まぁ、クリスさんの言葉どおりではあった。

 ベッドの上には、ビニールに包まれた服が、靴と一緒に置かれていたし。

 とにかく、バスタブをお湯で満たし、身体を清潔にする。

 タオルで水気をふき取り、服と靴は床に置いて、ベッドに横になった。

 ほとんどそのまま睡魔に負けた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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