【015.テスト】
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「王国に行くと、どういう手順で生活することになるんでしょう?」
コーヒーの御代わりを受け取る際に、そう質問した。
「まずは、ここで簡単なテストを受けてもらうわ。ペーパーテストね。それは落ち着いてからでいいわ」
「テストか」
「難しく考えないで。簡単な質問に答えるアンケートだと思えばいいわ。そのあとで、基地に連絡して搬送機を飛ばしてもらうことになるわ」
「それで? 王国に着いたら?」
コーヒーをすする。
「まずは、簡単な検査を受けてもらいます。そのあと、基地内の宿舎で休んでもらいます。お風呂に入って、新しい服を着て、ベッドに横になって、眠る。その日はそれでお終い。翌日からは王国についての詳しい説明を受けたり、今後のことを相談したりね。仕事のことや住む部屋のこととか」
「なるほど。仕事は、どんなものがあるんです?」
彼女は、肩をすくめた。「なんでもあるわ。力仕事から頭脳労働までね。軍に入隊することもできるし」
「あなたは、なぜ軍に?」
「軍人だから。ほかに考えられなかったのよ」
「軍人が何をしたら終身刑になるんです?」
「そのあたりは、訊かないで欲しいな。“過去は過去”。ここで生きるのに必要なのは、理由じゃないの。知識や経験、身体や頭ね」
「なるほど。ほかの人にも訊かない方がよさそうだ」
「その方がいいと思うわ」オレがコーヒーを飲み干すのを待って、彼女は「それで王国に行く意思はあると思ってもいいのかしら?」と訊いてきた。
「ええ、まぁ」
「なら」
彼女は、飛行機のコックピットから、1枚のクリップボードを取り出した。
それを渡してくる。
ペンもついている。
オレは、代わりにコーヒーを入れていたフタを返した。
「さっき言ったテストよ。そこに座って、受けて」と着陸船から出ていたバックパックの入っていた部分を指す。「時間制限はないわ。でもそれなりの時間がかかる。気楽にね」
クリップボードに紙片はなかった。
電子ペーパーらしい。
「見たことのないクリップボードですね」
「そう? そうかもね。何せ、惑星外から入ってくるのは、人間だけだから」
「ああ、そうでした」
オレは、腰掛けて、クリップボードのペンを手に取り、質問に答えていった。
いくつかのアンケートに答えると、さまざまな質問が出てきた。
それらは一貫性がなく、言語学、数学、地学、科学、化学、生物学……と続く。
しかもそれがなんの学問なのかも示さずにだ。
さまざまな仕事についての質問も出てくる。
時間制限があったら全部には答えられないだろう。
いや、どんなに時間があっても答えられない問題も少なからずあった。
とにかく、答えていく。
気付いたときには、空が赤く染まっていた。
「お疲れ様。もうじき搬送機が到着するわ」
「いつのまに連絡を?」
「あなたが集中してるあいだにね」
クリップボードを彼女に渡す。
「回答率、高いわね」と笑みをこぼす彼女。
「でも間違いも多いと思いますよ」
「結構よ。荷物の整理をお願いできるかしら? 搬送機が到着し次第、乗り込んでもらうから」
「あなたは?」
「この子で」と飛行機の肌を叩く。「先に基地に帰るわ」
「一緒ではないんですか?」
「ええ。搬送機は亀だから」
それだけスピードは出ないということか。
オレは、ひと言断って、その場を辞した。
基地に到着するには、夜空に星が瞬きだして、それなりの時間が必要だった。
到着と同時に医務室に連れて行かれ、さまざまな検査を受け、それからひとつの部屋に入れられた。
担当の兵士が、「今日はこちらでお休みください」と出ていくと、ドアを閉じた。
部屋を見回した。
窓はない。
シングルよりもせまい簡易ベッドと、小さなシンク。
バスルームもあったが、バスタブはまるで古代の人を埋葬するツボのようだ。
まぁ、クリスさんの言葉どおりではあった。
ベッドの上には、ビニールに包まれた服が、靴と一緒に置かれていたし。
とにかく、バスタブをお湯で満たし、身体を清潔にする。
タオルで水気をふき取り、服と靴は床に置いて、ベッドに横になった。
ほとんどそのまま睡魔に負けた。
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