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落とされ人  作者: カーブミラー


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14/18

【014.軍人】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 ある日。

 海での収穫を終え、ベースに戻ろうと坂道を登っていると、一瞬、何かの影がオレの影をさえぎった。

 その影は、オレの影を置き去りにして、通り過ぎていく。

 思わず、上空を見上げた。

 そして、見つけた。

 大きな鳥だ。

 いや、違った。

 小型の飛行機だ。

 エンジンもついているが静かなので、グライダーのように滑空しているのだとわかる。

 オレは、収穫した魚介の入ったバックパックをその場に置いて、その飛行機を追いかけた。

 飛行機は、どうやら着陸場に向かっているらしい。

 大きくはないが、人間が乗れるくらいの大きさはある。

 その証拠にキャノピーがある。

 キャノピーは透明なのだろうが、陽射しがあたって輝いているので、内部が見れない。

 その飛行機は、樹木の陰に隠れてしまった。

 とにかく、着陸場を目指して、走った。

 生えている草木に足を取られ、スピードが上がらない。

 こうした草木を刈っておくべきだったか。

 後悔してもはじまらない。

 ようやく着陸場が見えてきた。

 飛行機から人間が降りてきたところだった。

 よくあれだけのスペースに着陸できたものだ、と感心していた。

 だが、よくよく見れば、飛行機は地面に対して、垂直に立っている。

 エンジン噴出孔が、地面に向かっているのだ。

 とすれば、滑走路は必要がない、ということになる。

 降りてきた人間に「おおい」と声をかけた。

 こちらに顔を向ける人間。

 小さく見えたが、そのシルエットから女性だとわかった。

 黒髪をベリーショートにしている。

 肌は、ライトブラウン系。

 服装は、濃紺の簡易宇宙服に見えた。

 ヘルメットはしていない。

 その女性は、こちらを見つけると、身体をこちらに向けた。

 それから腕組みして、仁王立ちになった。

 顔からすると30代半ば。

 その表情は、どこか怒っているようにも見える。

 そんなつもりはないのだろうが。

 着陸場内に入った。

 ゆっくりと近づきながら、左手を挙げた。

「やぁ」と声を出して、手を下ろした。

「ここでどのくらい住んでるの?」

 唐突な質問だった。

 その声は、優しくはなく、かすれてもいた。

 彼女の右手が持ち上がった。

 その手には、見たことのない拳銃が握られている。

 オレは、それ以上、近づかないことにした。

 彼女の目が、オレの頭から爪先まで、眺め見た。

 オレの格好は、酷くないつもりだ。

 サバイバルナイフで、髪もヒゲもツメも、できるだけカットしていた。

 着ているのは、毛皮をなめして作った服と靴だ。

 前の服は、生分解性だったので、すでに土に戻っている。

 置いてきたバックパックももうボロボロで、補修しながら使っていた。

「ええっと……150日ちょっと」

「そう。名前は?」

「パオロ、パオロ・モーガン」

「モーガンさんね。私はクリスティーヌ・ブロードリック。クリスと呼んで」

「ミズ・クリス、この飛行機をどうやって手に入れたんですか? この惑星は、弱肉強食の世界だと聞いていたんですが」

「モーガンさん、敬称はいらないわ。この飛行機は、〈スベルト王国〉で造られたの。私は、〈スベルト〉の軍人。ここを交代で管理しているの」

 王国に軍人?

「王国には、数万人が住んでいるわ。その一部が、軍に入隊している。それだけの人間が囚人として、この惑星に送り込まれたのよ。集まれば、それだけの知識が集まるわ」

「確かに」私はその言葉の意味を考えた。「技術者も科学者も集まりますね。軍関係者もいただろうから、軍があってもおかしくはないか」

「理解が早くて助かるわ。それであなたとしてはどうしたい?」

「どう、とは?」

「この島での生活を続けるか、王国に来るのか。あるいは、別の場所に行きたいのか」

「別の場所?」

「こうした島はいくつもあるわ。大きな町もある。中には、王国に住んでいたけれども出ていった集団もいる。必要ならば、搬送できるわよ」

「この飛行機で?」

「これでは無理ね。ひとり乗りだから。基地に連絡を入れて、迎えに来てもらうわ。どうする?」

「はぁ」

 考える必要があるだろうか?

「王国に行ったら帰ってこられないんですか?」

 彼女がクスリと笑った。

「帰ってくるつもり? まぁ、いいわ。答えは、帰ってこれる。でもすぐに戻るのは無理ね。搬送機が稼働する必要があるから。あなたもご存知のように、この島は、送り込まれる囚人数が極端に少ないの。ここに次の囚人が来て、王国に来たいと言わない限り、搬送機の稼働はありえないわけ。わかる?」

「つまり、搬送する荷物がなければ、ここには来れないわけですね」

「そういうこと」

「どうして、着陸船が到着した際にいなかったんですか?」

「監視していないからよ。送り込まれる人数が少ないんでね、この島は。定期的にチェックして、ある程度の掃除をするだけなのよ」

「ああ、なるほど」

「ここの掃除、あなたが?」と右手で着陸場を示す。

「ええ、まぁ。次の人のことを考えて」

「そう。でもありがたいわ。掃除は大変だから。コーヒーでも飲む? といっても本物じゃないけど」

「草の根っことか、果実を使ったもの?」

「そんなところ。知識がおありなのね」

 彼女は、コックピットから円筒形のものを取り出した。

 その先端をクルクルとまわして、フタを取る。

 そのフタに、筒からこげ茶色の液体を注ぎ入れると、香ばしい香りが漂いはじめた。

 湯気も出ている。

「どうぞ」と差し出してくれる彼女。

「どうも」と受け取る。

 香りをかぐ。

 コーヒーのそれのような気がする。

 息を吹きかけて冷ましながら、すすった。

 香りも素晴らしいが、味もいい。

 そうして、ひと息吐いた。

 緊張が解け、リラックスしていた。

「うまいコーヒーです。本物よりも上質みたいだ」

「言っとくけど、安物よ。本物があれば、きっと高く取引されるでしょうね」

「そうか。入ってくることはないんでしたね」

「ええ。ここでは、代用品しか手に入らないわ。逆に本物よりもいいものもあるけどね」

「たとえば?」

「シルクはご存知?」

「ええ。本物は確か……ガの幼虫がサナギになる際に吐き出す糸でしたね」

「それは知らなかったわ。ここで作られるシルクは、ここの生物から抽出したらしいわ。それで作られた布の手触りは、本物よりも滑らかなの」

「なるほど。そうなると糸から布を織る機械もあるんですね」

「ええ。王都はあなたを歓迎するでしょうね」

「どうしてです?」

「あなたが知識人だから。“知識は宝”なのよ」

「わかります。ここにいた人たちの知識は限られていたようですが」

「ええ。それでも労働力として、王国は迎え入れた」

「労働力ですか。力仕事は苦手です」

「それにしてはいい身体つきだけど?」

「ここで生活するには、必要ですから」

「なるほど」

 コーヒーを飲み終える。

「もう一杯、どう?」

 ありがたくいただくことにした。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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