【133.陛下の思い・3】
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城に戻って、その画像を陛下に御見せした。
「なんという美しさだ。全然違うではないか」
陛下おひとりでよかった。
評議会の面々の前で、この言葉を聞かれたら、弁解が難しい。
「はい。私もまさかこれほどとは思いませんでした」
「これだけでもみなに見せたいな」
「そうですね。国民に公開いたしましょう」
「それがいい」
翌日には、その画像がネット上に公開された。
公開されると、多くの反響があった。
“美しい”が一番多く、”これが自分たちが住んでいる惑星なのか”という声も多い。
目的も知らせた。
そのおかげで、スポンサーがついた。
王室からの援助だけでもよかったが、スポンサーがいることで、すべてに拍車がかかる。
ひと月後には、王国圏のあちこちで、バルーンが打ち上げられ、データが回収された。
そのデータが統合され、補正され、コンピューター上の惑星儀に集約された。
そこには、北半球と外洋、それに南半球の縁までが映し出されていた。
さらにおおまかではあるが、地図にも反映された。
その地図は、国外でも取り引きされ、珍重された。
多くは、船乗りが購入したようだ。
正確な地図が欲しかったのだろう。
それとともに売れたのが、位置検出システムだ。
以前からあったのだが、地図の正確さが高まったことで、システムの有効性があがったのだ。
出来上がった惑星儀を、評議会と陛下に御見せした。
「おお」と誰もが唸った。
それは直径50cmあり、アルが示した〈地球〉儀よりもさらに丸みを帯びていた。
アルが示したのは、10度ずつのものだったが、これはその半分、5度ずつのものだ。
紙に印刷するのはたやすいが、それを切り、球体に貼りつけていく作業は、大変な時間と労力を必要とした。
「コンピューター画面のようすと見比べると、見劣りしますな」と評議会の男性のひとり。
「ですが、これはこれで素晴らしい出来ですよ」と女性のひとり。
その点では男性も認めてくれた。
「球面に印刷処理を施したいので、それができるプリンターの製作を依頼してあります。ですからもっといいものができますよ」とオレは説明した。
「では、今後も惑星儀をお作りに?」
「もちろんです。すでにお話したとおり、〈レダン星系〉の主要な惑星について、作らなければなりません。それから天体儀を作ります。並行して、プラネタリウムの製作にもかかります」
「それらを作って、すべてを公開するのですか?」
「はい。それが本来の目的ですから。子どもたちの教育にもいい影響を与えると思っています」
その惑星儀は、一晩だけ、陛下の部屋に飾られた。
「パオロ、よくやってくれた」
「私だけの功績ではございません、陛下」
「わかっておる。新しいプリンターができれば、よりアルの惑星儀に近づくのだな」
疑問形ではない。
「はい、陛下」
陛下が、惑星儀に手をかけて、まわした。
クルクルとまわる惑星〈スータン〉。
「陛下」
「ん?」
陛下は惑星儀を見つめたままで、こちらを振り返らない。
「天文部によりますと、星は観測しているが、名前が決まってないのだそうです」
「名前?」
こちらを見た。
「はい。星ひとつひとつもそうなのですが、星座も決まっていないのだとか」
「必要か?」
「必要です。天文部では記号と番号を割り振っています。ですが、一般人にそれでは話が通じません。名前があれば、どの星かが、すぐにわかります。たとえば、あれが北極星だ、あれが渡り竜座だ、という具合に」
「おお、なるほど、その方がいいな。どうすればいいのだ?」
「国民から募ってみてはいかがでしょうか?」
「うん、それはいい考えだ。明日にも提案してくれ」
「かしこまりました」
その提案は、すぐに実行に移された。
だが、思わぬところで、反論が起こった。
それは、漁師などの船舶を有する者たちからだった。
彼らは、それぞれで決めていたのだ。
そこでそうした星や星座は、候補として出し、国民に決めてもらうことになった。
それでも決まるまでには時間がかかる。
空には無数の星があるのだから。
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