Re30 魔法少女の復活
「――という訳で、魔王側の魔法少女と交戦したのですが、手加減できる相手では無かったので殺してしまいました。ですが蘇生ができるので情報を引き出すためにも、蘇生をしたいんですけど……それなりの準備が要ると思いまして」
「なるほど、それで私ですか」
私は戦場での一件が済んだ後、直ぐに時音さんを蘇生させずに精霊国の流未さんを訪ねた。
彼女を蘇生して情報を引き出す際に、彼女の力も借りたかったからだ。
「魔王に付いて聞きたいこと、色々あると思って」
「そうですね……確かに、彼女の目的、その手段について。知りたい事は多いですね」
そんなわけで時音さんの蘇生については私と流未さん、そしてアルクの三人で特別な結界内で行うことになった。
何しろ蘇生してすぐに交戦的な動きとかされたら困る。街中とかで魔法少女同士ぶつかったら尋常ではない被害が出てしまう。
「ところで、そちらの少女はどちら様で?」
「あ、あー……」
流未さんに言われた少女。
長い黒髪に吊り上がった黄金の瞳、華奢な体に似合わない偉そうな態度を取る少女。
「我か。我こそはこの世で最も尊き最強の龍種、エンシェントドラゴンのアルクである」
「貴女が?」
「……はぁ」
そう、この態度のデカいちびっこはアルクだ。
一人称とか違うけど、印象的にはドラゴンの時に近いものがある。居るだけで威圧的な感じとか特に。
「貴女に聞いていた話と随分印象が違う気がするけれど……」
「メグルにどのように聞いたのかは知らないが、我は人の姿だとこうなってしまうからな。見た目で侮られないよう態度で示しているのだ」
「むしろ余計に舐められそうだけどね……ちっこいのに背伸びしてるなって」
「そんな輩が居れば焼き払うまで」
そんなことされたら私が困る。一応契約している以上、相棒がやらかしたことは私の責任でもあるし。勘弁して欲しい。
「場所はどうしましょうか?」
「近くの森でいいでしょう」
「異論はないぞ」
「じゃ、そうしましょう」
という事で三人で流未さんの部屋を出て森へ移動した。
しばらく森を進むと少し開けた場所に出た。
「この辺りでいいでしょう。人払いと空間を隔離する結界を張りましょう」
流未さんの言う通りの結界は私とアルクで張ることにした。
プリンセスフォームなら一応、時音さんでも簡単には崩せない結界が張れるだろうし。
「さて、私は魔法少女としての力はもうありませんから、危なくなったら切り捨ててくださって結構ですからね?」
「え、いやあ、流石にそれは……」
魔法少女的にそれは無しだと思う。まあ、魔法少女として云々を言い始めると、私の行動はちょくちょく駄目な気がするけど。
「まあ、兎に角、蘇生しますね」
私は再利用の魔法を使って時音さんを蘇生して止めていた時間も動かした。
「後は起きるのを待つだけですけど――」
一体どのくらい待つことになるかなと思っていると彼女は思いの外直ぐに眼を覚ました。
「ん……ここは?」
「おはようございます、時音さん」
「あなたは……! そう、これは……私、負けたと言う事かしら」
流石に即死魔法使われたとか、復活させられたとかは思っていないようで、ただ負けて気を失って、目が覚めたら森の中。みたいな認識のようだった。
それならそれでありがたいけど。殺したとか思われてるよりはずっといい。
『ふん、貴様はメグルに敗れ、命を落としたが、メグルの魔法によって復活したのだ!』
「うん? あらメグル、貴女、契約したのね」
「あ、はい」
私の胸元で喋るアルクを見て、時音さんは私が契約したのに気づいたようだ。
「これで余計にバケモノじみた強さになったわけね……それにしても復活、ね」
「えーっと……」
あぁもう、アルクの馬鹿。なんで言っちゃうかなぁ……凄く印象悪いじゃん……一度は自分を殺した相手って思われたら。事実だけど。
「流石、暴力魔法少女ね。同じ魔法少女をぶん殴ったりするだけあるわ」
「うっ……」
確かに他の娘と戦った時も近接主体の戦い方だったけども……暴力魔法少女って。
「それで、戦争はどうなったかしら」
『メグルが全員ぶっ飛ばしたぞ』
「アルクぅううう!!」
私は胸元の喋る宝石を思いっきり掴んで振り回した。
『おいコラやめろ! なんか気持ち悪くなってきたぞ!!』
「あるくぅぅうううううう!!」
『わかった! 黙ってるから!! 悪かった!!』
私がアルクをブンブン振り回すと、アルクも私の気持ちを理解してくれたようで、とりあえず黙っていてくれることになった。
「……こほん。それで、まあ。戦争は止めましたよ」
「なるほど。私と同じように一旦ぶっ飛ばして、蘇生でもしたのかしら」
「ぐっ……」
私の手の内を思いっきり見透かされていた。
「やっぱり暴力魔法少女ね」
「うぅ……」
正直今までやって来たことを思うと、全然否定できない。
「それで? 私を生き返らせて……ご丁寧に結界まで張っている所を見ると、私に何か用があるのよね?」
私が軽く落ち込んでいると、時音さんの方から話を振って来た。
「あ、はい。魔王の目的と、その手段について聞かせてください」
「いやよ。私が真央を裏切るわけないでしょう」
「むぅ、ならここから出しませんよ」
「勝手に出させてもらうわよ?」
「止めるに決まってるじゃないですか」
「ふうん。それで? また戦って、殺すしかないから殺して、それの繰り返しかしら? 何度やっても私は喋らないわよ」
困った、凄く頑固だこの人。
実際、無闇に戦いたくないし、今は流未さんもいるしなぁ。
などと悩んでいると、その流未さんが動いた。
「時音さん、貴女は変わりませんね」
「ん? 貴女は? ……もしかして、流未、かしら」
「えぇ、覚えてくれていたようで何よりです」
流未さんが笑うと、時音さんは違った意味で笑った。
「貴女随分おばさんになったわね」
「これでも魔力を使って老いは遅らせているんですよ」
「それでも十分おばさんだわ。あの時提案を飲んで私みたいに不老になっておけばよかったのに」
「そうかしら」
「そうよ」
笑う流未さんと不機嫌そうに睨む時音さん。もしかして仲悪い?
「あの、すみません、提案って?」
「あぁ、そうでしたね。私は以前魔王に負けた際、自分に付けと言われたのだけれど、断ったのよ」
「それでこんなに老けてるのよ、馬鹿よね。真央の誘いを断って、不老不死にもならず、そのくせ未練がましく老いを遅らせて私の前に出て来るなんて」
そう言って本当に不機嫌な時音さんを見て。なるほどと思った。
時音さんは魔王が好きだから、その魔王の誘いを断った流未さんが嫌いなんだ。
「そうね、確かにこれは未練だわ。貴女達を止められなかったこと、それだけがね」
「ふうん。でも無駄よ。貴女には何もできない。メグル、貴女にもね」
時音さんはそう言って私を睨むと、でも、と続けた。
「今回は生き返らせてもらった訳だし、一つだけ情報を上げてもいいわ」
「え?」
どういう気持ちの変化だろう。なんで急に?
「貴女じゃ真央を止められない。だからそれをわからせる意味でも、教えてあげる。真央の次の狙いは帝国よ」
「帝国?」
帝国って、魔王軍と戦ってる最前線の国だよね。でもあそこは今まで……。
「今まではただのお遊びだったけど、これからは違うわ。貴女が出て来た以上、私達の計画は動き出したのよ。もう、止めることはできないわ」
それだけ言うと、時音さんは変身して、即座に距離を取った。
「さようならメグル。貴女とはまた必ず会うことになるわ。そしてその時は――」
そこまで言うと、時音さんは最後まで言い切らずに姿を消した。
「はぁ……これは困ったなぁ」
何というか、お約束的な意味ありげなセリフを残していったけど、どうしようこれ。
「あの、流未さん」
「分かっています。帝国に向かうのですね」
いや、正直全く気は進まないんだけど。そういう流れだよね、やっぱり。
「後のことはお願いしてもいいですか。次の狙いが帝国ならすぐに戻らないと」
私の言葉を流未さんは快く了解してくれた。
「アルクも、いいよね?」
『構わないが、このまま行くのか?』
そっか、アルクはこの姿だと窮屈だよね……。
「人の姿でも移動できる?」
『メグル程の速度は無理だが、いつものように飛ぶくらいならできるぞ』
「じゃ、それで」
という事で、時音さんからの情報を得た私とアルクは、急ぎ、帝国に向かう事になった。
ご読了ありがとうございました!




