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違和感と序章の終わり

「うーん……何これ?」


おかしーなー。私の計画とは少し違いが出てるぞ?


手に持った望遠鏡で街の惨状を確認し終え、私は頭をかしげる。


ダンジョンから出て街をさっさと出て惨劇を見たかったのに出て振り返ったら大爆発が起きて街は完全に壊滅、街にいた生物は全滅した。さらに、私が汚染した呪いとは全くの別種の呪いが蔓延していている。


うーん……とりあえず、呪いの種類から考えていくか。


適当なモンスターを殺して得た魔力は確かに私が汚染させた『死の業』だったけど、蔓延している呪いは……多分、『感染』の類いだろう。


『感染』は特定のエリア内で定めた行動をした者を無条件に呪うタイプの『呪詛魔術』。効果範囲が広いとそこまで大きな効果を出すものではないけど、今回のはかなり強力な呪詛だ。


『呪詛魔術』の類いは最重要で警戒していたこともあってそれなりの知識はあるが、これほど大規模かつ強力な呪詛はあれしかない。


「【冥土神無】か。……そうなると、一級品の【呪詛魔術師】が関わっていたと考えて良いだろう」


一定空間を『冥土』と定義する事でその領域に入った生者を呪殺する【盛者必衰】とは全く別の『都市喰い』。


だが、妙だな。この魔術は成功確率が極めて低い。何故なら都市に大規模な準備をし、様々な道具や素材を扱い、やっと完成する。しかし街には神心教がいる。


神心教の修道女は呪いのプロフェッショナルとして幼い頃から苛烈な訓練と洗脳を行われる。そのため、規模の大きな呪いを使えば必ず察知し解呪に動……ああ、そういうことね。


私はある考えに至り、口角を上げる。


恐らく、この魔術の術者は神心教の関係者だ。気づいて解呪に動かなかった時点で術者は絞られるからな。


まあ、面倒だから狙わないけどね。勘だけど『十二宮』の使い手だと思うし。


「シルフィは……まだ寝てるか」


後ろを見るとシルフィが寝息を立てて眠っている。


流石に魔導書をこうまで使ったら体力も精神力も磨耗してしまうか。……というよりも、私の方が異常でシルフィの方が正常なんだろうけど。


「さて、と……」


この街はほぼ壊滅した。あれほどの呪いを教会が解呪し地下のダンジョンの最奥に仕掛けた呪いを解くまでは永い年月がかかることだろう。


とりあえず、少し休憩したら私たちも動くとしよう。まだこれだけでは満足できない。もっと大きな厄災を、惨劇を引き起こす。


狙いは幾つもある。私があの愚物どもと様々な場所を巡った関係で様々な場所に種があることも確認済み。後はそれを開花させる。


ああ、鼠に頼んでリュウたちが来るように仕向けないとな。


『カード』から周辺諸国や主要な都市を書かれた地図を取り出し街道を指でなぞっていく。


地理的な面で見れば一番近いのは『アンピュラ』か。けど、あそこは政治的な面で少し厄介な場所なんだよね。下手したら際限のない戦争が起きかねない。


となると、次に近いのは『バイゴーン』か。この都市もかなり変わった性質がある。次の標的としては非常に良い。


「ん……師匠?」

「起きたか、シルフィ」


眠っていたシルフィが身体を起こすと少し伸びをする。


まだ体力や魔力の回復は満足とは言えないが……それでも、目を覚ませる程度には回復したか。


「師匠。師匠は何であの街をあそこまで壊したんですか?師匠ならやり方くらいいくらでもある気が……」

「確かに、やり方なら幾らでもある」


敵国を引き入れる事から内部腐敗、暴動まで起こそうと思えば様々な手法で引き起こす事ができる。事実、それを使い私は様々な国を滅ぼしている。


「けど、今回は少し別だ。最初から目的はあいつらだからな。都市は謂わば使えそうだから使ったに過ぎない」


リュウやツキシマの仲間を目の前で殺す事で私を悪性と認識させその後、都市を破壊する事でより印象付ける。


物語において竜が勇者の前で姫を拐うように、正義に向けて明確な悪を提示させる。そのために私はこれを行ったのだ。


「悪趣味」

「分かっている。そういうお前も露骨に趣味が悪い。あの魔術、人を悪魔に変える禁術だろ」

「やはり、分かってましたか」

「当たり前だ。私が教えた魔術だからな」


私としてはあの手の魔術はあまり好んで使いたくはない。私はあくまで人の人格としての範囲内でしか作り替えない。


人とは違う人間の感性にして拷問したところでつまらないのだ。誰だって拷問され汚されても喜ぶようなマゾを拷問したくはない。


まあ、これは趣味の問題だけどね。


「さて、私たちも新たな場所に行くとしよう。今回は少し時間をかけたいからなるべく早く行動をする。それと、基本的に別行動になると考えて」

「分かりました。……え?」


何を驚く事が……ああ、そうか。『バイゴーン』の性質を知らないし言ってないか。


「やることはかなり悪趣味な手法になる。改造しているそいつも使え。そっちの方が遥かに面白い」


計画の内容を紙に書いてシルフィに渡す。


読み通したシルフィは驚愕のあまり口を塞ぎ目を大きく見開く。


「これは……!?正気ですか!?これをやれば確実に国が動いてしまう……!」

「動いてしまうのではじゃない。動かすのだ」


それに、私は正気ではない。常に狂っている。


何せ、私はあの愚物どもから解放され、際限の無い狂気を表に出すことができたのだから。


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