ある小学6年生の話
短編で不定期連載です。
簡単に読んでもらえると幸いです。
まったく別ジャンルの小説→ https://ncode.syosetu.com/n3821el/
~ある男の子のお話~
「今日も○○さんすごかったね。」
「本当にそうだね。それに比べて××はさ……… と思わない?」
「本当にそれ。 もううんざりだよね。」
あはは、確かにそうだね。と答える僕。毎日こんな日常だ。いつからこんな風になってしまったっけ。
確かこんなこと言いあうようになったのは4年生の時だっただろうか。きっかけはクラスのリーダーの△△くんが
「ずっと思ってたんだけどさ、□□ってみんなと比べて……だよな。」
と言ったことだった。きっと本人もこんなことになるとは思わずに言ったのだろう。それ以来その子はいじられるようになっていき、クラス全体はそれを見て、
(他の人と同じことをしないと…自分もこうなってしまう。)
という雰囲気がみんなの中で、アンモクノリョウカイとして流れ始めたのだ。
正直言ってみんなはこんな日常望んでいないだろうし、そもそも事の発端の当事者がこんなこと思っていないのだから、辞めればいいじゃないかと思うだろう。しかし、だからこそその当時のみんなは辞められなかっただろうし、目立つことに恐怖を覚えている中で、わざわざ自分から率先して辞めようと言いだす人は現れなかった。
いや、そういうとウソになる。一度このクラスの雰囲気に異議を唱えたとある少女がいたが、その子はその日の内に干されて、転校した。
みんなが相手を監視し、そして自分を作る日々がずっと続いた。
そんなある日のことだった。
「ねえ、知ってるか。この町の▽▽公園に交換屋さんがいるんだってさ。」
「交換屋さん…?」
「そうそう。なんだか自分のほしいものを言ったら何かと引き換えに交換してくれるらしいよ。」
「へぇ、そりゃすごいね。僕もあってみたいな。」
「でもね、交換の時に引き換えにするやつはとっても高いものじゃないといけないらしいよ。そう隣の家のおねえさんが言ってた。」
「高いものかぁ。それじゃ私たちじゃ難しそうだね。」
その時僕は思いついたのだ。本当になんでもくれるというのならこの状況を変える力をもらえば…。
「帰りの会」というホームルームじみたことを終えた僕は一目散に駆けだした。
「ちょっと、□×。どこへ行くの。」
「秘密だよ。また明日ね。」
はぁ、はぁ。ここがその噂の公園か。その交換屋さんはいったいどこだ。
公園をかけまわると、ベンチに5月なのに長袖のコートを着た男っぽい人が足を組んでいた。きっとこの人なのだろう。その人はどこか周りの雰囲気とはかけ離れており、少し気味が悪いような気もした。
「おじさん。おじさんは交換屋さんなのかい。」
そう尋ねると
「そうだ。何か交換してほしいのかい。」
という女の声が聞こえる。どうやら女の人だったようだ。
「僕は…、クラスの雰囲気を変えてほしい。交換屋さんどうか交換してほしい。」
「ほう…。それでいいのかい。」
「あぁ。本当にくれるならそれがいい。もうこんな日常みんな苦しくてうんざりしている。早くみんなが笑っている日々にもどりたいんだ。家からお金になりそうなものはもってきたから。だからお願いします。」
そう少年は悲痛そうな顔で言うと、交換屋さんとよばれるその人はにやりと笑い、こう言った。
「いいだろう。ただし、金目のものはいらない、もっと別なものを貰おうか。」
「あははは、○○ちゃんったら本当に…なんだから。」
「そういう××ちゃんも……じゃん。もーほんとうにおかしくておなか痛くなっちゃったよ。」
「▽▽くんもこっちきなよ。みんなで遊ぼうよ。」
交換屋さんはたしかに約束を守ってくれたようだ。もうだれもお互いのワルイところをみてサゲスモウともしないし、ナカマハズレにすることもなければ、カゲグチだってない。
あれ、ワルイってなんだ。ナカマハズレってなんだっけ。
まぁ、いいや。みんな楽しそうに、愉快に笑っている。それがみんな望んでたはず。ほら友達がよんでいる。早く僕も混ざりに行こうっと。
「ねぇ、僕も混ぜてよ。」
(#1:感情を交換に)