己が身体を武器とせよ
さて、火魔法の時とほぼ同じことをやるだけ……なんだが、固有魔法は勝手が違うから教え方が分からないな……。師として格好いいところを見せたいという欲はあるんだが……。
「……ですかね?」
ううむ……。
「こんな、感じですかね!?」
「おっと、すまな……!本当に凄いな。キミは」
「できてます、かね?」
「完璧だ」
火魔法の魔力を感じない、純粋な身体強化の魔法が発動している……。いくら火魔法ができたからと言って、すぐにできるようなものでも無いだろう……。やはり凄いな、この子は。ここまでできるなら、もう名前の儀式をやってもいいかもしれない。
やり方は確か……
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「固有魔法の名前を知っている者とそうでないもの二者が、敵意を持たずに己の固有魔法を接触させることにより、新しく名前と少しの記憶が頭に浮かんでくるんだ。だから、戦っている時に相手を強化することはないから、安心していいよ」
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ウィックさんがこう言っていたな……。
「その身体強化の魔法を強化する。魔法を発動した状態で、手を出してみろ」
「いいんですか?まだ、この魔法を使った戦いにも慣れていないんですが……」
「気付いていないだけで、身体強化の魔法は微弱だが常に発動していた。火魔法を使う時は使わないように意識していたから、その時だけは発動していなかったがな」
「でも、魔導具が無いと魔法は使えないんですよね?」
「その認識は合っている。が、その身体強化の魔法はその常識から逸脱している。そもそも、魔導具を使うのは人は魔力を放出する器官が発達していないからだ。その点、身体強化の魔法はどうだ?」
「……放出する必要がない?」
「その通り。固有魔法というだけで希少なのに、さらに魔導具に依存しない魔法……。使えるならワタシが使いたいくらいだ。……で、どうする。強くなりたいか?」
「……もちろんです。生きるためにはどれだけ強くても足りないくらいですから!」
「全くその通りだ。さあ、手を出せ」
「はい!」
身体強化の魔法をより強く纏った手がヴァエルの前に差し出される。その手をヴァエルの魔法であるクリスタルで作った義手で優しく触れる。
「!?」
その瞬間、前の保持者である、勇者の記憶が脳内に流れる。それと同時に、その名前も。
「……ストレングス」
それを口にした瞬間、さらに色濃く強くなる。存在が確立された魔法が、この瞬間こそが己の誕生の日だと叫ぶかのように。
「どうだ?」
「不思議な気分です……。でも、なんだかやる気が溢れてきます!今日も討伐依頼をこなしに行きましょう!」
「……今日はもう行ったぞ」
「あ」
「また明日、だ。気分が特別に良い時と、落ち込んでいる時は初歩的な失敗をすることが多い。今日は休め」
「……分かり、ました」
────
「さて、お待ちかねの日だ。存分に暴れてみろ」
「はい!!」
今日あった依頼はオーク……。ゴブリンより大きく力が強いが、鈍足だ。数が多いから手助けできる距離感を保ちつつワタシも戦う。
「行きます!!!」
「合わせてやる、信じて走れ」
レングが走り出したのに合わせてヴァエルがクリスタルを打ち出す。
「はあっ!」
そして、刺さったクリスタルをストレングスを発動した右の拳で殴ってさらに深く刺し、確実に倒していく。
その時、後ろのオークの棍棒が振り下ろされた……が、知っていたかのように飛び退き、回避した。
「ふむ、身体強化というのはそこまで作用するのか」
存在が確立されたストレングスは単純な筋力の強化だけでなく、五感にまで影響を及ぼした。
「ふぅ……」
回避行動のついでとでも言うように、左手で火球を作り、放つ。どんな生物でも、火は怖いものとして本能に刻まれている。身体が燃え始めたことで冷静さを失ったオークにとどめの一撃を食らわせる。
動きが格段に良くなっている。……見た記憶が関係しているのか?確かにワタシが見たクリスタルの記憶も、これからの戦いの助けとなるようなものだったが、ここまで変わるような代物では無かった……。勇者が余程愛用していたか?
「まだまだ行けます!」
「油断するなよ」
「はい!」
ワタシは、とてつもないヤツを弟子に持ったのかもしれないな。
そういえば、ヴァエルの身長は軌跡編からちょっと伸びていますがやっぱり低いので、舐められないように、大きめのマント的なのを身につけています。




