第72ターン 疑惑、モレシャンの秘密
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
プレイするキャラは自分の分身、そう純は囁いた。この格ゲーの根本命題は深淵にして未解決だ。
純が操るキャラは「オレっちより強い奴を探しに行く」空手家リョウ。ストイックな求道精神が純の道標だ。
が、一方でカワイイ系女子キャラを選ぶ中高年プレイヤーのメンタリティをどう理解するのか。チーム夢原のヘッドコーチむ〜どは女子プロキャラ、セイント・リカの著名なプレイヤーだ。
勝利への最短距離、最適化。これでキャラを選ぶといえばそれまでかも知れないが、美少女キャラを使う成人男性の中に変身願望を見出すのは穿ち過ぎか。とまれ、対戦に戻ろう。
フランスのキメラ体、バレエの素養がある柔道家にしてモデルのアノンが韓国の蓮葉、ジュリーに攻撃を続ける。
「蘭子ちゃん、相手は投げ技主体だ!投げ抜けで対応して!」
ヘッドコーチむ〜どから指示に従い、蘭子・ジュリーも投げ技を出すことで技の相殺、「ジャンケンのあいこ」で何とか防御する。
「中々、フランダースの犬もやりやがるな、へんちくりんな格好してやがるが。」
「純、あれはコスプレってヤツだよきっと。オタク族なら詳しいと思うけどさ、多分そうナノだ。」
純とクー子に会話に留年界のシティボーイ源五先輩も参戦し、あの緑の長髪はミクじゃないかなぁ、と物知りな一面を見せる。ミク、何だそりゃ?
「フランス人キャラを使うフランス人プレイヤーとはあまりにもお誂え向き也。しかし、フランダースといえば確か、、」
三人のやり取りを横で聞いていた比留多恭介が疑問口調で独りごちる。
「フランダース、つまりフランドル地方ってベルギーの北部とちゃうの?」
コーチmakoが若者たちの疑問に答えた時、アノンの攻撃が一瞬止まった。アノンの遣い手、フランダース・モレシャンの表情に動揺の色が走ったように見えた。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




