第189ターン 比留多の格ゲーサヨナラ宣言
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
肉を斬らせて骨を断つ。比留多 恭介はあえて相手の大技を食らうことで結果として相手の懐に入り込み、投げ技を連発して勝負を決定付けた。
ところが!フィニッシュの小パンを入れようとした瞬間に対戦相手が、すなわち佐久間 柚葉が大きく咳き込み両膝をついてゼェゼェと荒い呼吸を肩でする。
「ゆ、柚葉どの!」
コントローラーを投げ出して比留多 恭介が柚葉に駆け寄る。そこで対戦はタイムアップとなってしまい、とどめを刺し損ねた比留多・ゲイル。
比留多と柚葉が各々操ったゲイルの残り体力は僅かに柚葉側が多く、比留多はまたしても勝負に勝って試合に負けるという不運に見舞われる。
「さ、触るな!ゼェゼェ」
柚葉が比留多を牽制する。後ずさりしながらも柚葉の体調が気になる比留多。
「ゼェゼェ、か、勝ったのはアタシだ。比留多恭介、2度とコントローラーを、ゼェゼェ、握るなよぉゼェゼェ、、」
決して比留多を許すことのない柚葉。冷酷な最後通牒に反応したのは難波ドテRISEの若大将、万吉少年だ。
「姉さん、それはあんまりやないか!このイキりのお兄さん(おそらく比留多)はアンタが咳き込むやさかい、反射的に寸止めしただけやで、それにこの兄さん、」
「アンタのことを心から心配してるんやで、それが分からんか!」
坊主刈りの苦労人、自宅の回線はADSLでオンライン対戦もままならない苦学生の言葉に流石の元ヤン柚葉も言葉がない。この間、辛そうな柚葉を甲斐甲斐しくケアしていた万吉の言葉だ。
「で、でも、ゼェゼェ、約束は約束、だろッ。ゼェゼェ」
と苦し紛れにお返しするが些か迫力に欠ける柚葉。その時だ。
「いや、いい也。約束は約束なり、、格ゲーはもう止める也。」
なんと比留多 恭介自身が格ゲーからの撤退を表明し、その象徴か、あのhマークの黒キャップ、レジェンド夢原 省吾から授かった帽子を脱いてみせた。
まるで長嶋監督の引退式を思わせるようなアクションに我らが熱血格ゲーマー、日乃本 純がいきり立つ。
「お、オイッ、ニヒル!おめえオレっちとの決着を着ける前に格ゲー止めるだと?ザケンじゃあねぇ!おめえの格ゲー道はそんなものなのかよぉ!」
「す、すまぬ、、日乃本 氏。しかしながら小生は、、小生は、、」
「な、なんだよぉ、ニヒル、、」
「小生は柚葉どのに嘘は付きたくない!約束を破りたくない!」
比留多の強い決断に純も、そして万吉少年他その場にいた面々も黙らざるを得なかった。
「ゆ、柚葉どの。小生は貴殿との約束を守る。そして信じて欲しい、清水での一件は、柚葉どのご一家の立ち退きは小生は何も知らなかった也。分かって下さい。」
日頃は舌が回る部類の比留多だが、少し早口で滑舌が悪かった。が、真意は柚葉に伝わっただろう。
突然の別れ、比留多が去る。あまりのことに心の整理がつかない純と唇を噛みしめるクー子。
「続けなさい、格ゲー。ねぇ、いいでしょ?柚葉ちゃん。」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・む〜ど
純が属するチーム夢原のヘッドコーチ。日頃はちょっとエッチなお兄さん。実は人格者のプロゲーマー候補。
・mako まこ
純が属するチーム夢原の女コーチ、長い睫毛が印象的なチームのアイドル。北大阪出身の理系女でもある。プロになるか大学に残るか思案中。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・佐久間 柚葉 さくま ゆずは
盛岡のフリースクール、リスタートゲーミングの不思議系エースプレイヤー。比留多に強い敵意を抱く。ムエタイ戦士のガッドや米兵ゲイルの遣い手。元ヤンでもある。
・先生 せんせい
リスタートゲーミングの主催者。行き場のない若者達をゲームで連帯させ、社会復帰させるNPO活動をしているのだが、、
・阪田 万吉 さかた まんきち
大阪の格ゲーチーム、難波ドテRISEの切り込み隊長。キャラのジャンプ力を活かした通天閣殺法が得意。苦労人のようだ。
・アンコールズ あんこーるず
格ゲー常任理事国のエースプレイヤー。元地下アイドルで格ゲープレイヤーとしてメジャーデビューを目論む妄想癖のJK。口癖は「アタシの想像力では〜」
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。純は既に死んだと聞かされていたが、、、




