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三つの魔法と螺旋の星屑  作者: 長尾 驢
第2章「エリスの魔法」
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19話「魔法」


 ~1年後~



 入学式から凡そ一年。エリス、ロイス、オークスの三人は魔法について、現時点でわかっていることを一通り学んだ。

 そして、学年が上がるとともに、問題点や魔法の活路について各々で発見して発表するという宿題を課された。

 この学校は三年間の修学を予定されており、一年生では魔法の基礎知識、二年生では魔法について各々で研究し、発表。三年生になると新たな魔法を作るという過程で卒業まで学ぶことになる。

 つまり、二年生からは自由に学ぶことに重きを置かれている。

 これは、元々この学校が「若い世代の柔軟な思考力を糧にして魔法の飛躍的な発展を望むもの」というコンセプトの基に設立された施設のためである。また、魔法については未知な部分が多く、教えられるほど情報がないというのも一つの理由だったりする。

 二年生からは自由に学ぶことができるが、これは何も学校に縛られ続ける必要はない。

 ほかの街に旅に出て、学び、結果を報告するということができれば場所はどこでもいいのだ。

 第一期生で入学したエリス達にも後輩というものができるのもこの時期だった。

 初めて入るまでは知らなかったが、ほとんどの生徒は貴族のお金持ち。自らの力を鼓舞したいがために子供を使って入学させ、魔法についての知識を様々な場面で利用しようという魂胆だろう。

 何も不思議なことではない。貴族にだって上下は存在するのだから。

 エリス達がその貴族同士の争いに巻き込まれないのはある意味で幸運だったのかもしれない。

 授業は水を打ったように静まり返り、セリーヌの発言する言葉一言一句を聞き逃さんとノートにかじりつき、授業間の休憩などではそれを書簡にまとめるために再び同じ内容の文字を写していた。

 つまり、家族あての手紙に魔法に関しての知識を書き記し、お家のために奮闘するというのが彼らの日常だった。

 エリス達が入学式の時に奇異されていたが、それも杞憂に終わった。話しかけられることも暴力を振られることもなく、気にもされていなかったと思う。それほど空気な存在として扱われていたため、逆にオークスは集中できた。

 思っていた学校生活を送れていないことは確かだ。エリスが初日に匙を投げそうになるほど、会話がなく、黙々と作業している横で三人は暇を持て余していたのだから。

 友達を作り、楽しく会話をして、お昼は近くのお店でご飯を食べて、午後の授業は眠気と戦いながら、帰るときも友達と一緒に途中まで買えり、ばいばいと言う。そんな日常を想像していた。

 ふたを開けてみれば、ダイネの街で先生に教わるときとほぼ同じような毎日だった。

 違うのは授業の内容がより難しくなり、エリスもついていくのに相当苦労した。

 授業という点においてはロイスにとって天国ともいえる代物だっただろう。知識の補完が毎日行われ、先生へ質問すれば大抵は的を射た回答がもらえる。

 三人はそんな毎日を送っていた。

 

 魔法とは五百年前に発見されて以降ほとんど進化していない。知識も乏しく、発祥もわからない。どういう原理で起動し、何を消費して発現しているのかさえ不明のままだった。

 アラン魔法学校が設立され、授業を行うということで募集された先生たちはすべて魔法について研究している人たち。故に知識の偏りがすごく、事前に魔法の基礎部分を決め、それを生徒に教えるという会議が行われた。また、魔法に関して「何か」が作用し「何か」を伝って――――と、明確化された名称で呼ばれていないことが多く、研究者が違えばその呼称は星の数ほどある。そのため、覚えやすく簡潔な名前を新たに考案し、普及させるという会議も行われた。

 その結果――――

『魔力(魔法の素になる力。詳しくは不明)』

『魔力管(体の中で魔力が通る管)』

『魔力切れ(継続して魔力を使用した結果に起こる様々な疲労のこと)』

『魔力汚染(魔力切れ以降、無理に魔法を使用したときに現れる斑紋)』

『魔力症(魔力汚染が進行した結果、体内にあるとされる魔力が暴走し、発症する病気。様々な行動のコントロールができなくなり、最悪死に至る)』

『魔力症β(魔力症を克服した場合に現れる紫に発光する斑紋。魔力のコントロールが効かなくなり、一発の魔法で魔力切れを起こすなどの症状がみられる)』

『代替魔力(魔力の代わりとなる体内の成分。成分は人によって異なり、変換効率も人によって違う)』

『魔法媒体(魔法を顕現させるときに使用する道具類のこと。使用するものによって魔法の威力に差ができる)』

『魔力脳(魔法をコントロールする際に使用される思考回路のこと。コントロールの方法は言語化できないほど複雑になっていることが多く、本人の経験で補われている部分が多いことがわかっている)』

『魔力暴発(魔力症の暴走とは違い、コントロールを誤った際に起こる暴走。使用する魔法によって何が起こるのか変わってくるが、ほとんどは使用者に対するデメリットが発現する)』


 などが学術共通の通称として設定された。

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