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お花畑王太子を追放せよ 〜婚約破棄から始まる成上り〜  作者: 山田りく


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第三十回 総力説得戦と頑固な社長


「なぜですか!?  ルピナス社長、本当になぜなのですか!?」


 普段は沈着冷静なヴァルデマールが、眼鏡をズレ落としながら壇上のルピナスにガバッと詰め寄った。その手に握られた手帳は震えている。


「適正な報酬を受け取り、借金を早期完済することは、貴方にとっても会社にとっても利点しかありません!  なぜ現状維持に拘るのですか!?」


「ヴァルちゃん、すごいですぅ〜!  その調子でルピちゃんをバシッと言ってあげてくださいぁ〜!」


 ミモザは後ろでぴょんぴょんと跳ねながら、ポンポンを振るような仕草でヴァルデマールを健気に応援している。


『ヴァルデマール頑張れえええええ!!』

『全視聴者がお前を応援してるぞ!!』

『中間管理職の意地を見せろwww』

『ミモザちゃんが後ろで応援してるの可愛すぎる』

『ミモザまで味方に付けてて草』

『理詰めで社長を崩せ!!』


「ちょっと退きなさいヴァルデマール!  貴方じゃ甘いわ!」

 フランチェスカがヒールを鳴らして前へ躍り出た。バインダーをルピナスの胸元に突きつける。


「いい?  貴方が手取り10万ペルで満足していても、外の社会はそう見ないの! 『アイナール・ホールディングスは奇跡の配信者を月10万で使い潰す悪徳企業』って世界中から叩かれてるのよ!?  貴方のその無欲さが、私やホールディングスの名誉を傷つけているの!  分かる!?」


「ええ……でも、僕たち本当に満足してるんだけどなぁ……」

 ルピナスは困ったように首をかしげるだけだった。


『COOの切実な訴えwwww』

『ブランドイメージ崩壊の危機だからなwww』

『でもルピナスには全然響いてないwww』

『「満足してるんだけどなぁ」の破壊力』


「感情論は不要です、フランチェスカCOO」


 レインハルトが冷ややかな歩調で歩み寄り、冷徹な手つきでホログラムのグラフを展開した。


「ルピナス殿。報酬改定を行えば、貴方の手元に残る資金で子会社の設備投資、ひいては新しいハーブの農園買収や、新型の魔導カメラの導入も即座に可能です。貴方の目指す『みんなのチル空間』をより強固にするための資金なのです。これでも拒否する理由がありますか?」


「うーん……でも、今のお庭でも十分きれいなお花が咲いてるし、カメラもこれでみんなの笑顔がよく見えるよ?」


「……チッ」


 完璧な論理展開すらあっさりと受け流され、レインハルトの額に太い青筋が浮かび上がる。


『副社長のビジネス提案すら効かないwwww』

『「今の設備で十分」は最強のカードすぎる』

『レインハルトが舌打ちしたぞ!!』

『鉄壁の無欲フィルターwww』


「ルピナス殿!!  我ら四公爵家からも頼む!!」


 カネイチ公爵をはじめとする四公爵家の重臣たちが、なりふり構わずルピナスの前にひざまずかんばかりの勢いで詰め寄った。


「頼むからお金を受け取ってくれ!  株価が落ちて我が家の資産が目減りしているのだ!  100万ペルでも500万ペルでも持っていってくれぇぇ!」

「お願いだから受け取ってぇぇぇ!」


 役員総出、さらには四公爵家までが総力を挙げて「給料を増やさせてくれ」と頭を下げて説得を試みるという、前代未聞の光景が繰り広げられる。


 しかし、ルピナスはミモザの手をキュッと握り直し、ふんわりとした笑顔のまま、絶対に首を縦に振らないのだった。


『重臣たちが給料受け取ってくれって泣いて頼んでて草wwww』

『どんな株主総会だよこれwwwww』

『全員で説得して全敗wwww』

『ルピナスの頑固さ(お花畑属性)が強すぎる』

『誰かこの社長を納得させられる奴はいないのかwww』

 

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