最終話:終わりがいつかはわからないけど
「邪悪な存在の撃退とトシリアス先生の快復を祝って……乾杯!」
「「かんぱーい!」」
盃がぶつかる音が響き、学院の大食堂が歓声に包まれる。全校生徒と先生たちが集まり、邪悪な存在が完全に消え去ったことを祝う大きな宴が開かれていた。みなの顔も明るい笑顔だ。邪悪な存在という危機が消え去り、訪れた平和をその身いっぱいに享受している。みんなが笑顔になれて本当に良かった……ジュースを飲む私の胸は、そんな気持ちでいっぱいだった。
傍らのメイナとロイアも誇らしげに呟く。
「ノエル様はきっと、神様が遣わしてくださった救世主様ですわ。私たちとは違う特別な人間ですの」
「私もメイナ様に賛同いたします。ノエル様はただのご令嬢ではないのです。それこそ、人生を二度送っているほどの」
「そんな大げさな」
彼女らの言葉に少しばかりヒヤリとしつつも素直に嬉しかった。自分の頑張りが報われるのはどこにいてもいいものね。
「「あの、ノエル様……」」
「ん?」
誰かに呼ばれたので振り向くと、三人組の令嬢がいた。あれっ、手下ズ? すっかり疎遠になっていたのに、どうしたんだろう。
「私たち、ノエル様のことを誤解していたかもしれません。勝手に怖がったりして恥ずかしかったですわ」
「本当は人のために真っ先に行動できる素敵な方でございました」
「私たちもノエル様みたく立派な人になりますわ」
彼女らは私たちの近くに来て、控えめな様子でお礼を言ってくれた。まったく予想していないことだったので、非常に驚くことだ。
「ど、どうもありがとう」
「「それでは、私たちはこれで……」」
去り際、メイナに「あのときはごめんなさい」と謝っているのが印象的だった。もちろん、メイナも快く快諾し、明るい雰囲気に包まれる。わだかまりが消えて良かったね。
温かい気持ちで眺めていたら、トシリアス先生がこちらへやってきた。
「ノエルさん……」
「あっ、トシリアス先生。もうお身体は大丈夫なんですか?」
「ええ、おかげさまで元気になりました。これも全部あなたのおかげですね」
トシリアス先生はしきりに感謝している。何はともあれ、復活してくれて良かった良かった。できれば、これを機にもう少し授業を優しくしてくださると大変にありがたい。
「そんなあなたに伝えたいことがあります……」
「え? は、はい」
いきなり、トシリアス先生が私の手を握ってきた。おまけに、厳しかったお顔もやけに優しくなっている。な、なんだ?
「これからは毎日補習をつけてあげますね。朝昼晩、いつでも勉強できますよ。一緒に王国で随一のリーダーを目指しましょう」
「え!?」
「……すみません、嫌でしたか?」
「あ、いや、そういうわけではなく……」
それは別にいいです、とは言えず、曖昧に返事をするしかなかった。え、もしかして、本当に毎日補習するの? 絶対にイヤなのですが……。
しかし、目をキラキラと輝かしているトシリアス先生を見ていると、そんなことは微塵も言えなかった。……フェードアウトしてくれることを祈ろう。
「さて、ノエル嬢。こちらへ来てくれるかの」
「は、はい」
宴が始まってからしばらくして、アルクサンドル先生が私を呼びに来た。なにかな、と思いながらも後をついていく。な、なんだか檀上に行っているんですが……。
結局、あれよあれよという間に檀上へと連れて来られてしまった。私たちを見ると、会場は徐々に静かになっていく。
「ノエル嬢のおかげで我が学院は救われたも同然じゃ。そこで、学院は栄誉の証を授けることとした」
「え、栄誉の証!?」
「うむ、先生方も満場一致で賛成してくれたぞよ」
食堂はわああっ! という拍手で満たされる。私をそんな評価してくれたなんて……。これは普通に嬉しい。
「邪悪な存在という危険極まりない敵に臆せず立ち向かい、我らを守った功績は多大なものじゃ。よって、ここにその栄誉を讃える!」
そう言って、アルクサンドル先生は立派なトロフィーを渡してくれた。キレイな女神様が静かに微笑んでいる小さなトロフィー。マジか、とんだサプライズだね。なんかどっかで見たことあるような……なんだっけ、これ。
「これからもこの女神像のように、みなを導いていく者になっておくれ」
「……!」
そうだ、思い出したぞ。
――こ、これは……ナンバーズアイテム!
No.1【奇蹟の女神像】だ。学院での成績が最高クラスの生徒にしか与えられない、とても名誉あるトロフィー。『アリストール魔法学院は恋の庭』には、ある特定の条件をクリアしないと貰えないアイテムが9つある。そのうちの一つがこれ。
どうやら、アイテムを貰うと隠しシナリオがスタートするらしいけど、私はゲットしたことがないのでわからない。表彰されるのもそうだけど、前世ではついぞ手に入れることもなかったので、結構感慨深いね。すげえ……実物は画面で見るよりずっと豪華じゃん。
トロフィーを抱えて戻ると、メイナたちが拍手で迎えてくれた。
「ノエル様こそ、この学院を代表するお方でございますね! そんな特別なアイテムをもらうなんて!」
「1年生で貰える人なんて学院で初めてじゃないのかい?」
「先を越されちまったか。なに、お前じゃ不思議でも何でもないけどな」
「僕もノエル様みたいに表彰されることを目指します」
敵対忍者の襲撃から始まった新しい人生。最初はどうなることかと思ったけど、今はノエルになれて良かったと心から思う。そのおかげで、こんな素晴らしい人たちと過ごせているのだから。
終わりがいつかはわからないけど、きっと処刑フラグはもう立たない。
「さあ、皆さま。ノエル様から離れてくださいませ。今から私とお茶の時間でございます」
「いいえ。いくらロイアさんの頼みでも了承できませんわ。ノエル様は私とお茶を飲むのです」
「お取り込み中申し訳ないが、彼女の魔法の秘密を聞いたあとにしてくれないか?」
「ちょっと待て。俺との勝負の決着がついてからにしてもらおうか」
「僕だってノエル様のお傍にいたいですよ。では、誰が一番ふさわしいか、ノエル様に決めてもらいましょう」
…………はずよね?
これにて、本作は完結となります。
ノエルはずっとみんなと一緒に楽しく暮らしていくのだと思います。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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