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欠落していた部分の補填と、分かりにくい表現になっていた箇所の微修正をしました。

 火の手が上がるまでの時間を潰すために寄り道や昼寝などをしながら移動しているジャックよりも遥かに早くアトモ・フィリオに到着したイズチはねずみ算のような方法で、仲間に放火の旨について伝えた。

 するとその日の夜、アトモ・フィリオの高級なインスラから次々と火の手が上がり始める。

 それを見た富裕層に憎悪を抱いていた奴隷達は数ヶ月前に謎の集団に言われた通り、隠していた武器を取り出して、一斉に富裕層が住むインスラへと押し寄せて行った。

 その後、奴隷が軍人や富裕層を殺したり、奴隷同士で殺し合ったり、軍人が富裕層に反旗を翻して金目の物を奪い始めたりと、町は混乱に包まれた。

 その地獄絵図を背にイズチは再びサリスへと戻って行く。

 サリスへと到着すると、遊牧民の仲間にサカノ国へと戻って出撃の準備を整えておく事を要請するよう伝えると、自身はジャックから受け取った書簡を持ってサヴルム王国へと馬首を向けた。

 が、サヴルム王国へと続く道は騎士団によって封鎖されていた。

 他のルートを使って向かおうとするも、どこも突破する事は難しそうである。

(これは困ったな…)

 イズチは立ち止まってしまった。

 彼単体の実力は騎士団のメンバーとは互角くらいだが、騎士団は数人で他国への道路を監視している。

 そのため、このまま突っ込んで行っても袋叩きにされて捕縛されるだけだろう。

 とりあえず、サヴルム王国へと最短ルートで行く事ができる道路へと戻って、しばらく敵の様子を探ることにした。彼等騎士団はラヴィスヴィーパ王国の国民の中でもとりわけ真面目な人間ばかりで構成されているが、所詮ラヴィスヴィーパの人間なので、辛抱強く待っていれば隙の一つや二つ見せるかもしれないと考えたためである。

 しかし、いつまで経っても警戒は緩まない。

(仕方ない。かなり遠くなる上にそっちも閉鎖されているかもしれないが、一旦サカノへと戻ってそこからサヴルムへと向かうとするか)

 そう思い始めた時、敵の動きに変化があった。

 別の騎士団メンバーが道を塞いでいるメンバーに伝令を持って来たらしい。

 内容は十中八九アトモ・フィリオの急変の事についてであろう。

 あそこの港を警邏している騎士団だけであの騒動を鎮める事はどう考えても不可能である。

 すると、案の定騎士団の戦士達は道路の封鎖を中断し、走り去って行った。

 彼等がいなくなったのを確認するとイズチはその道を馬で疾走する。

(連中にとって最大の敵はジャックでも、もちろん俺たちサカノ国でもなく人手が足らないというのに非協力的な自国の国民なのかもな)

 退廃したサリスの町中へと消えて行った彼等の後ろ姿を思い出しながら、ふと、そんな事を考えた。


「奴隷達や平民、富豪、さらには軍人までもが暴徒と化して破壊と略奪を始めており、とても、アトモ・フィリオ内に現在いる騎士だけでは騒動を鎮めるには足りません」

 という報告を受けた時、騎士団長ヒースコートが頭に思い浮かべたのは風の神の伝説だった。

 正直、全部で二千人程しかいない騎士団で推定五十万人近い人間を鎮める方法などなく、鎮め得るとしたらそれは神の力くらいであろう。

 が、すぐに正気に戻りどうすべきかを思案し始めた。

 ただ、彼にできる判断というのはサリスにいる騎士団をこちらに戻すか、そのままサリスに残すかというものだけである。

 普通であればこちらに戻して少しでも騒動を鎮める事に努めるべきであろうが、彼は敵の首領に他国と通じられる可能性を考えると、そのまま騎士団をサリスに留まらせた方がいいような気もしていた。

「すまないな、インスラの上階層の価値が急激に上がった時にサリスから騎士達を引き揚げさせて充分な調査をしていれば事前に防げたかもしれない」

 ふと、ヒースコートは誰言うとなく呟いた。

 報告をした騎士は、

「いえ、サリスほど間者にとって都合が良い町はありません。敵の首領が他国と通じる事を事前に防ぐためには引き揚げさせずに残したという判断は良かったと思います」

 とフォローするが、実際のところその策が完全だったかどうかは怪しいだろう。

 サリスは他国へと通じる道が無数にあるので、そこを少数の騎士達で全て監視するというのは不可能に近い。

 とにかく何をするのにも人員が足りないのである。

(せめてもう少し動かす事ができる人数が多ければ検問も、インスラ上層階の急な人気についての調査も、武器が運搬された事についての真相ももう少しマシな対策が出来たんだがな)

 ヒースコートはそう思いつつ、報告をしてきた騎士に

「サリスにいる騎士達を呼び戻して対処してくれ」

 と伝えた。

 そして、自らも街へと出る支度を整え始める。

 すると、彼の部屋にレナ・ウォーベック将軍が訪ねてきた。

「貴方が出たら王の護衛はどなたがなさるんですか? 騎士団長殿」

 と彼女は言う。

「王からは自分の護衛より街を優先してくれと、先ほど下知がありました」

 下知というのは少し違う。

 正確には、王も街へと出て暴動を止める手助けをしようとしていたので、ヒースコートが自分に任せるよう進言したのである。

「それでは、城内には使用人と王だけしかいなくなってしまうと思うのですが、大丈夫なのですか?」

 残る者の中に彼女は自身を含めなかった。

 徒士働きしか出来ない形骸化し切った将軍とはいえ、いないよりはマシだと思ったのである。

「跳ね橋を上げれば城は水堀と城壁によって守られますし、王は剣と魔法の達人ですので自分の身を守る事はできるでしょう。彼のことが心配なら我々もさっさと暴動を鎮めて城へと戻りましょう」

 と言ってヒースコートは部屋を出て行った。

 レナもそれに続く。

 二人は馬を駆って城を出ると、夜だというのに昼間のような明るさと喧騒さがある街へと飛び込んで行った。

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