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ギルド『パンプキン・サーカス』の異世界冒険譚 ~亡国の英雄達 異世界に降臨す~  作者: 蒼樹比呂
第一章 ギルド『パンプキン・サーカス』
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76 『アオイ』 黒ウサギ族族長、出来る女シリルの「絶対儲かる部族経営!」 出版元黒ウサギ出版、獅子族に訴えられる!同じようにやっても儲からなかった。ついに問題は司法の場へと。


翌朝、黒ウサギ族族長シリルは宴会をしていた場所で目を覚ました。



いつの間にか眠ってしまっていたらしい。



周りを見ると、他の族長や他の黒ウサギ族も宴会の場で眠ってしまっているようだった。



「シリル族長大変だ!」



警備についていたはずの黒ウサギ族の1人が、シリルの元にやって来た。



「朝からどうした?」



「獅子族族長ギ・ガ・ゾルドがアオイを連れ去った。」



警備の者が言うには、アオイが昨日宴会の途中で警備達に食事を持ってきたらしかった。



ほとんどの者がそれを喜んで食べたのだが、それにどうやら眠り薬が入っていたらしかった。しかも、遅効性の。



唯一、前にアオイに眠気覚ましのクソまずいキノコを食べさせられた警備の者だけが警戒して食べなかったらしいのだが、そいつが言うには獅子族の者に襲われて今までロープで縛られて家に閉じ込められていたという話だった。



その警備が見た最後のアオイの姿は、獅子族族長ギ・ガ・ゾルドにお姫様抱っこをされて連れ去られるところだったそうだ。



シリルは頭を抱えた。



悪夢が現実になった、そんな気分だった。



多分、アオイは自ら獅子族族長に協力したのだろう。



祝福者にあれだけ興味を持っていたアオイにはありえる話だった。



となると、族長達の飲んだ酒にも眠り薬が入っていたということだ。



いつから獅子族族長と共謀していたのかはわからないが、この場合は、たまたま考えが一致したと見るのが正解ではないかという気がしていた。



シリルは、急いで他の族長達を起こし、これからのことを話し合った。












アオイが連れ去られてから1週間後、黒ウサギ族の族長の下に2つの知らせが届けられた。



ひとつはいい知らせ、もうひとつは悪い知らせだった。



いい知らせは、もし万が一、このクリオラの森に住めなくなった場合には、クリオラの森の南側にあるアリステーゼ王国のエストラ男爵が保護を引き受けてくれたということだった。



エストラ男爵が変わってここ数年は付き合いが途絶えていたが、元はそれなりに付き合いのあったので期待はしていたのだが、期待通りにいって安心といったところだった。



ヒルメリア都市連合国とアリステーゼ王国のどちらに頼むか迷ってはいたのだが、ヒルメリア都市連合国は、基本的に商人の国のため、自らに利益のないことには消極的なのでアリステーゼ王国の方に頼んだのだ。



話し合いに行った者の意見では、エストラ男爵はかなりお人好しな人物だったらしい。



特にこちらに見返りを求めることなく、すぐにでもエストに逃げて来てくださいと言ってくれたらしい。



何故、我ら獣人にそのように言ってくれるのかという問いに、同じ人間ではないですかと即答したと言うのも好印象だった。



しかも、我らが住むための家も見せてくれたという。この森の中の家とは違い、魔石によるインフラも完備されており、かなりいい物件だった。



中には、今すぐエストに移りたいという者までいたそうだ。



そこまでされると、逆に何か下心があるのではないかと疑ってしまいそうになるが、その交渉について行った黒ウサギ族の者は、「それはないと思いますよ。」と断言した。



「何故、そこまで言い切れるのか?」と言う問いに、「エストラ男爵に会えば分かります。」と言った。その表情は思い出し笑いをしているようだった。



実際は、住民が減って家が余っているエストと新たに住む場所の欲しい獣人達は、お互いにまさに求めるもの同士なのだが、それを知らない獣人達にはエストラ男爵がただいい人に見えただろう。



「我々は、900人近くいるのだが、それだけの人数すべてに家が行き渡るのか?最悪、ひとつの家に大人数で住めばいいが。」



「大丈夫です。それどころか、一人一軒好きな家を選び放題です。」



「んっ?それはおかしくないか?」



「何がですか?いいことではないですか。」



黒ウサギ族族長シリルにしてみれば、明らかにおかしいと思うのだが、交渉について行った黒ウサギ族はそんなことはまったく考えなかったらしい。



やはり、自分が交渉についていくべきだったと後悔したが、今、シリルは獅子族の方を対応しているので黒ウサギ族の集落を離れられなかったのだ。



悪い知らせというのは、獅子族を探していた黒ウサギ族が、獅子族が隠れている場所を見つけたということと、思いとどまるようにとの獅子族との交渉は失敗したということだった。



このクリオラの森は広大なため、隠れた獅子族を探すのにこれほど時間が掛かってしまったのだ。



「やはりもう戦いはさけられぬか・・・。」



シリルは、他の黒ウサギ族にエストラ男爵領方面への移動と獅子族を除く各部族にこの知らせを伝達するように命令した。



「それで、獅子族は見張っているのだろうな。」



「はい。見張っております。」



「それでは、私が行こう。トーレにもついて来る様に連絡してくれ。」



「わかりました。」



命令を受けた黒ウサギ族の男は、急いで出て行った。



シリルは、腰に差したナイフを抜いて刃の状態を確かめる。



長い間使っていなかったナイフだが、手入れを怠ったことはないので状態は悪くなかった。



「再び、使うことになるとはな。」



シリルは最悪の展開も覚悟して、覚悟を決めていた。






トーレがシリルの元に来て、すぐに黒ウサギ族の集落を出たのだが遅かったらしい。



探し出した獅子族の隠れ家がもぬけの殻で、すでに精霊との戦いに出発した後だった。



シリル達への連絡のために残っていた黒ウサギ族の男に獅子族の出て行った方向を聞き、急いで追いかけた。



しかし、シリルが獅子族に追いついた時は時すでに遅しだった。



クリオラの森の中を北南に走っている街道の上ではすでに精霊と獅子族の戦いが始まっていた。


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