75 『アオイ』 意見違いをしている者が、お酒を飲んで和解をしようとすると結局お酒の席で意見の違いから言い合いになってさらに仲が悪くなるという現象についての考察。
今回の会議の目的は、唯一来ていない獅子族の族長に関することだった。
「狼族の族長ガジュよ。獅子族族長ギ・ガ・ゾルドがついに精霊と戦うことを決めたぞ。」
「それは、本当か、ねずみ族族長トリスよ。」
「ああ、我らに仲間の無念を共に晴らさぬかと打診があった。」
ねずみ族の族長トリスは、真剣な表情でガジュを見ていた。
「我らにも打診があったぞ。」
ガジュは発言した猫族の族長を見た。
「当然、断ったのだろ?」
ねずみ族と猫族の族長は、共に頷いた。
「獅子族の族長にも困ったものだ。」
ガジュはため息をついた。獅子族の族長はこの地に来て日が浅いため、事の重大さがわかっていないように思えた。
精霊を攻撃してこれ以上怒らせても、この地に住まうことは出来なくなるし、もし、万が一倒せたとしても、精霊のいなくなった土地はいずれ衰退するのは今までの歴史から分かっている事実なのだ。
そうなると、いずれこのクリオラの森にも住めなくなってしまう。現状を維持するのが最良なのだ。例え、仲間に犠牲が出たとしても。
「我々で獅子族の族長を撃つか?」
黒ウサギ族長シリルの言葉に一同の視線が集まった。
「それは無理ではないか?ああ見えても、奴は『祝福者』だぞ?」
白ウサギ族長の言葉に「確かに。」という声が上がる。
「あの・・・すいません・・・『祝福者』・・・とは・・・何・・・ですか・・・です?」
発言したアオイに黒ウサギ族の族長シリルが、祝福者の説明をした。
「・・・それは・・・興味深い・・・現象・・・です。」
シリルの目には、アオイの目が一瞬光ったように見えた。
シリルは嫌な予感がしたが、幸い獅子族の族長は出席していなかったので、アオイには何もできないと安心した。
「邪魔するぜ。」
「何でお前がここにいる?」
黒ウサギ族の族長シリルは、驚いた声を上げた。間が悪いとはこういうことを言うのだろうと苦笑いがこみ上げて来るのを必死で抑えた。
シリルの目の前には、獅子族族長のギ・ガ・ゾルドが立っていた。
「それは、お前らに悪かったと思ってな。」
獅子族族長ギ・ガ・ゾルドの入ってきたドアから別の獅子族が、お酒の樽を抱えて入ってきた。
「詫びに酒を持ってきた。これを飲んで許してもらえないか?」
「・・・それは、精霊とは戦わないと思っていいのか?」
「ああ、戦わない。」
獅子族族長と狼族族長の視線が交わるが、獅子族族長が先に視線を逸らした。
「そうか・・・わかってくれたのだな。」
「ああ、そう思ってくれてかまわない。大量に酒を持ってきたから、今日は、これから酒盛りでもしようではないか。」
獅子族の族長の言葉に他の族長達が安心した表情になった。
「それはいいことだ。お前達、宴の準備をしろ。」
黒ウサギ族族長のシリルの言葉で、中の警備についていた黒ウサギ族達が、外に出て行った。
「さあ、クリオラの森の仲間達、今日は死ぬほど飲もうぞ。」
獅子族族長は、機嫌よく部屋を出て行き、他の族長達もそれに従って部屋を出て行った。




