74 『アオイ』 実験大好き乙女アオイの「健康体は実験体。」夜9時より放映中。
アオイが黒ウサギ族の集落に来てから1ヵ月が経過していた。
黒ウサギ族の中でアオイの護衛を任されたトーレが、アオイに割り当てられた家に入ると中に大量のポーションなどのアイテムが所狭しとガラス瓶に入った状態で置かれていた。
ガラス瓶は、ポーションと同じくアオイが砂から魔法で作り出した物だった。
「また、溜まってきたな。」
トーレは、呆れた表情でアイテムの山を見た。
アオイは、そんなトーレの様子など我関せずでいろいろと作り続けていた。
別の黒ウサギ族の男が、アオイの家に次々にポーションの元になる薬草やガラス瓶の元になる砂、その他のアイテムに使うらしいキノコ類を運び込んできている。
アオイは寝ている時以外は、ほぼ何かを作り続けているのだ。
「おい、アオイ。もう、それくらいでいいんじゃないか?」
トーレは、この1ヵ月何度もアオイに言っていたが、その度に、「これは・・・実験・・・です。」と言って手を止めようとはしなかった。
「アオイ、今日の予定は覚えているか?」
「・・・予定・・・ですか?」
アオイは、まったくトーレの方を見向きもしない。
最初は、なんて失礼な奴だと思ったが、今では、これがアオイの普通なのだと諦めている。
「そうだ。予定だ。今日は、1ヵ月ぶりの部族会議の日だ。お前にも出てもらうと前に言っておいただろ?」
「部族会議・・・出ないと・・・駄目・・・ですか?」
「ああ、できれば出席してくれ。部族長達は、お前に一度会っておきたいらしい。お前のポーションで多くの獣人達が助かったのでお礼を言いたいらしい。」
「・・・できれば・・・ですか?」
「絶対だ。」
「・・・わかり・・・ました。・・・ちなみに・・・部族長で・・・実験・・・しても・・・。」
「駄目だ。」
アオイのお陰でこの1ヵ月助かったことも多かったのだが、唯一困ったことが、このアオイの実験癖だった。
アオイは怪我人は率先して傷を治してくれるのだが、健康体の人間は率先して実験体にするのだ。
筋力強化の薬の実験などはいいのだが、笑い薬や泣き薬、しまいには惚れ薬を作りそこら辺の黒ウサギ族を実験体にするのだ。
これには黒ウサギ族の族長であるシリルも頭を抱えていたが、回復ポーションをタダで作ってもらっている手前、アオイに強く言えないでいた。
ちなみに、惚れ薬の最初の犠牲者が黒ウサギ族の族長であるシリルだった。
この惚れ薬というのは、いわゆる媚薬の一種のようで、興奮剤と言った方がいいかもしれない。
シリルが、ちょっとした世間話でアオイに夫との間に子供が出来ないという話をしたばかりにその夜の夕食にアオイによって族長夫婦の食事に惚れ薬が盛られてしまったのだ。
これは、夫婦だったから冗談で済んだが、もし、夫婦でなければ大問題になることろだった。
なぜ、アオイの仕業と分かったかと言えば、翌朝、アオイが直接黒ウサギ族族長夫婦に結果を尋ねたからだった。
それ以来、アオイの作ったアイテムは、厳重に管理されることになっているのだが、隙を見ては実験しているようだった。
「・・・ここは・・・天国・・・です。」
アオイが言ったことがあった。
何故かトーレが尋ねると、このクリオラの森には多くの植物が生えており新しい発見が多くあるということだった。
アオイは、側にあるキノコをひとつ取り、ガブリと齧った。
「おい、キノコは直接食べると危ないぞ。」
「大丈夫・・・です。・・・このキノコは、・・・生で食べたら・・・眠気覚ましの効果のある・・・キノコというのは、・・・すでに門番さんで・・・実験済み・・・です。」
「・・・実験したのか、門番で?」
アオイは悪気など微塵も見せずに頷いた。
「まずくないのか?」
「まずい・・・です。・・・門番さん・・・最初・・・吐いて・・・ました・・・です。」
トーレは実験体にされた門番を気の毒に思ったが、それを知っていながら躊躇なくキノコを食べることのできるアオイを凄いとも思った。
アオイは、椅子から立ち上がると、トーレに背中向きのまま「はい。」と言った。
これは、アオイがトーレにお姫様抱っこで運んでもらいたい時にやるポーズだった。
トーレは、行きたくないとアオイに駄々をこねられても困るので、仕方なくアオイをお姫様抱っこで族長会議の場所までアオイを運んだ。
族長会議の場には、すでに狼族、黒ウサギ族、白ウサギ族、ねずみ族、猫族の族長が揃っていた。残りは獅子族の族長だけだった。
トーレは、アオイを空いた席の側で下ろすが、アオイは目の前の席に座らずにねずみ族の族長の前まで歩いていった。
「何だ、ハーフエルフの娘よ。」
「体・・・大きく・・・したくない・・・ですか・・・です。」
「体を大きくすることが出来るのか?」
「・・・30%・・・の確率で・・・です。」
「申し訳ないが断らせてもらおう。」
「残念・・・です。」
トーレは頭を抱えていたが、そんなトーレの様子には気付く様子もなく、アオイは空いた席に座った。




