第1話 はじまりのとき
運命は変えられる。
なにもかも運命だと決めつけないでー…
「ああ〜!! 転校初日から寝坊するなんて…!」
バタバタと慌ただしく学校へ向かうピンク色とアホ毛が特徴の女子高生が一人。
全速力で学校へと走っていく。
信号が赤なのも気付かずにそのまま走り続けると、朝から盛大にトラックにクラクションを鳴らされた。
「あ…、危なかったです…」
真面目な彼女は普段から敬語が口癖だ。
間一髪で轢かれそうになったところをクラクションのおかげで踏みとどまる事が出来、事故にならずに済んだ。
しかし、少しでも気付くのが遅ければトラックと衝突し、今頃あの世行きだっただろう。
考えただけでも恐ろしく脈拍が速まりドキドキしながらも、気を取り直し無我夢中で彼女は学校へと向かった。
キーンコーンカーンコーン…
朝のホームルームが始まるチャイムが鳴り響く。
光原高校の職員室では、朝から教師達が頭を悩ませていた。
「教頭先生、今日から転校生が来るはずなのですがまだ来ていないのですよ」
「親御さんに連絡は?」
「それが…」
教師が話していると、ガラッと勢いよく職員室のドアが開いた。
「遅れてすみません! 転校生の天空優美です!」
優美は息を切らしながら必死に謝罪をする。
「転校初日から遅刻とは良い度胸だな、天空?」
笑いながら冗談を言う担任とは裏腹に、優美は冷や汗をかきながらも早速教室へと案内された。
転校初日。
学校生活に馴染めるだろうか?
友達は出来るだろうか?
不安と期待を抱きながらあれやこれやと考えながら担任の後を付いていくと、あっという間に自身のクラスのドアの前に到着した。
担任がドアを開ければ、一気に生徒から視線が向けられる。
「えー、転校生を紹介する。天空、自己紹介をよろしく」
「は、はい!」
緊張しながらも優美は顔を上げしっかりと自己紹介を始めた。
「天空優美と言います。緊張しておりますが、これからの学校生活、仲良くして下さると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!」
深々と頭を下げると、クラスメイトから温かい拍手が送られた。
ホッとした優美だが、その中で一人だけ無愛想に拍手もせずジーッと優美を見つめる茶髪で青い瞳の男子生徒と目があう。
「今日から天空はこのクラスの仲間だ、色々教えたり仲良くするように。えー、席は坂上の隣だ」
担任に指を指された先にはその無愛想な男子生徒の姿があった。
「えっと…、よろしくお願いします」
恐る恐る男子生徒に声をかけたがなんの返答もない。
しかし何故かジーッと優美を見つめている。
その視線がなんとも威圧感があった。
(ひええ!!! わ、私何か失礼なことをしたのでしょうか、視線が怖いです…)
ついつい心の声が出そうになる。
「何か困ったことがあったら隣の坂上に聞くように」
(先生…、とても聞ける状況ではありません)
「おい」
「はいぃぃっ!?」
優美が心の中で葛藤していると、不意に彼に声をかけられ驚きと共にビクッと飛び跳ねた。
「昼休み、屋上に来い」
「へ…?」
初対面というのにこのやりとり。
そして、いきなりの呼び出し。
(も、もしやこれは漫画でよくある不良に絡まれるシーンでしょうか? いやいや、でも坂上くんは不良のような雰囲気は無いですし…)
自分の心と対話しながら上の空で授業を受けていると、あっという間に昼休みになってしまった。
屋上へ来い、と言われたものの、転校初日でありそこまでの道のりなど全く分からない。
優美は迷いながらキョロキョロと歩いていると、赤髪のパーマをかけたロングヘアの女子生徒とぶつかってしまった。
「わっ!」
「きゃっ! ご、ごめんなさい! お怪我は…?」
見上げると、その女子生徒はかなりの美人でモデル体型のようなプロポーションであり優美はついつい見とれてしまった。
しかし、さきほどの坂上という男子生徒同様、優美はその美人な女子生徒にもジーッと見つめられている。
「あれ? あなた…」
「あの、えっと…?」
「ううん、なんでもないわ。ごめんね、見かけない顔だったからつい。それじゃ、また」
ニコっと笑顔を返してその女子生徒は行ってしまった。
(何だったのでしょう。私、顔に何かついてるのでしょうか…? それにしても、かなりの美人さんでした)
ボーッと女子生徒の背中を見届けていると、ハッとあの威圧感ある坂上という男子生徒の視線を思い出し、優美は急いで屋上へと向かった。




