第63話 提案
「――本題に入りましょう」
使者の男が、静かに言った。
応接室。
最低限の装飾。
だが、無駄がない。
「……」
向かいには、レインたち。
「本日は」
男が続ける。
「王国としての正式な意思を伝えに来ました」
「はい」
レインはいつも通り頷く。
「……」
カレンは腕を組み、黙っている。
リリアは静かに座る。
ミアは少しだけ緊張している。
「結論から申し上げます」
一拍。
「我々は、あなた方と“協力関係”を結びたい」
沈黙。
「協力関係、ですか」
リリアが確認する。
「はい」
「具体的には?」
「人的交流」
「物資の流通」
「軍事的支援」
「……」
カレンの眉が、わずかに動く。
「要するに」
男は続ける。
「相互に利益をもたらす関係です」
「……」
静かな空気。
レインが聞く。
「それは、いいことだと思いますけど」
「ええ」
男は頷く。
「我々もそう考えています」
「……」
カレンは、何も言わない。
ただ、見ている。
「……条件は?」
リリアが問う。
「基本的には、自由です」
「……基本的には?」
「はい」
男はわずかに言葉を選ぶ。
「王国の安全保障に関わる場合」
「一定の協力をお願いすることになります」
「……」
その瞬間。
カレンの視線が鋭くなる。
「それ」
静かに口を開く。
「“お願い”って言い方してるけど」
「実質、強制よね」
空気が、一瞬で張る。
「……」
男はカレンを見る。
「そのように受け取られる可能性はあります」
「可能性じゃないでしょ」
「そういう構造よ」
「……」
リリアは静かに目を伏せる。
ミアは少しだけ不安そうにする。
「つまり」
カレンが続ける。
「囲い込みね」
はっきりと言い切る。
沈黙。
「……否定はしません」
男は静かに答えた。
「それが、王国として最も合理的な判断です」
「でしょうね」
カレンは小さく笑う。
「これだけの戦力と経済」
「放置するわけないわよね」
「はい」
「……」
空気が、重くなる。
その中で。
レインが、口を開く。
「でも」
全員の視線が集まる。
「嫌なら、断ってもいいんですよね?」
「……」
男は、一瞬だけ止まり――
「形式上は、可能です」
「……」
「ですが」
「推奨はできません」
「理由は?」
「関係が悪化するためです」
「……なるほど」
レインは頷く。
「分かりやすいですね」
「……」
カレンが小さく息を吐く。
「どうするのよ」
視線が、集まる。
レインへ。
「そうですね」
少し考えて――
「条件次第ですかね」
「……」
カレンが笑う。
「いいわね」
「交渉する気あるじゃない」
「はい」
レインはいつも通りだった。
「せっかくなので」
「ちゃんと決めましょう」
男の目が、わずかに細まる。
「……承知しました」
空気が変わる。
“提案”から、“交渉”へ。




