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プロローグ

昔、神はこの世界に「原因不明の伝染病」を生みだした。


神が創造したものは、人や動物、植物、人に必要なもの、世界に必要なもの、繁栄に必要なもの、空気、――そして、空気の中に含まれる『エーティア』と呼ばれる特殊な成分。

後に魔力の源であると発見されるそれは、膨大な年月とともに、使われることなく世界に留まり、濃くなり、淀み続け、人類には毒を、世界の魔物たちには力を与え続けた。

つまりは長い間、人類は「原因不明の伝染病」に多大な被害を被っていたのである。


そんなある日、一種類の鉱石が発見される。

その鉱石は、人が摂取し続けると命を脅かすこととなるエーティアを「反発」する性質を持っていた。

鉱石は『フィア』と命名され、人々は鉱石に加工を施したアクセサリーのようなもの――『スフィア』を身に着けて生活を始めた。

街や人々を守るために魔法を必要とする皇帝騎士の軍ならまだしも、人々が日常生活をする分には、エーティアは必要とされることはなかったからだ。


そうして人類はスフィアを身に着け、必要な時だけスフィアを外すことで、「原因不明の伝染病」は原因の解明と解決を迎えた。

やがて、スフィアへ特殊な技巧を凝らすことで、普段はフィアを反発し、魔法や魔術を使用するときだけにエーティアを取り込むことができる術式が完成する。


それらが一般的に普及してから数年後、――帝都フォルベーヌ。


繁栄都市とも呼ばれるほどにこの世界で一番栄え、昼夜問わず様々な人で賑わう大都市。

世界の半分を治めている皇族が住まうこの場所で、青年は何でも屋を営んでいた。

物が少なく、簡素な作りの室内にある一画。

工具のような物が乱雑に散らばった机の前に、彼は座っていた。

彼の手には、精巧な文様が掘られた細身なブレスレット。

粉っぽさをおびた鈍い銀色を刷毛で数回、払い落とすように撫でる。

するとそれは瞬く間に輝きを放ちはじめ、青年は目を細めながら、机のそばに置いてあったランタン型ライトへブレスレットをかざして――ようやく、満足そうにうなずいた。


「こんなもんかな」


ブレスレットから反射した光が、色素の薄い茶髪をきらめかせる。

シャルル・アレクディロス。

それが、齢19歳、一人暮らし、帝都フォルベーヌで何でも屋を営む青年の名前だった。


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