海洋プラスチックごみの回収
翌朝、タクシーでライン都市に戻った私は、いったん亜香里と別れ、自分の部屋に戻って雑務を片付けることにした。
無料の掃除サービスに連絡し、部屋の掃除の予約をして、たまってきた使用済み下着4セットを専用のネットにくるんで個別洗濯に出すことにした。
洗濯の引き受け場は円輪型施設内にあった。
下着1セットを30円で洗って干してくれる。
120円を支払って、洗濯が完了する予想時刻を聞いてから店を後にした。
これまでのスポーツ・アルバイトで3万円近く稼いでいたが、冬物のコート以外に欲しいものは特になかったので、そのまま貯蓄を進めていた。
靴は普通のスニーカーを履いている。
靴の所持は一人につき3足までだったが、今のところ新たに欲しい靴は見当たらなかった
午前11時からは北山先生の診察を受けた。
「どうですか、体調の方は?
もうそろそろ、この都市に慣れてきましたか?」
「はい。だいぶ慣れました」
診察というよりはただの世間話だった。
「記憶のほうはどうですか? 何か思い出す気配とかは……」
「まったくありません」
「そうですか……。まあ、仕方がないですねえ。
これ以上薬を強くするのは嫌な気もしますし……」
「はい、そうですね。
でも、記憶がなくても、今のところとくには問題はありません。
一人ですけど、友達もできました」
「そうですか、それは良かったですね」
北山先生はそう言っていつものようににっこりとほほ笑むのだった。
「はい。ありがとうございます」
診察は終了した。
約2分だった。
食堂に移動して昼食をとる。
メニューは塩むすび2個と冷製のコーンスープだった。
おいしかった。
ピアノの生演奏も『トルコ行進曲』のアレンジと『運命』の同じくアレンジ曲でなかなか良かった。
食後にはストレッチ系のスポーツアルバイトを自室で2時間ほどやってのけた。
ストレッチ系は好き嫌いが激しい枠で、参加人数が比較的少ないためか単価が良く、2時間ちょいで3500円を稼ぐことができた。
午後3時から再び亜香里と合流した。
私のための仕事探しに付き合ってくれるとのことだった。
円輪施設内にあるハローワーク的な部署、仕事斡旋所には様々な仕事があった。
外の世界と変わらない運送、清掃、介護、警備、調理などの仕事のほかにも、この都市ならではの職種もたくさんある様子だった。
自然死した養殖魚の回収業務、
牛の世話、
豚の世話、
鶏の卵の回収、
山羊の誘導、
おしぼり配達、
手押し車式トイレの回収業務、
音楽演奏、
ヘッドスパ施術士、
発電機の点検業務、
レンタル自転車店の店員、etc……
「ふうん……。
外の世界の雇用もあっせんしていますね。
これなんて、うちの大学にもありましたよ」
亜香里はそう言って電子掲示板を指さした。
そこには海洋プラスチックごみの回収のためのクルーの募集が載せられていた。
「面白そうな仕事ね」
これにしようかな?
私は海が好きだし、その海を綺麗にする仕事なら遣り甲斐も感じられるはず。
「個室の船室が無料で借りられて、給料は手取りで25万円か。なかなか良い感じね」
一応、記憶においておくことにした。
「外の世界で働いて、ライン都市に住めたら最高なんですけどね~。
あっという間に1000万円も貯められそうです」
「でも、この船の仕事だと、似たような感じになりそうだけどね」
「あ、たしかに。言えてますね」




