分業の危険性
「そもそも論として、どうして今までこういう未来都市づくりのアイデアがどこからも出されなかったのかしら?」
夜。
夕食のマクドナルドでも、私と亜香里は議論を楽しんでいた。
「うちのリーダー曰く、行き過ぎた分業のせいだ、と。
分業の徹底によって、新しい分野が生み出されすぎたことによる盲目状態。
あまりにも色々な思考対象が細々とあるせいで、けっきょく思考停止に陥ってしまったのだと」
分業の危険性
以前、どこかの本でそんなことが書かれているのを見たことがあるような気がした。
いつ、どこで読んだのかはまったく思い出せなかったが……。
「私も以前、中東やアフリカや東南アジアの近代都市を見て、日本やアメリカとほとんど同じ都市が増えてきているのを目にしたとき、あれっと思ったことがありました。
どれもこれも、似たような街ばかりが増えてきていることに違和感を感じたのです。
ゲームや物語の中だと、都市の在り方はその土地その土地でまったく異なるように描かれるのが常なのにもかかわらず、現実にはそうなっていなかった」
「分業のし過ぎで、誰も全体像を把握できなくなってしまったっていうわけなのね……。
じゃあ、一体全体、ライン型幾何学都市はどうやって生み出されたのかしら?」
「匿名希望の発案者曰く、ほとんど偶然だったそうですよ」
「へえ、偶然であんなものが生み出せるのね……」
ポテトにハンバーグにコーラ。
普通においしい。
でも……
「牧場や河川敷で牛さんや山羊さんを見た後だと、ハンバーグに罪悪感を覚えるわね」
私は自分の歯型の形に切り取られたハンバーグに視線を落としながら思わずそう言っていた。
「あ~~う~~たしかに~」
亜香里も同感のようだった。
「ライン都市内部では、肉類は自然死した家畜やクジラやマグロから調達しているみたい。
これはかなり優れたやり方だと思う」
「そうですね。
ある意味、大豆ミートよりも人道的なのかもしれませんね」
店を出て、夜の繁華街を散歩してみることにした。
ガードレール一本隔てて車が流れていくのが、かなり危険に感じられた。
すぐに慣れたけど。
「私も、このごちゃごちゃした旧型都市の保存には賛成だわ。
何か協力できることがあれば、しますよ?」
私はそう言って笑顔で亜香里の顔を見た。
「今はその気持ちだけで十分です!」
「でもまあ確かに、世界中の都市を全部こんな感じにするのは不可能よね。
特に東京、大阪、横浜、名古屋、福岡みたいな都市は……」
私は夜のビル群を見上げながらそう言った。
「ええ。資源がいくらあっても足りません。
60年で造り替えというのも、色々と資源にロスが出るでしょうし。
まあ、戦争を始めるよりは建設的な営みであると思いますけど。
不景気になったら戦争する形から脱却して、不景気になったら公共投資をして都市を育てるというのが、ここ100年ほどの経済スタイルでしたからね」
「どうして資本主義では好景気と不景気の波があるのかしらね?」
「在庫、通貨の流通量、技術革新などいろいろな要素の複合現象なので、解明することは絶対に不可能かと」
「じゃあやっぱり、いずれ訪れる大恐慌を乗り切るための避難所を設ける意味においても、ライン都市は必要ということなのね……。
でも、エコもあそこまでいくと、ちょっと笑えてくるわね」
「たしかに。それは言えてますね」




