【後日談8】1話 磯の香りの魔獣都市 シャケ
後日談7の猫パは、いったん打ち切りします。
猫パは、続きが書けたら付け足しをする形にします。
後日談8から、話数の数え方を変えます(章ごとに1話、2話……)
正月。朝から、俺は旅行に出かけていた。
雑貨屋クローバーには、留守にする旨を書き残している。
変装は、黒皮のフード付きマントに、ピエロのマスク。まずバレまい。
魔獣都市シャケ(436話参照)。
主に海の水生魔獣の暮らす魔獣都市である。
都市の陸路が2割、8割が水路。
磯の香りが漂う。水路は海水を汲んで入れている。
都市名はシャケであるが、魔獣はシャケを狩る側である。
知能がない、または低い種族の魔獣は、いわゆる人権(魔獣権? 生存権利的なもの)を持たせてくれない。
シャケもとい鮭は魔獣じゃないが。
ま、都市の機能や役割については、今日のところは重要じゃない。
大事なのはそう、福袋!
福袋文化は魔獣都市マタタビから広まり、今ではここ魔獣都市シャケでも行われている。
見よ、水路を半分埋め尽くす大量の出店の浮船と、そこに積まれたおいしそうなお魚!!
ここの福袋は、中身を決められるタイプのものである。
ランダムじゃないから福袋じゃない? 原理主義者の主張は知らん。
いざ買い物だ!
俺は自前で購入した小舟を四次元空間から取り出し、水路に浮かべ、お目当ての店の前につける。
「にゃー(オークマグロの福袋を3つ)」
「オークマグロの福袋を3つ」
シャチの顔をしたマーマンぽい魔獣に話しかける。
俺のボイスは、首輪の自動翻訳システムによりリアルタイムで翻訳される。
見よ、この隙のない準備を。
「キュイ(あいよ、肉球魔王様にオークマグロの福袋を3つですね)」
「にゃー(なぜ俺だとバレた!?)」
「キュウ(いや、その声を聴いたことある魔獣なら、分からない方がどうかしてますが……)」
そうか。次からボイスチェンジャーを使うことにしよう。
「キュッ(では、どうぞ)」
「にゃー(ん? いくらだ。金を払ってないが)」
「キュワッ(留学で息子がお世話になりましたからね)」
「にゃー(そうか。だが、それはそれ。俺の気が済まないからお金は払う)」
会計は3万マタタビだった。電子支払い未対応なので、硬貨による支払いだ。
商品を四次元空間にしまい込み、次の店へGO!
◇ ◇ ◇ ◇
途中、俺のことを聞きつけた魔獣都市マタタビの魔獣幹部の何人……何体かが俺を探しに来たが、屋台の商品に引き寄せられ、俺のことは忘れたようだった。
俺もお忍びを継続すべく、変装道具を変更。
人食いオオナマズ(死体)の口の中に入り、錬金術で作った鎖を体中に巻き付けて、それを操る形で着ぐるみのように死体を動かしている。
ボイスチェンジャーも使うことにしたので、俺の声だとはバレないだろう。
「アー!!(いらっしゃい肉球魔王様)」
「にゃー(なぜバレる)」
ビーバーっぽい魔獣に、速攻で見抜かれた。
「アー!!(いえ、そんな見たこともない着ぐるみで変なことをやっている、しかも都市の警察がノータッチのVIPと、これだけ情報が集まれば分かりますよ)」
「にゃー(肝心の俺を探している連中は、分かってないらしいが)」
「アー!!(そりゃ彼らは部外者ですし)」
まあいいか。俺はゆっくり旅行が出来さえすればいいのだ。
お土産を追加購入、福袋も購入だ。
3時間後、大量の福袋とお土産を購入し、俺はホクホク顔で魔獣都市マタタビに帰るのだった。
って、しまった。昼食も向こうで食べればよかったな。




