616.【後日談7】猫パ その19
・闇ギルドの『猫耳天国』リーダー、ネコショウ視点
2種目目のゲームは、ビンゴゲーム。
聞いたことの無いゲームではあったものの、蓋を開けてみれば、ただの運試しゲーム。
成果に、実力もチームワークも関係無い。実にくだらない。
と思っていたが、肉球魔王様が賞品を選ぶ際、このゲームの真の恐ろしさに気づいた。
このゲームは、班のチームワークを破壊しかねない。
ネコ科魔獣のほとんどはその日暮らし。
しかも、なんとか食べていけるだけ、という者がほとんど。
魔獣都市マタタビのように、都市の住人全員に食料を支給している所が例外なのだ。
そういう食事事情を考慮すれば、賞品として選ぶべきは、食べ物一択。
他の嗜好品は、余裕がある奴しか選ばない。
賞品の食べ物は、1年分のおやつなど、大したものではない。
だがそれは、ギルドリーダーをしていて収入に困っていない俺の価値観。
他の者にとっては、食べ物を手に入れられる時に手に入れない事は、死活問題である。
つまりどういうことかというと。
「ニャワ(選ぶ賞品は『他の班全体から、10ポイントずつ貰う』と書かれたチケット、だ)」
「にゃ!(おーっと! チームお風呂、ここでチケットを選んだ~!)」
「みー(ふざけんにゃ~!!)」
「まおう(非道や! 人の道から外れてんで!)」
「う゛う゛ぅ!!(怒ってるぞ! 私の前から消えて! かかって来い! 喧嘩だ!)」
リーダーが、食べ物以外の賞品(それもネコ科魔獣の興味をひかない)を選んだ場合、チーム内のネコ科魔獣にメチャクチャ恨まれる。
チームお風呂のメンバーの怒りの鳴き声が聞こえる。
チームお風呂はおそらく、3種目目のゲームでは本領発揮出来ないだろう。
それだけではない。今後の人間関係、じゃなくてニャン間関係も悪くなるだろう。
ケンイチはこの国の大臣なのだが、後で色んな陰口を叩かれて仕事に影響を与えることだろう。
ちなみに他の班が選んだ賞品は補充されているようなので、もう一度缶詰めを選ぶ事も出来る。
先ほど俺の班がビンゴになった時、俺は一応、班の皆に希望を聞いてから、缶詰めを選んだ。
この最適解とも言える行動を、初手でサラリと行った肉球魔王様は、流石と言わざるを得ない。
「にゃ!(それじゃ、この辺でビンゴゲームは終了~!)」
先ほどの1種目目のゲームの下位4チームが2度、それ以外のチームは1度だけビンゴとなった。
結果に何か作為的なものを感じる。きっと運営側は点数調整をしたかったのだろう。
「にゃ!(ビンゴゲームの結果はこんな感じだよ!)」
1位:チームキャットタワー(リーダー:ドラゲニャイ)365
2位:チームちゅるるーん(リーダー:猫のお巡りさん)341
3位:チーム爪とぎ(リーダー:肉球魔王様)335
3位:チーム鳥の羽(リーダー:ネコショウ)335
3位:チームお風呂(リーダー:ケンイチ)335
6位:チームがちゃがちゃボール(リーダー:鬼丸)332
7位:チーム段ボール箱(リーダー:キメラ)305
8位:チーム猫砂(リーダー:ネクロミャンサー)291
9位:チーム猫じゃらし(リーダー:Dr.ギフト)284
10位:チームベッド(リーダー:若ニャン)270
「にゃ!(さらに、チームお風呂は、『他の班全体から、10ポイントずつ貰う』と書かれたチケットが、自動的に使われるよ!)」
1位:チームお風呂(リーダー:ケンイチ)425
2位:チームキャットタワー(リーダー:ドラゲニャイ)355
3位:チームちゅるるーん(リーダー:猫のお巡りさん)331
4位:チーム爪とぎ(リーダー:肉球魔王様)325
4位:チーム鳥の羽(リーダー:ネコショウ)325
6位:チームがちゃがちゃボール(リーダー:鬼丸)322
7位:チーム段ボール箱(リーダー:キメラ)295
8位:チーム猫砂(リーダー:ネクロミャンサー)281
9位:チーム猫じゃらし(リーダー:Dr.ギフト)274
10位:チームベッド(リーダー:若ニャン)260
ケンイチの班が頭一つ抜けて1位。
だが、班員に恨み言を言われ続けている。
「ニャワワ(賞品受け取る前に、後で缶詰めを俺が自腹で1年分、班の皆に買うから許してくれって、言ったじゃんか)」
「甘いなケンイチ。後で払う、というのは借金を踏み倒す者の常套句だ。
この場で現物を渡さない限り、彼らは納得しないだろう」
「みー(缶詰め寄越せにゃ~!)」
「まおうにゃんま(この人でなし! なんちゅう人間や!)」
「ウ゛ゴウ゛ゴウ゛ゴール(今から喧嘩だ!)」
「ワーゥ(かかって来い!)」
そしてチームお風呂のネコ科魔獣達が喧嘩を始めた。
言わんこっちゃない。
他のネコ科魔獣達は、賞品の缶詰めやおやつの福袋などを四次元空間に入れ、ホクホク顔である。
「にゃ!(それでは、3種目目の発表だよ! 3種目目は、バトルロイヤル相撲だよ!
班対抗だけど、全員リングの中で戦うよ! リングの外に出たら残機減少! 残機が0になったら失格!
スキルや浮遊は不可! ダンジョンの効果で怪我しないようになっているから、全力で戦っても大丈夫だよ!
勝ち残った班には200ポイント!)」
つまり実質、この3種目目で勝てば優勝である。
しかも2位以降の順位は変動なし。
「にゃー(それだと俺かケンイチ君の独擅場じゃないか?)」
「にゃ!(そこらへんは、こっちで適当にハンデ付けて邪魔するから大丈夫!
それじゃ5分後スタートだから、作戦会議は綿密にね~!)」
「にゃー(ハンデの内容を教えてくれなきゃ、作戦会議が出来ないぞ)」
「にゃ!(そこも含めてのハンデだから教えないよ!)」
肉球魔王様はハンデを付けられるようだ。
おそらく俺も、ハンデをつけられると想定した方がいいだろう。
だがチャンスだ。
ゲームに乗じて、あの憎きネクロミャンサーをボコボコにする事が出来るかもしれない。
何者かに命を奪われ、死後はネクロミャンサーに死体を酷使されているベロとリックス。
闇ギルドの『猫耳天国』の元幹部の2体。
俺やギルド員にとって、家族以上の存在の2体。
死体を取り返して、安らかに眠らせてやりたい。
この作戦会議というのは、どうやって攻めるという作戦のほかに、他の班のメンバーの弱点を、いかに班員と情報共有出来るか、が重要と言える。
班員には悪いが、ここは班の勝利よりも、俺の復讐重視で作戦を立てさせてもらおう。
「グァウル(俺の考えている戦法はこうだ)」
俺は班員と作戦会議を始めるのだった。




