612.【後日談7】猫の日の魔獣都市マタタビ
本編の流れを無視して日常回を挟むこの作者である。
昼の魔獣都市マタタビ、雑貨屋クローバーのカウンターにて。
俺は首輪型PCでネットサーフィン中だ。
今日の地球の日本の日時は2月22日らしい。
つまり1年に1度の特別な日。
というわけではないが、ネット上には猫がいっぱい。
「にゃー(今日は猫の日だ)」
このネットの大海原の、猫画像や猫動画、猫グッズや猫小説、猫イラストといった猫創作物を入手するのだ。
おっと、猫漫画も忘れちゃいけないな。
ポチポチ、購入、ダウンロード、購入、購入。
今日の俺の財布の紐は、ゆるゆるだぜ。
もちろん無料の創作物も、喜んで見させてもらう。
時間がいくらあっても足りないな。
「猫さんは猫なのに、猫の写った物を購入するのって、変じゃないですか?」
暇そうにしているヨツバが話しかけてきた。
「にゃー(人間も、人間が写った写真集や、人間が主人公の小説を買うだろ。それと一緒だぞ)」
「……一緒なんですかね?」
ヨツバは納得していない顔をしているが、俺は忙しいので相手してやれない。
ふーむ、猫のゲームもあるのか。
後で命君にやり方を聞いてみるとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
ここは中央広場。
俺は丸くなり、猫動画を見つつまったりしている。
雑貨屋での俺の独り言で、今日は猫の日だ、と呟いていたのを、ネコ科魔獣の誰かが聞いて広めたらしい。
都市のいたるところで「みゃん(今日は猫の日! 僕らが主役の日!)」という声が聞かれる。
さらに大鍋商会が便乗して、ネコ科魔獣関連商品(主にオヤツやオモチャ)を今日限定で割引販売し始める。
それに対抗する形で、都市の各店舗が今日限定の割引を開始する。
まるでお祭りが始まったかのように、皆、買い物を楽しむ。
だがネコ科魔獣は宵越しの銭は持たない主義の奴が多い。
あらかじめ予告されていたならともかく、急に始まったこのお祭り騒ぎ。
手持ちのお金が心もとなくて、買い物し足りないよー、というネコ科魔獣が多数。
そんなこんなで、昼間だというのに魔獣幹部達が緊急で会合を開くこととなった。
「んなー(それで、今日限定で緊急で給付金を渡すか否かという会議ですな)」
「うんみゅう(必要無い。お金の無駄遣い)」
「ガゥ!(そうかな? 都市が活性化して良いと思うな!)」
「アァー……微……妙」
「活性化してもだねぇ」
ゾンビキャットが、費用対効果を推計したデータを宙に表示する。
10ばら撒いて2返って来るかどうか、といった感じらしい。
この魔獣都市マタタビでは、店がいくら儲けようと、税金が一切かからないからな。
都市の収入源は、錬金術工房が担っている。
なので景気が良くなったからといって、それが都市の収入に直結するとは限らない。
「んなう(肉球魔王様はどう考えますかな?)」
「にゃー(やっぱり短足はチャームポイントだと思うぞ)」
俺は猫動画に癒されていた。
マンチカン可愛い。
ただ、遺伝的に短命になりやすいのが困るよな。
俺だったら、飼うのを躊躇してしまうだろう。
「うみゅう(猫動画……コンテンツを届ける……そうか、現金支給じゃなくて現物支給の形にすればいい)」
「ガォ(どういうこと?)」
「つまりお金じゃなくて物をばら撒く、ってコトぉ?」
「んなー(なるほど! さすが肉球魔王様!
都市で確保しているオヤツで、古くなった物を配ることにしましょうぞ)」
何だがよく分からんが、方針が決まったらしい。
物を配るのはいいが、買い物し足りないという需要に答えてないような気がするけどな?
「にゃー(そういうことなら、雑貨屋クローバーの売れ残り在庫も配ってしまおう)」
こうして急きょ、ネコ科魔獣への現物支給が行われた。
さすがに都市で行っている食料給付のように、全員に一律に同じ物を配るのは出来ない。
ネコ科魔獣達全員に、色んな物が配られた。
その結果どうなったかというと。
物々交換をして、自分の欲しい物を手に入れる者。
貰った要らない物を売って、自分の欲しい物を買う者。
欲しい物を貰ったから満足した者。
各自、貰った物を活用し、猫の日をエンジョイしたのだった。
これ以降、猫の日は、お祭り騒ぎプラス何か貰える日として、魔獣都市マタタビの恒例行事となるのだった。
クリスマスかよ。サンタさんからのプレゼントじゃないんだが。




