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パル  作者: 山葵
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029 クマヤコルさんとお礼



 ギルドを出るともうお昼だったので近くの屋台でピタパンのようなものを買って食べた。ノンちゃんとシホちゃんにもお裾分け。シホちゃんも普通の食事を食べるようで助かった。「獲れたての生き物でなきゃですわ」とか言われたらどうしようかと思ったよ。

 ロボちゃんはいつもの自前リグドン弁当。ほお袋と言う名の○次元ポケットにあといくつ入っているのやら。


 お礼用の材料を買いにこの世界で初めて肉屋に行ってみる。店内はなんの肉かわからない物がたくさん並んでいた。いちいち気にしていたらこの世界で食事ができなくなりそうだなのでキニシナイコトニスルヨ。

 店内を見回し必要な物を探すが店頭には見当たらない。人のよさそうな店主に聞いたら「食べるのか?そんなもの置いてないから今捌いてくる」としばらく待たされた。確かに新鮮じゃないとダメだからね。戻ってくると「捨てる物だから」とタダでくれたのだ。もったいない。

 お店を出る時に「あんなものを本当に食べるのか…?」と言う声が聞こえた。当然食べますよ!



 宿に戻るとベルさんと旦那さんはお昼の営業時間を終え、夕食の仕込みまでの休憩中だった。これは好都合だ。


「お二人とも、いつもお食事ありがとうございます。旦那さんにご挨拶するのは初めてですよね。お世話になっております。カノコです。」

 食堂兼飲み屋である一階には食事時しか行かなかったので、厨房に入っている旦那さんは厨房を覗かないと顔を見る機会すら無かったのだ。


「クマヤコルだ。ベルから話は聞いてる。」


 この世界の人たちが大きい。その中でもクマヤコルさんは特に大きい。筋骨隆々で2m越え。短く切りそろえた黒髪の角刈りにねじり鉢巻き、青い前掛けをしている。レスラーが魚屋のコスプレをしているようにしか見えない。しかしタレ目なので優しい印象が残る人。

 続けてノンちゃん、ロボちゃん、シホちゃんの紹介もする。3人は紹介を済ますと勝手にテーブル上に寝っ転がってしまった。召喚獣は自由人なのだろうか。


 続いて、お世話になったお礼にレシピを教えたい旨を伝えると「子供が気を使うな」と言われてしまった。…うん、だから私は子供じゃなんですって。

実はお礼だけでなく、怪我は治ったけれど療養になるから食べたい旨を説明する。


「材料はこれです。」

「「これは…。」」

 皮袋の中を見た二人は渋い顔だ。


 中身は鳥レバー。


 血や鉄分を増やすにはレバー。日本での常識だよね。

 無い知恵絞って考えたお礼が『レバー料理を作ろう』なの。でも先程の二人の表情や肉屋の店主の反応からすると、この世界では内臓は食べないようだ。


「とにかく作りますね。」

 強引に押し切って厨房をお借りする。


 まずはレバーを水洗いしつつ血合いをとる。串が無かったので近所で竹っぽいのを採ってきて細く割く。レバーを一口大に切って串に刺し、竈に網を乗せレバー串を並べて炙る。時々返しながら塩をぱらり。個人的にはタレが好みだけど、未だ醤油に出会ってないのが残念。いつか手に入るといいなと考えつつ、ついさっき捌いてもらったばかりなのでぎりぎりミディアムくらいに留めておく。


「どうぞ。レバーの串焼きです。」


 所謂『焼き鳥のレバー』だ。


 内臓を串に刺して焼き、塩をかけただけ。しかも明らかに中心まで火が通りきっていない、普段は決して食べない内臓。二人の表情は硬い。というか、顔を引きつらせている。うーん。だめかしら。


「では私が味見(というか毒見)をしますね。」

 一本を手に取ってかぶりつく。


「うんまーーー!!!」


 さすが捌きたて。新鮮レバーは臭みが無く、レバー独特の柔らかさと外の香ばしさが絶妙でした。

「ノンちゃんも出血したんだから食べときな。」

と勧めるとシホちゃんも欲しがったのであげてみた。

「レバー好きじゃないけど、これは美味いな。」

「わたしく、内臓は食べ物だと思っておりませんでしたが美味しいですのね。」

二人とも器用に串から抜いて食べている。猫とタツノオトシゴが焼き鳥を食す光景……シュール。


 それを見ていたクマヤコルさんとベルさんも意を決して串に手を伸ばし、徐に口へ運んだ。


「旨い!」「美味しい!」

 間髪入れずに出た二人の言葉に安堵の溜息をつく。


 レバーには造血作用があること、女性は妊娠時に食べると良いことを説明し、ずうずうしくもしばらく食べたいと希望をする。肉屋で捨てている部位の為おそらくタダ同然で手に入るであろうことも忘れずに伝える。


「(モグモグ)酒が飲みたくなる。」

「でもこれだと女性はなかなか手を伸ばさないと思うわ。」

「女性用メニューは野菜と共にトマトで煮るといいと思います。」


 私の言葉を聞くとクマヤコルさんはニヤリと笑って厨房に入り、野菜を切り始めてしまった。

「ほっといてやって。レシピが浮かんで止まらなくなってるの。料理バカなのよ。」

 ベルさんは呆れたような声でそう言いながら私たちにお茶を出してくれた。「料理バカ」と言いながらも顔はニコニコしている。彼の腕を信頼しているんだろうな。



 後日。レバーの焼き鳥により夜の部の売上がアップし、「貧血や妊娠時に」を売りにしたトマト煮で女性客が増えたそうだ。自分の健康のためにもなったし一石二鳥で大満足な結果になった。

 実はレバーを安価とはいえさばけることになった肉屋も含めて一石三鳥となっていたことには気付かなかった。



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