表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パル  作者: 山葵
28/32

028 水晶さん

初めて短編をupしました。読んでいただけると幸いです。

 出掛ける支度をしたけれどあまりの痛さに我慢できなくなり、一本だけ持っていたポーションをノンちゃんと半分こして飲んでみた。しかし多少痛みがひいた程度にしかならなかった。ポーションで補える傷の深さではないみたい。ハイポーションに手を出せる懐具合じゃないからなぁ。痛む体をおして出掛ける支度をする。


 ゆっくり静養したいがそうもしていられない。まずは怪我のせいで行きそびれているギルドへの依頼完了報告。マプ花採取は怪我をする前に完遂していたからね。

 そして昨日のことを報告だ。居るはずのない場所にウォーク茸がいたこと、しかも大量に居たのには原因があるはず。昨日の分はシホちゃんが倒してくれたけれど、あれで全部だったのかは不明だしね。



***



「おはようござ」「カノ坊なんだその怪我は?!」


 挨拶をしながらギルドのドアを開けると、近くにいた冒険者が叫び声をあげた。すると私達に視線が集中したと思ったら冒険者達に囲まれた。


「おいっ。ノンも傷だらけじゃないか!」

「だから子供が冒険者をするのは危険だとあれほど…。」

「うおっ。このトカゲ浮いてる?!」

「もしかしてカノ坊の召喚獣か?また妙なものを。」

「なぜこの状況でネズミはリグドン食えるんだ?」


 この世界でいう子供の年齢じゃないし、タツノオトシゴじゃないのかとか、マイペースなロボちゃんには触れないでほしいとか、言いたいことはたくさんある。そして心配してくれているのもわかっている。しかし要件を済まさなければならないので、人混みをかき分けてカウンターへ進む。

ティーノさんは今日もカウンター担当だったようで、こちらに背を向けてなにやら作業をしていたので声をかける。


「ティーノさん、おはようございます。」

「ああ、カノちゃんだね。おはぁあああああ?!」


 声で私だと気付いたようで、挨拶を返しながらこちらに向いた瞬間に叫んだのだ。驚かせてごめんなさい。で、速攻で奥の個室にご案内されちゃいましたよ。



 昨日北門側の平原でマプ花採取をしていたらいつの間にかウォーク茸の幼虫に囲まれてこの怪我を負ったこと、シホちゃんが助けてくれたこと、更に召喚獣になったことを報告。


「あの平原にウォーク茸の幼虫はあり得ないんだ。…なにかあるな。情報ありがとう。ギルドとして探ってみるよ。でも怪我はいただけない。索敵能力を上げなさい。それ以前に子供は無理しちゃいけないよ。」


 また子供か!でも今はスルー。

私に戦闘や補助の能力がないだけにノンちゃんに頼り過ぎていた。対策を考えなければならないけれど今のところ何も思いつかない。時間がかかるかもなぁ。


「挨拶が遅くなったね。初めましてシホちゃん。君は浮けるんだね。」

うんうん、と肯定する。やはり気になるよね、浮かぶタツノオトシゴは。


「シホですわ。宜しくお願いしますですわ。」

「君はトカゲかい?」

「いいえ。古龍ですわ。」

「こっ。」


 「こ」の口のままティーノさんが固まってしまった。ど、どうしたのかな??「おーい。ティーノさ~ん。」と顔の前で手を振ってみても無反応。そういえば私のステータスを初めて見た時のアレグラさんも固まったよね。同じ反応とはさすが姉弟。


「ティーノ起きろ。殴るぞ。」

ノンちゃんがペチペチとおでこに猫パンチをしても反応しない。あ、肉球跡がついちゃったよ。まあ、いいか。息はしているし具合が悪いようではないから置いてっちゃってもいっか。



本当に放置して小部屋を出る。依頼完了報告のため、再びカウンターへ近づくとアレグラさんがカウンターを飛び出して来た。


「カ!ケ!ド!」

「落ち着いてください。」

「カノコチャン!ケガ!ドウシタノ!」

「おい、片言になってるぞ。」


 アレグラさんに経緯を報告するとティーノさんと同じことを言われてしまいましたよ。反省しきり。冒険者って簡単にはいかないものだと実感中ですよ。

 ウォーク茸の方はティーノさんに報告した時点で私がすることは終了とのこと。何事もないといいんだけど。


「すみません。マプ花の依頼完了報告もお願いします。」

「まったくもう。マプ花は常時依頼なんだから完了報告は怪我が治ってからでもいいのに…。じゃあ、指輪を水晶に翳してね。」


 ロボちゃんがマプ花をカウンターに出し、私は紫色の渦の見える水晶玉に指輪をした右手を翳す。ほんのり光って依頼完了。

 …と思っていたのに、光がどんどん私の体を侵食しだした。


「えっ。なにこれ!」 「キュ!?」 「カノコ!」 「どうしたんですの!?」

異変を察したノンちゃんとシホちゃんが水晶玉に近づくと、ノンちゃんまで光り出してしまった。しかしシホちゃんとカウンター上にいたロボちゃんには光が及ばない。

 光は数秒で消えた。慌てて全身を確認するもなんともない。ホッとしてノンちゃんと視線を合わせると、お互い「おや?」と気づいた。怪我が痛くない!


「怪我が治っているよな。」

「あら。水晶に気に入られたのね。」


 アレグラさん曰く、冒険者の指輪や依頼完了報告を確認するこの水晶は、ごく稀にこういう対応をすることがあるそうだ。成されることは様々。勇者に魔王の城までの地図を提供、義賊の犯罪履歴を削除、神官に広域治癒魔法を会得させる、など。

 今回もその措置だろうとのこと。どうして気に入られたのかは全くわからないけれど、怪我が治ったのは単純に嬉しい。


「水晶さんありがとうございます。」

 敬意を払いお礼を言うと紫の渦がキラキラと光った。


 ノンちゃんが訝しげにポンポンと前脚で水晶を叩くと、久々に水鉄砲を食らっていた。

 水晶さんに逆らっちゃいけない気がするよ…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ