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パル  作者: 山葵
10/32

010 猫じゃなかった

 どれくらい泣いていただろう。気が済むまで泣いてようやく帰らなければという思考に至る。慌てて町へ戻り始めるが、私は歩いていない。

「ありがとね、ノンちゃん」

「……」

 腰が抜けて歩けずノンちゃんの背中に乗せて(しがみつかせて)もらっている。情けない状態だけど頬の緩みを隠しきれない。“ノンちゃんの背中に乗っている“。動物の背中に乗るという夢が異世界で叶うと思わなかった!嬉しすぎる。


 しがみつく私の背中にはモグーの討伐証明部位である前歯が大量に入ったリュック。巨大モグーは部位がわからない為そのまま持ち帰ることにした。但し大型犬くらいあるのでリュックに入るはずもなく。ノンちゃんに咥えてもらっている。


「いや~。ノンちゃんの毛はクロヒョウでも触り心地いいねぇ」

なでなでさわさわもふもふ

「………」

「大きいけどこれはこれでかわいい!」

「………」

 怒っているようだが、巨大モグーを咥えていて喋れない。ここぞとばかりに触りまくる。後が怖いけど、目の前にこんな良い物があるんだから逃すわけにはいかないわ!もふもふ。



 町の入口に着いたら大騒ぎになってしまった。巨大モグーを咥えた体高1メートルのクロヒョウと、その背中にへばりつく女。傍から見ると意味不明すぎる。そりゃ騒ぐな。

 門番さんと野次馬に囲まれてしまい、テンパって「アレグラさん呼んでー!」しか言えなかった。




「本当にノンちゃんなのね」

「この尊大な態度と白ソックス脚はノンちゃん以外いません」

「お前は黙ってろ」

 以前、ステータスを見て固まったアレグラさんのおかげで「クロヒョウはノンちゃんなの」しか言えない私の説明を理解し、周囲を退けてくれてなんとか人ごみから抜け出してギルドへ。個室にて3人でお話という名の詰問中である。


「クロヒョウとあったけど記載間違いかと思ったわ」

「私はノンちゃんに言語の加護があったことに驚きだよ」

「ノンちゃん言うな。ずっと言いたかったんだが俺はノクターンだ!」


そう。ノンちゃんの本名はノクターン。母がつけた。しかし私はかわいい名前がよかったので「ノンちゃん」と呼んでいる。不満だったのね。変える気ないけど。


 それと巨大モグーはモグーキングというらしい。討伐証明部位は巨大前歯だった。

「子供でも知ってることでしょう。なんで知らないのよ」

「ラクビトですから」

「あ、そうだったわね。迂闊!常識の違いに気付かなかったわ」

「私も異世界にテンション上がって、そういうことから目を背けてました」

「まずはこれを覚えて。近い狩場の魔物は網羅されているわ」

『子供でもわかる☆図解魔物図鑑』

拙い魔物の絵とともに特徴とランクが書かれている。これらは一般常識レベルらしい。モグーキングも載っていた。

『モグーの巣に稀にキングとして現れる。ラケット手で殴られたら粉砕骨折レベル。ランクDなのでランク不足で遭遇したら即逃げること。』

逃げられる状況じゃなかったよ!


「そういえばモグーキングはどうやって倒したの?凄い音がしたけど」

「殴った」

「つまり猫パンチ?」

ワンパンか。もしかしてノンちゃんて強いのかな。よくわからない。


「もう猫には戻れないの?」

「戻れる。というか成れる」

「それも不思議ね」

「寝る時狭いから猫になってよ」

「ちっ。しょうがねえな」

「…こんなに生意気な猫だとは思わなか(うぷっ)」

顔面に肉球を押し付けられる。鼻と口が覆われるなんて猫型時よりかなり大き……苦しい!力いっぱい両手でずらす。

「ハァハァ。窒息するわっ」

「あんたたち、明日から周りが騒ぐだろうけど頑張ってね」

「うぇぇ、メンドクサイ」

「死ななかった代償として我慢しろ」

「メンドクサイものはメンドクサイ。でもこの手触りがあるなら我慢する(もふもふ)」

「…お前ほんとウザいな」


 お父さんお母さん。うちの猫はめちゃくちゃ口が悪かったようです。


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