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推し見守り日記~見守りたい彼女と捕まえたい彼の攻防記録~  作者: 池中織奈


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幕間 テレミア ①

「テレミア様、こちらはいかがなさいますか?」



 私、テレミアは『黄昏賛歌』のギルドメンバーから声をかけられ、それに応えていく。



 『黄昏賛歌』で私は副ギルドマスターのような立場にある。ギルドマスターは、クライネア様だ。

 あの『幻妖の魔女』が齢八歳の少女だなんて誰もきっと信じないことだろう。私だって実情を知らなければ……とてもじゃないけれども信じられなかった。

 私はクライネア様に助けられて、結果として配下についた。




 こうして副ギルドマスターという立場で、穏やかな日々を過ごすことが出来るなんて私は当時、想像もしていなかった。

 これだけ多くの仲間を得ることも。

 だって私は、独りぼっちだったから。



 元々私は、生まれ育った村で家族や仲間に囲まれて幸せに生きていた。だけれども、その幸せは長く続かなかった。



 私の一族は、その血液が万病にきくと言われる薬の材料になるものだった。だから狙われることも多かったと、村長たちに聞いていた。でもまさか、日常が唐突に終わるとは思っていなかった。




 ある時、私の住んでいた村は襲われた。多くの人達が亡くなったり、奴隷としてとらえられたりした。

 私はなんとか逃げて、生き延びられた。




 バラバラになってしまった仲間を探すために私は動いていた。その中でヘマをして、倒れた時に……クライネア様に出会った。




 クライネア様も、その兄であるハザイド様も変わった方だった。

 私の事情なんてどうでもいいとばかりに気にしない。クライネア様は私を服従させたわけだけども、その血を求めたりなどしなかった。そもそも私がその血が薬になるといっても「へぇ、そうなんだ?」と興味がなさそうだった。



 それよりもクライネア様は、推しだというクライネア様が好意を抱いている相手のために頑張りたいからギルドを作りたいなどと言っていた。……子供なのに実際にギルドを設立しようとするクライネア様もおかしいし、妹がそれを言い出しても特に止めもせずに設立を補助しているハザイド様もおかしい。





 この兄妹、子供なのに異常に大人びていて淡々としていてとてつもなく強い。私だってこれまで一人で生きてきて、襲われた際に様々な襲撃者の対処をこなしてきた。だけど、お二人に勝てると思えなかった。

 私はクライネア様の下についているわけだけれども、彼女は私の行動を制限したりなんかもしない。

 ちゃんとギルドを回してくれているならそれでいいらしい。私が同郷の仲間を探したりすることも特に止めない。寧ろ、「仲間の人達は率先して助けるべきよ。敵対しないなら、ギルドに入れてもいいわ」なんて軽く言われたぐらいだ。




 そのあたりは私の自由でいいって。ただどこかに仲間を取り戻しに行くとか、直接的な行動をする時には相談してほしいって。そう言うぐらいだった。

 それに……私がもし、身体に流れる血を目当てに狙われた際は助けてくれるとそうも言ってくださった。

 それもあって私は安心して動けるようになった。



 クライネア様は、身内には特段優しい方だ。ギルドマスターとして生きていくだけの冷たさも持ち合わせているけれども、同じギルドメンバーの話はよく聞いている。相談事だって、なんでもしてほしいなんてそうも言っていた。




 『幻妖の魔女』としてのクライネア様の名は、他ギルドにとっては畏怖の象徴になっている。それだけ人形の身体を使って戦うクライネア様はすさまじかったのだ。




 壊れなければ一生戦える、人形の身体。

 自分の身体ではないのに、あれだけ操れることは異常だ。それもクライネア様はまだ八歳の子供なのに。

 クライネア様自身は兄であるハザイド様のことを天才だという。自分はハザイド様のようではないと。

 でも私からしてみれば、クライネア様だって十分な天才だ。




 同年代の中でも飛びぬけているのに、目立ちたくないなどとよく分からないことを言っている。本人の目標は、推しである少年の視界に入らないように見守り続けたいらしい。

 天才の考えることは本当によく分からない。



 クライネア様は、よく分からないことに本気をだす。そもそも常人では理解出来ないような思考回路をしていなければ子供ながらにギルドを作ろうなんてしないのだから。

 私はそんなクライネア様の突発的な思いつきによる行動に付き合うことが結構好きだ。

 だって私では想像出来ないようなことが待っているのだから。



 それにクライネア様が後ろに居るのならば、私の背中を教えてくれるのならばなんだって出来るようなそんな感覚になれる。



 子供に守られているなんてはたから見て見ると変だって思われるかもしれないけれど、それでも私はこの関係が好きだったりする。

 それこそ一族の問題を全て解決した後も、ずっとクライネア様の下に居たいなと思うぐらいには。

 ハザイド様にも下僕と呼ばれる配下の方々が沢山居る。それは無理やり従わされているわけでもなくて、ただハザイド様を崇拝しているからこそ付き従っているだけだ。

 私もそうだし、ギルドメンバーもそうだけど……クライネア様に従いたいと思っている。

 尊敬しているし、クライネア様が見せてくれる世界を沢山見たいとそう思っている。



 まずは『黄昏賛歌』をもっと影響力のあるギルドにすること。そして私の一族の者達を救い出すこと。

 私の直近の目標であるそれらを、どうか叶えられるように頑張ろうとそう思った。




 ――ギルド『黄昏賛歌』と、『幻妖の魔女』の名がもっと広められるようにしよう。


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