整っていく日常〜(王妃宮)
まだまだ文法破壊な部分もあるかもですが(汗)
読み頂きありがとうございます(o^^o)
誤字脱字報告ありがとうございます。
感想くださる読者様、ありがとうございます。
大切に読ませていただいてます(*´꒳`*)
レイナはウィリアムと一緒にリッター医師の居る医務室へと足を運ぶ。
「おや、レイナ様……ですかな?…………それにウィリアム様……お二人揃ってどうなさいました?」
リッター医師は、レイナとウィリアムが一緒にいる事への驚きを隠しつつそう尋ねると。
「ちょっとリッター先生にご相談が」
ニッコリと笑顔を見せるレイナとは対照的に、ウィリアムの表情は困惑が滲み出ていた。
レイナとウィリアムは、以前キャロルが通された資料などが詰め込まれた棚がある部屋に通された。
木製のテーブルと木製の椅子。テーブルの隅には資料や器具が置かれている。
「こんな雑多な部屋で申し訳ない。それで? どのようなご相談ですか?」
リッター医師は話しながらお茶を淹れようとしたが、アニタとキャロルが給茶を請け負い、座るよう促された。
リッター医師が椅子に座るとレイナは話し始める。
「以前、『ウィル』が言った言葉について、私の解釈を聞いて頂きたいと思いまして」
「解釈……」
「はい。ウィルは『まったく…やっと眠らせたのに…また会いに来るなんて』と言ったんですよね?」
そう言ってレイナがウィリアムに視線を向けると、ウィリアムは一つ頷いた。
次にリッター医師へ目線を向ける。
「この言葉を聞く限りだと咎めている様に聞こえます。ですが、ウィルはその後『せいぜい謝り続ける事くらいだね』と言ったんですよね?」
レイナの確認する様な視線にウィリアムは強く頷く。
「でしたらウィルはウィリアム様の訪問自体は拒否していない。むしろ勧めているわけです。私が思うに……咎めた様に聞こえた言葉の指す所は頻度か間隔だったのではないでしょうか……」
レイナの解釈を聞いて、リッター医師はメガネの中心を少し押して思案する。
「……つまりウィリアム様があの日の内に王妃宮を尋ねたのが早かったと」
「はい。……自死未遂の後、クレアは一度も現れない。ですが赤の応接室でウィリアム様に会った時、私は胸の奥で感情が揺れた様に感じました。……あれは私では無く、おそらくクレアの感情だと思います。ウィリアム様の存在がクレアが目覚めるキッカケになったのかもしれない……」
レイナの話しにウィリアムは大きく目を見開きゴクリと喉がなる。
(クレアが目覚める……)
レイナは顎に手を当てて話しを続ける。
「もしかしたら静かな目覚めでは無かったのかも……それをウィルが宥めて寝かしつけた……もっと時間を掛けたかった所へ再びウィリアム様と言う刺激が加わり、クレアが目覚めて心の奥に逃げてしまった……」
(……逃げた……僕から……僕に会いたく無くて)
ウィリアムは膝の上で拳を強く握り込む。
「『逃げてしまった』と言われたら『会いに来るな』と続きそうですが……そうは言わなかった。———ウィルはウィリアム様の声がクレアに必要だと判断したんだと思います」
レイナはリッター医師に向けて話しを締め括る。
「……確かに……その解釈は一理あると思います」
レイナはパンッと鳴るほど強く手を合わせ、可愛らしく微笑み口を開く。
「ですよね! では、リッター先生からヘルミナ様にお伝えして頂けますか? ウィリアム様と私との面会は必要だと」
「………………はい?」
「やっぱりお医者様の見解が一番説得力がありますから」
その場に居た全員が大きく目を見開いた。
ニコニコと屈託の無い笑顔のレイナを前に、リッター医師はみるみる青褪めて行く……脳裏には怒り心頭の王妃の顔が浮かんでいた。
「——————承知しました」
(嫌だなぁ)と言う心の声が聞こえてきそうな引き攣った笑顔のリッター医師に向けて、ウィリアムが口を開く。
「ありがとうございます! ……大変な役回りをさせて申し訳ありません」
これ以上下がらないと言う程眉尻を下げて、ウィリアムは頭を下げた。
「いえいえ……良いんですよ。これは医者の勤めですから」
そう言いながらもリッター医師の顔色は回復しない。
ウィリアムはレイナにも感謝の言葉を伝えようと口を開きかけたが、先にレイナが言葉を発した。
「ヘルミナ様にお伝えする際、一つお願いが」
そうリッター医師へ告げる。
「お願いですか?」
「はい。ウィリアム様の面会の目的はクレアへの謝罪ですから、この身体が寝ている時にして欲しいんです」
その言葉にウィリアムはギョッとして目を見開く———。
リッター医師は真顔で逡巡している。
「先程ウィリアム様に伺ったのですが、プラセルはウィリアム様の謝罪を必要無いと断ったそうなんです。私もウィリアム様の謝罪を必要としていません。そして謝罪を受け入れたレアや、謝罪が必要なフュリアスが現れる度にウィリアム様を呼びつけると言うのは効率が悪い。この二人はタイミングが合った時位しか謝罪が叶いません———。そして、ウィリアム様の声が最もクレアに届くのは、この身体に誰も現れてない睡眠時が良いのでは……と思うんです」
レイナは胸に右手を当ててそう話すと、ウィリアムにニッコリと笑顔を向ける。
「今は常に護衛や侍女が付いていてくれますから、二人きりになる事は有りませんし……ウィリアム様は寝不足になってしまうかもしれませんが、それ位は頑張って下さいますでしょう?」
「勿論だ!」
ウィリアムは間髪入れずにそう答えた。
その返答に満足したレイナは、いつの間にか用意されていた紅茶へ手を伸ばす。
話し詰めですっかり喉が渇いていた。
納得する様に頷いたリッター医師も目の前のお茶を飲み干すと口を開く。
「では、王妃様に私達三人と面会していただく様、申し入れます。おそらく夕刻には叶うと思います」
そう言って立ち上がり執務机へ移動した。
「レイナ……ありがとう」
「お気になさらず。全部クレアの為ですから」
ウィリアムは膝に置いた両手を強く握り込む。
「分かってる。それでも……ありがとう」
◇
夕刻———。
王妃宮の応接室では、王妃が三人掛けの長いソファの真ん中に座っている。
その向かいにはレイナとウィリアムが並んで座っていた。
リッター医師は間にある一人掛けソファに座り、三人の顔がよく見えた。
淑女の笑顔を貼り付けているレイナ。王妃とウィリアムは仮面の様に無表情だった。
「ヘルミナ様、お時間頂きありがとうございます。それでは、手紙で簡潔にお伝えした内容を詳しく説明させて頂きたいと思います」
リッター医師の言葉に王妃は頷く。
◇
王城の医務執務室で話した内容を、リッター医師が王妃に説明し終わった所で……。
王妃は目の前のウィリアムをジッと見ている。
真顔だが瞳の奥にユラユラと怒りが滲んでる様に感じられ、レイナやリッター医師には睨みつけている様に見えた。
(……思った以上にヘルミナ様の怒りが引いてないわ……)
レイナは笑顔を貼り付けたまま、内心では焦っていた。
医師の見解だと説けば、王妃もウィリアムとの面会を認めてくれるだろうと言う目論みが……上手く行かないと感じる程に王妃の怒りを強く感じたからだった。
ウィリアムはと言うと———。
冷静な顔で王妃の視線を真正面から受け止めていた。
小さな物音を立てる事も憚られる程に、部屋の空気がピリついている。
少しの沈黙の後、王妃が口を開いた。
「…………分かったわ。レイナが寝る時にウィリアムに連絡が行けばいいのね? ……了承しましょう」
王妃の発言で部屋の空気が幾分軽くなる。認めてもらえてレイナは安堵の息を吐いた。
ウィリアムが王妃に向かって口を開く。
「お許し頂きありがとうございます」
「貴方を許した訳じゃありません」
間髪入れずに王妃が応える。
「クレアに必要だと言うから許可したのよ」
王妃の言葉をウィリアムは表情を崩す事なく受け止め、王妃に向かって頭を下げる。
「……分かってます。申し訳ありません」
「……………………」
ウィリアムの謝罪に王妃は何も応えなかった。
姿勢を直したウィリアムは続けてたずねる。
「母上、この後二人だけで話をさせて頂けますか?」
「……………………」
やはり王妃は何も応えない。
「…………レイナ、リッター先生。二人はもう下がってくれる?」
ウィリアムが二人に退室を促すと、レイナとリッター医師は静かに立ち上がる。
「分かりました———。妃陛下、御前失礼いたします」
リッター医師が挨拶するのに合わせてレイナも頭を下げた。
王妃は小さな頷きを返すのみで黙っている。
ウィリアムと王妃の様子に後ろ髪を引かれるものの、レイナはアニタとキャロルを引き連れ、リッター医師と共に応接室を後にした。
「では、私はこのままヘネゼン医師の所へ参ります」
そう言って側に控えている侍従に、侍女頭や護衛の班隊長は王妃宮の医務室へ集まる様にと伝達の指示を出した。
「お疲れ様ですリッター先生。ありがとうございました」
レイナは笑顔でリッター医師を労う。
「いえいえ、レイナ様こそお疲れ様です。今日か……遅くても明日から、ウィリアム様が夜の訪問に来られるよう。急いで手引き書の作成を致しますので」
「はい。よろしくお願いします」
そう言って、セラ医師の元へ向かうリッター医師と分かれた。
レイナはチラリと応接室の扉に視線を向けたが。
「さぁ、部屋に戻りましょう」
そう言って、新しい自室へと廊下を進む。
◇
応接室では、王妃とウィリアムが向かい合って座ったまま沈黙が続いていた。
徐ろに王妃が口を開く。
「貴方達も下がって……ウィリアムと二人だけで話しがしたいから」
そう言って侍女達を下がらせた。
再びの沈黙の後———。
ウィリアムは立ち上がり、王妃の直ぐ横まで来て……。
両膝を突いて跪いた。
王妃はウィリアムの動きから目を離さない。
「母上———。申し訳ありませんでした……」
王妃からは、跪いて顔を伏せているウィリアムの頭しか見えない。
柔らかく光り輝く金髪がウィリアムの表情を隠す。
「父上も母上も……ヘクターも……諌めてくれてたのに。僕は言う事を聞かなかった。クレアを傷付ける行いを繰り返して……」
王妃は黙ってウィリアムの話しを聞いている。
ウィリアムは組んだ手のひらをキツく握る———。
「全部僕が悪かったんです……。僕が選択して僕が行った……だから……」
次の一言に王妃は大きく目を見開く。
「……ご自分を責めないで下さい」
ウィリアムは、五日前の王妃とドケーシス公爵夫人が、お互いを慰めるように抱き合い、床にへたり込んで激しく泣きながら謝罪を繰り返していた事を人伝に聞いていた。
王妃は堰を切ったように声を荒げて
「———貴方のせいで! 私は愛する息子を恨むような母親になったのよ! それがどんなに辛い事か……」
言葉に詰まり、目に涙が滲む。
「分かってます。愛されていると知っています———。失望させてしまい…………傷付けて……申し訳ありません」
ウィリアムの金髪が震えて揺れる。
その姿が幼い頃のウィリアムを彷彿とさせる……。
王妃は歯を食いしばり抱きしめたくなる手を抑える。
「———これからの行いで挽回なさい! 許すかどうかは結果を見て決めます———。もう……下がりなさい」
王妃はウィリアムから目を逸らす……顔を上げたウィリアムには、外方を向いた王妃の首筋がみえた。
ウィリアムは静かに立ち上がり扉へ向かう。
ドアノブに手をかけた瞬間。
「ウィリアム」
王妃に呼び止められた。
ウィリアムが振り返ると、王妃の真っ直ぐな眼差しがぶつかる。
「最後まで付き合いますから……しっかりね」
「……はぃ」
泣くのを耐えたせいで、ウィリアムは掠れた返事しか出来なかった。
2026.10.8。明日はいよいよ書籍の発売日(^^)
心拍数が本当にヤバい(^◇^;)
きっと本屋を徘徊しちゃいます(゜ω゜)




