レアは理解している
60話を迎えました。ここまで文法破壊な文章にお付き合いして下さってる読者様
ありがとうございます( ;∀;)
ブクマ・評価・リアクション励みの糧にしております。
誤字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
感想ありがとうございます。ありがたく読ませて頂いております。ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
返信できない方向で(>人<;)
後頭部を抑えて立ち上がったウィリアムは陛下に座る様にと言われ、ソファに腰をおろす。
少しするとウィリアムの手元には氷嚢が渡された
ウィリアムは黙って氷嚢を後頭部に当てる
喉が痛いと訴えるレアにはハチミツ入りのホットミルクが渡される。
「レア…少しずつ飲むのよ」
夫人が涙でグズグズだったレアの頬をハンカチで拭ってからそう言うと、レアはコクリと頷きカップに口を付けてチビチビと飲み始めた。
「フュリアス様からレア様に直接代わるのは初めてですね…」
「いつもは一度レイナ様に代わってからだったのに…ウィル様が現れた事に関係するのか…」
リッター医師とセイン医師が話し込んでいる声がレアにも聞こえた。
「んんっ………ウィル様?」
レアは少し喉を鳴らすような咳払いをしてから首を傾げ、夫人に尋ねる
(そう言えば…レアはどこまで分かってるのかしら…)
これまでレアにクレアの障害について誰も説明していない。レアと言う人格の対応にかかり切りで、それどころでは無かったし…レアが入れ代わりをどこまで理解しているのか、どこまで理解出来るのか未知だからだった。
「あ……えっと…」
夫人がリッター医師に視線を向けると、それを受けて彼はレアのそばに寄る。
ソファに座るレアの前に跪き落ち着いた声音で話しかける
「レアお嬢様には難しいお話かも知れませんが…レア様の体の中には別の性格の人が何人か居るんです…意味は分かりますか?」
「うん。知ってます」
「「「「「「?!」」」」」」
予想してなかったレアの返答に全員が目を見開いて固まる。
「………知っている?」
戸惑いの乗る声でリッター医師が尋ねると、レアは少し得意げに話し出す。
「うん。みんなで寝てたから。レアはたまに起きちゃうんだけど、まわりのみんなは寝てるの。レアが起きるとお兄様がきて寝かせてくれるの。すごーく優しいの。大好き」
(お兄様?……ウィルか?)
ウィリアムは思わず氷嚢を当てる手を下ろしてレアの話に集中する。
「……そ…それは…もしかして頭の中の話かい?」
リッター医師に聞かれてレアは首を傾げた
「そうなのかな?…真っ暗で…真っ白で…ひろくって…せまくって……ふわふわの床にみんなで寝てたの」
「寝てたと言う事は…今は違うのかな?」
「……うん…今はレアだけ…みんなどこかに行っちゃった」
「皆んなとは何人でした?」
「なん人……」
そう言ってからレアはカップを左手に持ち右手を広げ指を折り始めた。
そして、チラリとリッター医師に目線を向け尋ねる
「……レアもいれて?」
「いや。レアお嬢様とウィ…お兄様は入れないで」
リッター医師の返答に頷きレアは答えた
「……んと…五人…だったと思う…」
(……五人…書き出された交代人格と同じ数…ウィルがお兄様ならレアを寝かしつけて表に出ない様にしていたのか?……そう推測するとフュリアスと……ネビュラも夢遊病なら表に出るのは危ないから…ウィルが抑えていた事に?……)
リッター医師が考え込んでいると、公爵もレアに寄って質問をした。
「レア…前に父さんに『クレアは居ないよ。死んじゃった』って言ったかい?」
「うん。言った」
レアの答えに公爵は喉をグッと締めると、再び口を開く
「……あれはどう言う意味だったのかな?…クレアを見たのかい?」
公爵の質問に、レアは思い出しながら答える
「うん…見た。寝てたらあたまの中で《ウィリアム様なんて大っ嫌い》って聞こえて、ちょっと目をあけたら…遠くで沈んで行くクレアが見えたの……お兄様が一所懸命引っ張ってたけど…沈んじゃった。…グッタリしてたから…死んじゃったんだって思ったの……つぎに起きたときは誰もいなかった」
レアの話を聞いたウィリアムは、絶望と後悔を表情に浮かべて項垂れる様にして両手で顔を覆った。瞳に涙の膜が張る。
「……そうか。教えてくれてありがとう」
公爵は表情に悲しみを浮かべない様耐えながら、笑顔でレアの頭を撫でる。
夫人も涙を滲ませるが、懸命に笑顔を纏っていた。
レアが首を傾げてリッター医師に尋ねる
「先生!ウィルってお兄様のこと?」
「そうだよ。ウィル様が御自分でそう名乗ったんだ。それと他の人達は先ずレイナ様が…」
リッター医師がレアに他の人格の説明を始めた所で、陛下はウィリアムの腕を引っ張って立ち上がらせ、部屋の隅に連れて行ってコソコソと話し出した。
「レアにも謝るのだろう?」
陛下はウィルの『謝り続ける』と言う事が、個々の人格全てに永続的にだと解釈している。
「はい。でも先程の様子だと僕と口を聞いてくれるかどうか……目も合わせて貰えないかも」
「だからコレを…」
項垂れるウィリアムに陛下は側で控えている侍女に持たせていた袋を渡した。
クレアの中の人格達の特徴と名前を教え終わった頃合いを見計らってウィリアムがレアに近づく。
それに気付いたリッター医師は場所を譲る様に立ち上がり、レアの前をウィリアムに進めた
ウィリアムが目の前に来るとレアはむくれた様子になり、隣に座る夫人の袖をギュッと掴み
ウィリアムを見ない様そっぽを向いた。
ウィリアムはレアの前で跪き、先程陛下に渡された袋を自分の前に置いた
袋の大きさは高さ60センチ程、大きなピンクのリボンで口を縛ってラッピングされている。
その大きなリボンに興味を惹かれたレアは、目を見開き袋とウィリアムを交互に見る
ウィリアムはレアを怖がらせない様に優しく笑顔を纏って話し出す。
「父上…国王陛下が渡す役目を僕にくれたんだけど…」
そう言ってウィリアムはリボンを解き、袋を脱がせるように下げる。
レアの目の前にクリーム色の大きなウサギのぬいぐるみが現れた。
「わあ…赤いお目目のウサギさん」
レアはキラキラした瞳で大きなぬいぐるみを見つめる。
「陛下からのプレゼントだよ」
それを聞いてレアはぱっと陛下に視線を向けると、目が合った陛下はニコッと笑って一つ頷いた
レアは花が綻ぶ様に笑顔になる。
ウィリアムはぬいぐるみの脇に手を差し込んで持ち上げると、レアはウサギの首に手を回して抱きしめる。
「ありがとうございます」
(……なんて…可愛いんだろう)
子供の頃そのままのレアに、ウィリアムは泣きそうになるのをグッと堪える
レアの警戒を緩める事に成功して
話すチャンスをくれた陛下に感謝しながら、ウィリアムはレアに話しかける。
「レア…僕はクレアに酷い事を沢山したんだ……」
その言葉でレアは笑顔を仕舞いウィリアムをジッと見て話に耳を傾ける。
(目を……合わせてくれた)
泣きそうになるのを耐えながら笑顔に自嘲が滲む
ウィリアムは言葉を続けた
「……僕は君達に酷い事をしたんだ……だから…謝りたくて…フュリアスにはさっき謝れた……全然足りないケド…謝る事が出来た。…レイナにはまだ謝って無いんだ…早く謝らなきゃ……」
ウィリアムの目に涙が滲むが溢さないように耐えて眉間に皺が寄る
レアを怖がらせない様に作ったはずの笑顔が崩れ出す…それを隠す様にウィリアムは俯いた。
「まだ会えてない子達にも謝りたい……ウィルにも……そして君にも謝りたいんだ…レア。本当にごめんね。…ごめん……レアは僕を許さなくて良い………だけど謝る事を許してほしい…僕の謝罪を押し付けるのを許してほしい……」
そうして少しの間沈黙が訪れる。
俯くウィリアムの頬にハンカチが押し当てられた。
いつの間にか流れていた涙をレアが拭いてくれている。
右腕にはしっかりとぬいぐるみを抱いて。左手を伸ばしてグイグイと押し当てている。
ウィリアムがそっと顔を上げると真剣な顔のレアと目が合う
「うん。わかった」
「………ありがとう」
感謝を口にしたウィリアムの顔は涙でグシャグシャだった




