それぞれの…(1
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誤字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
感想ありがとうございます。ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
返信できない方向で(>人<;)
続き部屋には侍女達の手により、お茶会さながらな準備がされ。
レアの相手をリッター医師とセイン医師がしてくれている。
勿論アニタとキャロルも付いている。
ウィリアムと国王陛下とドケーシス公爵夫妻は赤の応接室へと移動する。
そこにはハーミット公爵とヘクターが居た。
本来はウィリアムがドケーシス公爵夫妻への謝罪が終わってから続き部屋に入る予定の二人だった。
ヘクターは無表情を纏っているがウィリアムの顔を見て内心驚く。
先程の扉の向こうの騒ぎは聞こえていた…応接室に入って来たウィリアムの頬がまた少し腫れている事から誰かに叩かれた事は容易に想像出来る。
(誰に叩かれたんだろう……叩きそうな人格はフュリアス…レイナの可能性もある…夫妻のどちらかかも知れない。……しばらく腫れは引かないだろうな)
何度も同じ所を叩かれるウィリアムに、流石に殴る程の怒りは収まって行く
全員が着席して、側妃候補のリール・シリッカの扱いに付いて認識を共用する為の話し合いが行われる。
ウィリアムは改めてあの日の経緯を説明した。
夫妻はウィリアムを見ずに耳だけ傾けている。それがさらに罪悪感としてウィリアムの心を削る。
「……リール嬢はあの場にクレアがいた事は知りません。入り口に背中を向けていたので…」
「……倫理的にも令嬢としても有るまじき行為だが…初恋の想いを告げたい一心だっと言う事か?…十六の娘ならば仕方が無いのかもしれんが……」
陛下は眉間を抑えて溜め息を吐く
「僕が受け入れなければ、クレアが目撃する事も無かったので…全責任は僕に有ります。相手が偶々リール嬢だったと言う事なので…僕の我儘ですが彼女を責めないでほしいんです」
(彼女はクレアに気づかなかったのだから…)
ウィリアムは全員に向けて頭を下げた。
自分のせいで側妃候補にと巻き込まれた三人に罪悪感がある。そこへ更にクレアを自死に追い込んだ令嬢として、リールの立場をより悪くする訳には行かないと言う想いだった。
「……どうする?」
陛下は夫妻に眼差しを向けて問う。
「……この話はこの場だけの事に留めるのが良いと思います。既に『殿下の不埒な行いに心を痛めての…』と周知される予定です。一線を越えた理由が何かまで広める必要はありません。クレアまで余計に噂の渦中に晒されるだけですから…」
その言葉に陛下は頷く。
「クレアの自死未遂がいつだったか知らされているから。リール嬢も己に責任の一端がある事は薄々気付いている事だろうよ。……ウィリアムから手紙で責任は問わないが一部の人間がリール嬢の行いを知っている旨を伝えておく様に。……それで構わないか?ドケーシス夫妻」
「はい」
「………はい」
(罪悪感はあるでしょう……それでもリール嬢は側妃として初恋が叶うのよ…)
夫人は納得の行かない気持ちを噛み殺し、ウィリアムに向かって口を開いた。
「ウィリアム殿下…リール嬢への手紙に私からの伝言を添えていただきたいと存じます…」
◇
ウィリアムとエタンセルの婚約誓約が成されてから三日。
リールはシリッカ子爵邸で父の執務室のソファに座っている。
向かいのソファには父であるテゾーロ・シリッカ子爵と兄のシャッツが座っている。
シリッカ子爵夫人は、召喚状で呼び出された金曜に下された王命について聞かされて以来ずっと床に伏せっている。
〜〜シリッカ子爵子女・リールへ〜〜
クレアの自死未遂の日にちから気付いていると思う。
クレアが自死未遂を起こしたきっかけは、あの日の中庭での僕と君の行いにあった。
責任は君の気持ちを受け入れた僕にある。
あの日君はあの場にクレアが居た事を知らなかったのだから。
あの日の事を公にする事は無いし、問い詰められる事も無い。
だが一部、事情を知っておくべき人には把握して貰っている。
当然、クレアの両親であるドケーシス公爵夫妻には事の次第をお伝えした。
ドケーシス公爵夫妻。特に夫人のクラリス様は、君の口からの弁明も謝罪も、当時の事もクレアについても、一切聞きたく無いと仰っていた。公の場での形式的な挨拶等以外は近付かない様心に留め置いて欲しい。
ウィリアム・オクトス
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
リールは手紙を手に青褪めポツリと呟いた
「ウィリアム様に…本当の事を言わないと…」
その言葉を聞いて子爵が口を開いた
「気持ちは分かるが……お前のした事を話せばウィリアム殿下の庇護を失う事になる。その覚悟はあるのか?」
その言葉にリールはピクリと体が揺れ、益々青褪めカタカタと震え出す。
「ですが…隠すのも問題がありませんか?」
いずれ爵位を継ぐ立場なので事の経緯を知らされているシャッツが口を挟んだ。
苦悶の表情で思案しながら子爵は口を開く
「……話すにしても…落ち着いてからが良いと思う。手紙の文面から公爵夫妻の怒りが伺い知れる…それを抑えられないから会う事のない様にとお達しなのだろう。
しかしウィリアム殿下はそうは行かない。側妃候補として後宮入りすれば、会わない訳にはいかない…そこへウィリアム殿下までが怒りを露わにする状況になれば、リールは針の筵に座る事になる……せめて後宮に慣れ居場所が確立し、支えになる者が出来てから話す方が良い」
「そうかも知れませんが……」
(リールは罪悪感に耐えられるのだろうか……)
父として娘の身を案じているのは分かる。だがシャッツにはリールの心の方が心配だった。
「いずれにせよ私達は助けてやれなくなる。後宮に入れば連絡を取る事も容易に許されなくなるだろう…お前が決めるしかない…自分の判断で…」
溜め息をついてそう言った子爵の表情には哀しみが滲んでいた
「……はい」
リールはこの何日かまともに眠る事が出来ず、食事も殆ど摂れずにいる
かつて薔薇色だった頬も青白く、唇も血色が悪い。自慢のオレンジ色の髪も手入れをする気が起きないのだろう…ただ梳くだけが精一杯と言った様子だった。
そんなリールを目の前にして、子爵もシャッツも慰める言葉は見つけられない。
沈黙が続いた後リールが口を開く
「……部屋に戻ります」
そう言って立ち上がると、シャッツも慌てて立ち上がった
「俺が部屋まで着いて行くよ!」
リールの自室の扉前、シャッツは部屋に入って行くリールに声をかける。
「リール…大丈夫か?…あまり眠れてないんだろう?…食事もちゃんと摂らないと」
「……うん。大丈夫……もう少し…元気になるには、もうちょっとだけ時間がかかりそう」
リールは力の無い笑顔を兄に向けた後部屋に入って扉を静かに閉め、自分のベッドに突っ伏す。
(卑怯者!卑怯者!卑怯者!嘘つき!嘘つき!嘘つき!臆病者!臆病者!臆病者!卑怯者!卑怯者!卑怯者!嘘つき!臆病者!卑怯者!卑怯者!嘘つき!嘘つき!嘘つき!……)
シーツを握りしめ声を殺して泣く…リールはその涙さえも後ろめたかった。
二人が出て行き執務室に一人残った子爵は、もう何十回も溢した溜め息をまた吐く
(……ダリウス君に合わなければな)
◇◇
それから二日後…シリッカ子爵は会う約束を取り付け、ダリウスが運営する商会の事務所を訪ねていた。
子爵はダリウスにクレアの障害の事以外の事情を説明した。
ダリウスの表情は忙しかった。
自分とリールの関係について焦った表情になり、蒼白になり驚愕になり…再び蒼白になった時、ダリウスは頭を抱えて俯いた。
自分の言った言葉を思い出す。
『王族の名を騙っての虚偽は、場合に寄っては厳罰を科せられる』
(俺があんな事を言ったから……)
胸の中に後悔が渦巻く
(こんな事になるなら貰えばよかった…婚約すれば良かった…もっと公に…大っぴらに……あの子は自分の物だと周知させておけば!)
声もなく打ちひしがれるダリウスに、子爵も苦悶の表情を浮かべる
「ダリウス君にはすまない事をした……婚約を急がなかった事が……全てが裏目に出てしまった」
そもそも地頭の良いリールは殆ど失敗した事がない。
それが学びを妨げた…失敗が無いと言う事は叱る事がなく平穏には過ごせるが、失敗した後の経験が積めない。その後どうなるかの想像が描けない…
(突飛な行動をするだろうと分かっていたのに… 貴族に嫁がせるつもりが無いからと奔放に育てた…全てが今更だ…)
そうして子爵は残酷な言葉をダリウスに告げる。
「…側妃候補のリールはもう個人的に男性と会う事は出来ない……すまない」
ダリウスは沈黙しながらその言葉を受け止めた。
◇◇
シリッカ子爵がダリウスに会っていた同じ頃
エインガー辺境伯の王都邸にトリステスの父が到着していた。




