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第5話 風凛と非公式生徒会

タッタッタッタッタッタッ……


 非公式生徒会室を抜け出した風凛(ふうり)は中庭まで走ってきた。

 もうすでに他の1年生は帰宅していて、中庭も南校舎もガランとしている。


 風凛は中庭にある木のベンチに腰を掛けうつむく。


「…………」


(なんで……あんなことになったんだろう……)


(もう……あたしじゃ……)


「お、風凛じゃねーか。どうしたんだよそんなとこで……今日から非公式生徒会行けるって朝まで張り切ってたのに」 


 うしろから声がした。


 そこには今年高校3年生になった風凛の兄が立っていた。


「お兄ちゃん……」


 風凛が泣きそうな声を出す。


「どうしたん?」 


 風凛の兄は風凛の横に座る。


「やっぱり……あたしじゃ無理なのかな……」


「素直になれないのは直ってないのか……」


「あたしは……お兄ちゃんみたいになりたくて……」


 風凛の目から涙がこぼれ落ちる。

 風凛の兄は神崎(かんざき)と同じ生徒会の役員。生徒会副会長を務めている。


「はぁ……別に俺はなりたくて生徒会員になったわけじゃない。風凛だってやりたいことをやってたらいつか実現できるよ」


「いつかじゃ駄目なのよ! あたしは片谷先輩のために……」


 風凛が言い放つ。その目には大粒の涙が光っていた。


紗千花(さちか)か……2年になってから喋ってないな。昔は俺と紗千花とお前でよく遊んでたのにな」


「でも……なんでそんなに紗千花のことを気にするんだ? 生徒会になりたいなら来年立候補すればいいだろ?」


「だって……だって……片谷(かたやま)先輩は……あたしの…………」


(風凛ちゃんがなりたいなら私はぜっっったい応援する!だって私たちはーーーーだもん!)


 風凛の脳裏に昔の紗千花の言葉が響く。


「はぁ……。そうか……」


 そう言うと風凛の兄はベンチを立って、横にある自動販売機に手をかける。


 ピッ カコン!


 出てきたペットボトルには『いちごミルクソーダ』と書いてあった。


「ほれ。これ……好きなんだろ?」


 そう言って風凛にいちごミルクソーダを手渡す。


「なんで……これ……家族の前じゃ飲んだことないのに」


「それくらい知ってるよ。お前の兄だぞ?」


「お兄……ちゃん! あたし……非公式生徒会に戻りたい。でも……一条って人と、立華って人とは……やりたくない……でも……」


「なんでその2人とは一緒にやりたくないの?」


「だって……片谷先輩に……特別扱いされてるみたい……だったから」


 風凛が涙声で答える。


「風凛……」


「片谷先輩は……あたしの……」


「風凛ちゃん! それは違うよ」


 風凛の言おうとしたことを遮ったのは、紗千花だった。


「片谷先輩!?」


「紗千花!?」


「私は非公式生徒会のみんなに同じように接しているの。みくや、楓真くんだけ特別扱いなんかしてないし、特別扱いなんてしたくない」


「あなた達はみんな、私の後輩。誰が特別なんてそんなものない!」

  

「片谷先輩……」


 風凛は何も言えなくなっていた。


「ほら、みんな部屋で待ってるよ。風凛ちゃんも行こう?」


「でも……」         


「紗千花の言うとおりだ。人間なんだから誰だって嫉妬や妬みなんてあるさ。でもそんなことで人と関わるのを避けていたら、いつまで経っても仲良くなんてなれないよ?」


「風凛……。本当は仲良くしたいんだろ?」


「………………分かりました……」

      

 そう言って風凛はベンチを立つ。


「行って来い」


「うん!」               


 涙を拭いて風凛は紗千花と一緒に走り出す。

 2人が向こうに行って見えなくなってから風凛の兄はつぶやく。


「ツンデレだなぁ……」




ーー非公式生徒会室ーー


 ガラ。


「みんな、風凛ちゃんを連れ戻してきたわよ!」


 手を繋いで紗千花と一緒に風凛が非公式生徒会室に入ってくる。

 そして、みくと楓真を見つけると、


片谷 風凛(かたやま ふうり)よ。よろしく……」


立華 楓真(たちばな ふうま)とこっちが一条(いちじょう)みくだ。よろしくな」

 

 楓真が自分とみくを指差し、3人が握手を交わす。


 続く








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次話投稿は明日です。

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