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第13話 秘密基地

(みく………………)

 

 何も考えられなくなった楓真は、ただひたすらにオムレツを食べ続けた。


 気がつくと楓真は、パフェもオムレツもすべてを食べ終わっていた。           


 そのまま席を立ち、会計に向かう。


「全部で560円になります」


 楓真は言われた通りちょうど560円を払う。


 パフェが210円、オムレツが350円なのだ。


「ちょうどお預かりします。こちらレシートになります。ありがとうございました!」


 楓真はレシートを受け取り、店を出る。


 そのまま、自分の家

                     

 ではなく、みくの家        


 でもなく、とある場所へ向かった。




 ーー少し時間は遡りーー


「……ごめん……帰る……」


 そう言って、みくは突然席を立つ。


「おい……待てって……オムレツ残ってんぞ?」


 みくの制服の袖を楓真はつかんで止める。


「もういらない。楓真食べといて……」


 そう言うとみくは、楓真の手を振り払って店を出た。


 カランカランっ……


 店を出たみくはそのままとある場所へ向かう。


(…………)


 みくは何も考えないようにして、歩き続ける。


 見慣れた街並みが夕焼けに照らされて紅く染まる。


 みくは自宅のある街の方ではなく、田んぼが広がる山の方へと歩いていく。


(どうして…………こうなっちゃったんだろう……)


 みくの目はかすかに涙で滲んだ。


 タッ……!


 みくは田んぼ道を走り出した。


 田んぼ道を少し外れて、雑草が踏み固められて出来た小さい道をみくは走り抜ける。


 草木を抜けて、今はもう使われていない線路を横切り、古くなって通行止めになっている道路に沿って進む。


 そして、見えてきた古い階段を登ると……


 そこには、みくたちが住む、西条(さいじょう)市が夕日に照らされたきれいな光景が広がっていた。


 そこは、昔使われていた小さな公園で、木のベンチが数個、ブランコ、すべり台、水の出ない水道があった。


 みくと楓真は小さい頃からこの公園に来て、よく遊んでいた。


「……秘密基地…………」


 みくと楓真はここを『秘密基地』と呼んでいたのだ。


 みくはいつも楓真と一緒に乗っていたボロボロのブランコに腰掛ける。


「……どうして……あんなことしちゃったんだろうな…………」


 みくは涙が溢れてこないように上を向く。


 

 ーーどのくらいの時間が経ったのだろうか。


 あたりはすっかり暗くなって、南の空には三日月が昇っていた。


「もう……帰らなきゃ…………」


 帰らないと行けないのはみくも分かっていた。


 でも、みくは立ち上がれなかった。


(……楓真に会ったら……なんて言えばいいのか……)


「分かんないよ…………もう……」


(楓真はもう知ってるのかな……私があのグループ作ろうって言ったの……)


(怖いよ……楓真に会うのが……)


 みくは錆びてボロボロになったブランコの鎖を、ギュッと握る。


 その時……!


 ガサガサ……


 草を踏んで、人が来る音がした。


(誰? …………楓真……?)


 みくの身体に恐怖が走る。


 この場所を知っているのは、みくと楓真だけ。


 でも、他の誰かが見つけていたとしてもおかしくはない。


(逃げなきゃ……)


 でも、みくの身体は動かなかった。


 ガサガサガサガサ……!


 音はだんだんと大きくなる。


「……誰?」


 みくは勇気を出して、小さな声で聞いてみた。


「みくか!? みく! そこにいるのか!?」


 聞こえたのは、


 楓真の声。


「……楓真…………」


「みくっ!!」


草むらのなかから楓真が出てくる。


「やっぱり……ここにいたか……」


「みく……」



続く








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次話投稿は明日です。

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