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65話 せまる三魔人の脅威

 魔人ネウディシが吹き上げる炎の柱は大きく天に立ち上っている。

 その熱波を障壁を張って俺達を守りながらエルフィリアは言った。 


 「しかし……あのネウディシという魔人、どういうことでしょう? これほどの炎をあやつるなど、理屈に合いません」


 「どうして?」


 「あの魔人は不死者アンデッド、闇の世界に属する者です。そして炎は光と同じ強い陽の領域に属します。不死者アンデッドにとって天敵のはずの炎を、なぜ操れるのでしょう?」


 生命無き者を見分ける目、ってやつか。

 しかし、奴が不死者アンデッドってのは俺もわかった。

 俺にも魔力や瘴気を”汚れ”と認識して測る【洗濯の目】があるからな。


 「その答えなら俺がわかった。奴の体の中には、おそろしいほどの瘴気が凝縮して存在しているんだ。それが熱や光を完全に遮断している」


 「なるほど。勇者の『闘気の凝縮』で戦闘力を上げる要領で、瘴気を凝縮しているのですか。【シャボン・ウォッシャー】でそれを洗浄できますか?」


 「ちょっと難しいな。あれほどの瘴気、【シャボン・ウォッシャー】百回じゃきかないだろうし」


 「そうですか」


 エルフィリアは意味ありげに「ニヤリ」と笑った。

 そんな俺達の会話を、さっきからショックで固まったようになっていたヒュトロハイムが遮った。


 「貴様ら、何をのん気に話している! いまのうちに逃げねば、退路はなくなるぞ!」


 「そんなもの、最初からありませんよ。上を見てください。あなたの勇者がいますよ」


 「うぐっ。ワーグの裏切り者めええっ」


 上にはワーグが竜の羽で空に静止しながらカズスの生首とともに俺たちを見下ろしているのだ。

 おそらく俺たちが逃げようとしたなら殺すよう言われているだろう。


 一方、ネウディシが吹き上げた炎はやがて止むと、ワーグはそこに降りてネウディシと合流した。

 ジャウギは死んでいるようだが、その肉体は欠けることなく健在であった。


 「酸欠か。フム、この王家の【護りのアミュレット】とやら。そうとうなシロモノだな。王子勇者は息絶えておるのに、肉体は無事だ。これがメイジャの聖石の護りに使われているならば、ちと厄介だぞ」


 「だが、ちょうど良い我が肉体ボディできた。いつまでも荷物ではかなり不便だからな。ワーグ、こやつの首を切り落とせ」


 ズパッ


 ワーグはジャウギの首をきれいに切り落とすと、その肉体の上にカズスの生首をおいた。

 すると肉体は「ビクンッビクンッ」と躍動し、やがて立ち上がった。


 「ちょいと暴力のたぎりが強すぎるが、これで私も戦闘に参加できるな。さて、ここにはもう用はない。皆殺しの宴だ。ネウディシ、ワーグ、一人も逃すなよ」


 「はい、カズスさま」


 「さて、おれと戦う元気のある奴は残っているかな」


 邪悪なる賢者カズス!

 嵐の竜人ワーグ!

 灼熱の魔人勇者ネウディシ!


 くそっ、この三人の魔人と、まとめて戦わなきゃなんないのかよ!

 いくら何でも、無理がすぎるぜ!!


 「リ、リヒ、リヒテラーデ伯爵家筆頭騎士として、剣を収めたままでは死ねぬ! こうなればせめて一太刀! 我があるじリヒテラーデよ、永遠なれ!」


 「シーザ、とめなさい」


 飛び出そうとするヒュトロハイムの脚を引っかけ「ズデンッ」と転ばせた。


 「ヒュトロハイムさま、あきらめたら人生終了ですよ」


 エルフィリアがヒュトロハイムに、気品ある貴族令嬢のしぐさで「ニッコリ」ほほ笑みかけた。


 「な、なんだァーっ! きさまら、さっきから落ち着いてて、状況がわかっているのか? あんな恐ろしいバケモノどもが、魔王の力を得て人間の支配をたくらまんとしておるのだぞ! どうにかこの危機をどこかの有力者に伝えようとは思わんのかあ!」


 「思いませんね。わたし達はここで奴らと戦い、勝ち抜くつもりですから」


 「バ、バカなぁ! 勝てると思っているのか⁉ こんな状況を何とか出来ると思っているのかァーーッ」


 「ジャウギ殿下がかなり時間を稼いでくれました。これで策のひとつも考えられない者など、【冒険者】ではなく【冒険者になろう】でしょう」


 すみません。俺も【冒険者になろう】です。

 エルフィリアが妙に落ち着いているんで、経験から安心しているだけで。


 「では、わたし達の反撃の狼煙のろしをあげるとしましょう」


 カァッ


 エルフィリアは空に手をかざすと、まばゆい光弾を天に向けて放った。

 そして「何事か」と注目する三魔人に言った。


 「残念ですが手遅れです。合図は出しました。もはや【メイジャの聖石】は、あなた達の手の届かない所へ移されるでしょう」


 「なに? 娘、いったい何の合図を出したというのだ?」


 「わたし達の失敗の合図です。これを出したと同時、転移の鍵である【メイジャの聖石】は、それを誰にも使用できないよう封印される手筈になっています」


 「な、なにっ!?」


 ザワリ……ッ


 明らかに奴らは動揺していることが伺える。


 「フフ……娘、ハッタリはやめろ。そんなことを決定できる権限など、きさまらにあるわけなかろう」


 「この期におよんで、わたし達の正体がわからないようですね。わたし達は王家に命じられ、あなた達の動向を探っていたのです。そして事を秘密裏に処理することも。それは失敗しましたが、最低限あなた方の目的を潰すことは成功しました」


 ええっ俺達が王家の密偵⁉

 なんて、とんでもないハッタリかますんだよ!

 こんな大胆なハッタリをかます所も、天才たる由縁か‼


 「ぬううッ、ハッタリだ! だが……」


 「カズスよ。ワーグとともに行け。この場はもはや残敵処理。おれ一人で十分足りる」


 「そうだな。ネウディシ、処理はまかせる。ワーグよ、最終試練の場だ。急げ!」


 「はい、わが主」


 ワーグはカズスをかかえ、竜の翼を広げると、疾風の如きものすごいスピードで飛び去った。

 するといきなりヒュトロハイムは俺達に跪いて騎士の礼をとった。


 「な、なんと! あなた方が王家からの使いだったとは! そして、このような事態を見越していらっしゃったとは! このヒュトロハイム、深謀遠慮に感服するばかりであります!」


 アンタまで騙されてどうする!


 「よしなに。これ、お借りしますね」


 と、エルフィリアが気品ある笑顔でニッコリ。

 ヒュトロハイムの剣を取ると、ネウディシの前に進み出た。。

 貴族の気品があって高位の魔法を使うこのエルフィリアが言ったら、騙されてもしょうがないか。

 俺もそれに続いた。



 「上手く引っかかってくれましたね。さすがに、あなた方三人を一度に相手はできませんから」


 「フン、やはりハッタリか。しかし今のはどういう意味だ? おれ一人なら相手に出来る、という意味に聞こえたが」


 「ええ、その通りです。わたしとシーザの二人が相手をつとめましょう」


 「シーザ……その名に聞き覚えがある。前にカズスを撃退したという奴だな。それに、きさまは中々の光術をあつかうようだ」


 ネウディシは俺たちをジロジロと観察した。


 「しかし、どちらも然程さほどの者とは見えんな。少なくとも先ほどの勇者、そして銀髪の剣士と火炎の魔法師の三人を合わせたより強くなければ、おれに勝つことは不可能だぞ」


 「大丈夫です。シーザはその三人を合わせたより強いです」


 ハッタリにも程があるだろう!


 「フッフッフ、少しだけつまらんハッタリにつき合ってやるか。来い」


 エルフィリアはヒュトロハイムの剣を俺に渡した。


 「ではシーザ、先駆けは頼みましたよ」


 「い、いや頼みましたと言われても……勝てるわけが……」


 「奴には弱点があります。奴自身は不死者アンデッドでありながら、その天敵である熱を扱うことです。それこそが弱点なのです」


 エルフィリアは二言三言、その攻略法を俺の耳にささやいた。

 …………なるほど。だったら、一応勝機はあるか。

 

 「いきなさい。これで奴の豪剣をも捌くことができます」


 彼女は俺の額にキスをして【女神の祝福スキルブースト】をかける。

 スキルブースト以外の何かも心に燈った。


 「いくぜデカブツ! 地獄へ帰る手助けをしてやるぜ!!」


 俺は剣を抜き、巨漢の魔人へと突撃した。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >ジャウギの首をきれいに切り落とすと、その肉体の上にカズスの生首をおいた。 ちょっとー。元ネタはあの作品としか思えんけど。 >ハッタリ これもあの作品ではよくあるよねぇ。
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