66話 対決! 灼熱の魔人ネウディシ
久しぶりに長剣を握り、果敢に巨漢の魔人に挑む。
しかし、奴の感想はこうだ。
「フン、どこが『三人あわせたより強い』だ。きさまの剣はクズだ」
まぁ俺の剣なんて、村で親父に田舎剣術をしこまれた程度のもの。
実戦の経験なんてまるで無い。
元勇者様から見たら、棒でも振り回した子供にしか見えんだろう。
「目ざわりだ。消えろ」
ネウディシは握る大剣を高々と上げると、一気に振り下ろした。
バキャァッ
「…………むっ?」
されど破壊されたのは、ヒュトロハイムの剣のみ。
予想以上の豪剣だったが、【女神の祝福】で強化されたシャボン・バリアーは、易々とそれを俺の体から滑らせた。
「俺の本当の得物は、こっちさ!」
ヤツの動きが止まった隙に、懐から【穢払い浄化包丁】を取り出し、食用肉の解体作業の要領でヤツの下腹部を切り裂く。
初手の奇襲に成功。
あえて不得手な剣で勝負を挑み、こちらの実力を見誤らせる。
エルフィリアの教えてくれた作戦だが、見事にハマった。
「ちっ、くらったか。しかし、たしかに両断したはず……なんだ、この手ごたえは?」
生きた人間なら致命傷……いや、使った得物からすれば、不死者でも昇天しているはずだ。
が、さすがは勇者の不死者。
奴は、まったく効いているそぶりは見せず、剣撃を繰り出してきた。
「これが……勇者の剣? なんて激しい……ッ!」
先ほどの雑に振り下ろしただけのものとは違う。
巧緻に長けた本物の達人の剣だ!
「ちいっ、なんだこの泡は。切っ先がすべって、まるで捕らえられん! これはきさまのスキルか?」
さすがにこの剣撃の中では俺も反撃はできず、回避と防御とシャボンを作ることで精いっぱいだ。
くそっ。炎のスキルも使っていない、ただの剣術のみで、こうも絶対物理回避のシャボン・バリアーを潰し迫るなんて!
避ける避ける避ける!
「……大したものだな。おれの剣をここまで凌ぎ捌いたのは、人間、魔物、魔獣問わず、きさまが初めてだ」
「ハァハァ……そりゃどうも。いい師匠に恵まれたものでね」
効率よい特訓と手ほどきで、俺のスキルと回避術を飛躍的にのばしてくれたエルフィリア。
実戦ってものを命を狙って教えてくれたジャウギ。
この二人のおかげで、こんな規格外の強敵ともやり合えるようになった。
「誇っていいぞ。この時点までは、この間倒した嵐竜よりきさまが上だ」
「ええっ! 竜を倒した⁉」×2
後ろのエルフィリアもさすがに驚いたらしく、セリフがハモッてしまった。
「つまらないことをお聞きしますが……それは、あなた単独で?」
「ああ。そいつの亡骸はワーグの竜人化の道具になった」
くそっ、やはりワーグがあんな姿になったのは、こいつらのせいか!
しかし【魔人ネウディシ】。
そこまで規格外の奴だったとは……!
「なんということでしょう! 真正の竜を、単独で倒してしまうだなんて!」
エルフィリア、ショックな気持ちは分かるが、怯まないでくれ!
「それは世界初でシーザにやらせたかったのに! 先を越されてしまいました! 悔しい!!」
ギャフンッ!!
エルフィリア、君は俺を何にしようとしているんだ⁉
ネウディシは「スッ」と攻撃を止め、剣を構えなおした。
「シーザ、きさまの名は覚えておこう。出来るなら、きさまのそのスキル、剣のみで破りたかった。だが、おれもいつまでも遊んでいるわけにはいかん。ここからはおれもスキルを使わせてもらう」
構えた剣から高熱の炎が燃え立つ。
「では。ここからは、わたしも参加させてもらいます」
エルフィリアは俺の側に近寄り、ピッタリ後ろについた。
「フッ、いつまで見ているのかと思えば、オレが炎を使うまで待っていたというわけか。いいぞ。二人まとめて灰燼と化せ」
くる! あの大地をも溶かす高熱の柱になって、襲ってくるか!
「シーザ、おそれないで。奴のスキルはすでに死んでいます。ただ冷静にシャボン・バリアーを張り続けなさい。わたしの法力を使って!」
背中にあてたエルフィリアの手から、彼女の力が流れ込む。
その力にあわせシャボンを作ると、それは黄金色のシャボンとなり立ち昇った。
「光の力を秘めたシャボンか! 来いネウディシ! お前の技でこれを打ち破ってみろ!」
「望むところ! 【魔炎大剣灼熱柱】!!」
ドオォォォォン!!!!
凄まじい衝撃が頭上を襲った。
だが、黄金のシャボンは凄まじいほどの耐久を見せ、割れることなく熱と衝撃から俺達を守る。
されど俺は上からは熱と圧力に、背中からは膨大なエルフィリアの法力にはさまれ、失神寸前だ。
「うッ……ぐぐ……ッ!」
俺はあと、どれくらい耐えればいい?
あと1分ぐらいしか……いや、30秒もヤバいかも……
しかし俺がオチたら、後ろのエルフィリアまで……それだけはダメだ!
――フッ
………………え?
いきなり頭上からの圧力が消えた。
俺は意識が切れかけ「ガクッ」と膝をついた。
「シーザ、よくやりました。わたし達の勝ちです。見なさい」
俺は顔をあげネウディシを見ると、そこには大きく体が崩れ、跪いた奴がいた。
それは不死者の弱点である炎に焼かれ、消滅寸前の屍生人そのものの姿だ。
「バカな……そんなバカな……おれの体は、カズスの呪法によって、熱を通さぬものになったはず! それが何故⁉」
「その呪法とやらをシーザは砕いたのです。故に、あなたはもはや魔人ではない。ただの頑丈な屍生人にすぎません」
「バカな! 賢者カズスの組んだ呪法をどうやって⁉ そんなことを許す隙など、あたえなかったはずだ!」
「忘れたのですか? 戦いのはじめ、あなたが迂闊にもシーザの包丁を腹に入れてしまったことを。あの瞬間、勝負は決まったのです」
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